第352話 見事な死体ですよ
俺は薄暗い部屋のベッドに寝かされていた。
周囲を見回すと、すぐ横のベッドに薄い布を掛けられただけのサラが横たわっていた。
いや、良く見るとその向こうにもベッドが何台か並べられており、その全てにサラが寝ている。
え? 俺…夢見てるのか?
体を起こそうとしたのだが、上半身が動かない。
いや、手も足も動かない! ベッドに縛り付けられている様だ。
辛うじて動く首を動かして、自分の胸あたりを見てみると…そこから赤い管が伸びていた…って、上半身裸じゃねーか!
あ、意識がはっきりしてきたぞ。確かリリアさんに催眠術を掛けられたんだった…よな?
それで眠らされて、あのぶっとい針を刺されたって事なのか? あの赤い管、よく見たら俺の血が流れてるんじゃねーのか?
え、まさかサラに輸血? 俺の血を? 何で? どういう事だよ!
「リリアさん、どうなってんだよ!?」
思わず大声をあげてしまったのだが、
「はい、呼びましたか?」
俺の足の方から声が聞こえてきた。
「コレ、どうなんてんの!?」
「え? 説明したじゃないですか。複合素粒子電池に起動のために、エネルギーを分けてもらうって」
確かに聞いたけれど、
「いやいや、俺の血をサラに輸血してんじゃん!」
「してませんよ?」
「え?」
でも…明らかに赤い管が繋がってるよね?
「ああ、それですか? エネルギーを可視化しただけです。血なんて抜きませんよ~吸血鬼じゃないんですから」
へっ? そうなの?
「痛くもかゆくも無いでしょう?」
確かに…
「チクッとするのも嫌そうだったので全身麻酔をしてみましたが、なぜかその状態でも寝返りをうったりされるので、已む無く拘束しました」
そなの? って、あれは催眠術じゃねーか!
「そうですよ? あれが由緒正しい全身麻酔です」
自信満々に言い切ったな…そうか、あれが管理局の全身麻酔か…
しかし、俺って寝返りできちゃうんだ…それはそれですごくね?
「目覚めたのなら、もう拘束は解いても良さそうですね。…ボンテージの手枷足枷がまさかこんな所で役立つなんて…」
「ちょっとまてーーーーーーーー!」
まさか、あの革製の手枷足枷? 鎖とかでX字型とか十字型の磔台に拘束する鎖のついたアレ? 場合によっては、天井から吊り下げられる時のアレ?
「私の趣味ではありませんが、細マッチョの少年が拘束される姿というのも、一定数の需要がありそうですね」
「おいおいおいおいおいおいおい! さっさと外せ! こんな姿を見られたら、お婿に行けなくなる!」
婚約者~ずに見られでもしたら、えらい事になる。
「まあ、起動も出来ましたからもう解放しますよ。いや~、ちょっとだけサイズを変えてみたんですが、やはり見事に拒絶されてしまいましたね」
ん? サイズって、なんの事? そこに並んでるサラの事かな?
「まあ、見てください…よっこいしょっと…」
俺に掛かっていた白い布をめくり、リリアさんが俺の手足の拘束具を外したので、体を起こす…と、
「何でボンデージ ファッションなんだよ!」
黒い革製の身体にピッタリ張り付く、露出の激しい服を、俺は着せられていた。
「この服は何だよ!?」
「私物ですが?」
「そういう事を聞いてるんじゃねーよ! 何で俺がこんな服を着させられてるのかって事だよ!」
「気分です」
「気分?」
「雰囲気ともいう」
「え~っと…何で?」
理解できん…
「手枷と足枷を嵌めて見たところ、何かこう…物足りないと言いますか、ドSの血が騒ぎまして、取り合えず全部脱がして着せてみました」
「ちょ!」
「あ、私ガチレズですので、ショタのヤングコーンなどに興味ナッシングですので、ご安心を」
あ、安心出来る要素がどっこにも見当たらん!
「まあ、管理局のログには、しっかり映像は残りますので、後で映像を見て小躍りしながら愉しむ誰かが居るかもしれませんけれども」
それ、絶対にサラだろーが!
「まあまあ、サラを見て気を晴らしてください。見事な死体ですよ」
リリアさんに言われるまで忘れてたのだが、横のベッドに視線をやると…
「うっわ! マジで死体だ!」
3人? 3体? のサラが、口から血? を一筋流してベッドに横たわっていた。
「こっちは、バストをAAカップからAに変更したんですが、見事に起動失敗しましたね。こっちは身長を1cmだけ高くしたんですが、同じくダメでした」
ああ、水槽に入ってたのはこれか…あれ? 電子頭脳は?
「電子頭脳はまだ移植してないんですが、複合素粒子電池が何故か暴走して、過電流で素体の神経組織が焼き切れました…」
「その電池って新品なんだよな?」
「ですが、元のボディーとの接続に使ってた端子を使いまわしてますからねえ」
端子が電池を支配したのか!? 意思を持ったのか、端子よ!
「まさか、電池にまで拒否されるとは…興味深い!」
サラって一体…
「とにかく、これでサラもあのネタが使えるというものです」
「あのネタ?」
「私はたぶん3人目だと思うから…って」
「ヤメローーー!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます