第355話 管理局の闇
俺の子供の頃は、近所に児童館ってのがあって、木の玩具とかボードゲームとか色んな本とかあってな、小学校が終わったら遊びに行く奴がいっぱいいたんだ。
俺は空手を習ってたから時間が開いた時にしか行けなかったけど、何たって無料で遊べるから子供にとってのオアシスだった。
水ぐらいしか無いけど無料だったし、空調完備の屋内だから夏は涼しく冬は暖かく、雨でも雪でも関係なく遊べたんだよ。
最近は聞かなくなったけど、子供の頃には光化学スモッグってのがあって、まあ一種の大気汚染なんだが、そのせいもあって屋内で安全に遊べる児童館は人気だった。
あの頃は、学年の垣根なんて超えて、集まった皆で仲良く遊んでたなあ。
何の話だっけ…あ、そうそう。そこの図書コーナーには漫画も多少あってな、ドラえ〇んも並んでたよ。
いや、偉大なる藤〇先生の漫画は、多数揃ってたな。
あとは手塚〇虫先生のもあったし、その他にもマンガでわかる歴史シリーズなんかもあった。
でも、やっぱり人気はドラ〇もんで、皆夢中で読んでたよ。表紙が擦り切れるまで、そりゃ~何度も何度も読んでた。
ああ、いい時代だったなあ…いい想い出だ…
「へ~、そうなんですね。描いてたのは管理局の職員ですけどね」
ちくしょー! それを聞いたら、俺の子供の頃のあの楽しかった想い出のシーンが、途端にチープになっちまったよ!
「ふむ…あれを描いていた職員はボディーを変えて、他の星でまた広報活動に勤しんでいたはずですね」
「その星でも、子供の夢を壊すのかよ!」
可哀そうだろ! 子供の頃の楽しかった想い出って、大人になっても覚えてるもんなんだぞ!
「いえ、バレなければ大丈夫です」
何だ、そのバレなければ犯罪ではない理論は!
「そうじゃない、そうじゃないんだ!」
「そう仰いますが、私の話を聞くまでは、良い想い出だったのでしょう?」
「うっ…確かにそうだが…」
「でしたら、我々が話さなければ、誰の夢も壊しませんよね」
正論すぎて反論できない…
「彼は…今では、もう少し高度な技術を用いて布教活動してますね」
布教って言っちゃったよ!
「確か、その星に生息する動物たちを捕獲収集して育成した後に、他の捕獲者の動物と対戦したり交換したりする遊びを考案したという事です」
「待て! もうツッコミどころ満載だが、その動物を捕獲する道具ってのは、まさか紅白のボールじゃないよな?」
違うと言ってくれ!
「よくご存じですね。捕獲した際には、GETだぜ! と宣言するルールだとか」
豊かな胸を張って、ドヤ顔でそう説明するリリアさんだが…それは…
「ポケ〇ンじゃねーか!」
やっぱりそうだったのか…違って欲しかった…
「一番人気の動物は、電気を発生させる器官を備えた黄色のげっ歯類だそうです」
「ピ〇チュウかよ!」
そりゃ人気だろうさ!
「なにせ職員の一推し動物として、広報活動したそうですから」
事務所推しのアイドルかよ…
「これは、もしも現地活動中の職員が何らかの事故により現地の医療機関に搬送され、複合素粒子電池が発見されてしまった時の為でもあります」
ピカ〇ュウと、どう繋がるんだよ!
「我々には《でんきぶくろ》という器官がありまして、そこで電気を発生して電撃で攻撃出来る様に進化した新人類だと言い張る為の布石としてです」
布石って、ポイントはそこか!?
「そんな主張が通るはずないだろうーが!」
どこに電撃を放つ人種が居るってんだよ!
「10まんボルト!」
「やかましーわ!」
恐ろしい…管理局の活動範囲と内容が恐ろしい…
まさか、地球上のヲタク文化の礎は、管理局が創りあげたのか?
そして、それを他の星にも広めようとしているとか?
いや待てよ、確か想像や創造といった文化は、非常に高いエネルギー産み出すとかサラが言ってたよな。
Imagination&Creationが、莫大なエネルギーを呼び込むとか、ヲタク文化はそれに貢献してるだとか…
もしかして、地球上で意図的にそういった状況を管理局は生み出したって事か? まさか、地球は実験場? その実験が成功したから、更なるデータ収集のために、ヲタク文化を他の星にも広めるつもりか、管理局!?
何か、段々と管理局の闇が見えて来たような…
「そう言えば、つい最近ですが…」
「ん??」
「彼の発案したアイディアが管理局でも採用されて、金一封を貰ってましたね」
金一封って、管理局って給料あるのか? びっくりだ!
「確かカードゲーム中心の漫画を描いて、そのカードという部分に着目した管理局が…」
待て、待つんだ! またか? またなのか?
「そのカードシステムは、あなたが使うエネルギー変換玉にも採用されましたよね。確かにアレは小さくて持ち運びに便利ですよねえ」
そう言えば、コルネちゃんとか、ユズ&ユズに、婚約者~ずの装備はカードになったな…。ちなみに、その漫画ってタイトルは?
「えっと…確か、遊☆〇☆王ですね。カードシステムに着目した彼が、途中からストーリーを大々的にカードシステム普及のために路線変更してカードバトルばっかりにしたとういう、ストーリーが破綻しまくって無茶苦茶になった作品ですが、愚民どもにはバカウケです!」
やーめーろーー! まさか、アレまでもがお前らの仕業なのかーー! いい加減、自重しろーーー! ってか、愚民って言うな!!
「でも便利だったでしょう?」
………そこは、否定できない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます