第353話 アレもお前らか!
「ところでリリアさん、ちょっと疑問なんだけど…」
俺には、どうにも気になって仕方ない事がある。
「何でしょうか?」
「電池ってどうやってその身体に入れたの?」
めっちゃ気になる。
だって、取り出す時がアレだったんだぜ。気にならない方が変ってもんだろ?
「ああ、移植の方法ですね」
「そうそう!」
「取り出す時は、多少乱暴にしても良いのですが、埋め込むときは非常に繊細な技術が要求されます」
なるほど…そんなもんなのか…
「なので、え~っと…この廃棄予定のボディーで実演しますと…」
そう言って、口から血を流すサラのボディー(電池の反乱にて廃棄予定)に掛けてあった布を取り去ると、
「まず、この様にして腹部を切り裂きます」
徐に取り出したサバイバルナイフで、一気に素っ裸のサラの腹を引き裂いた。
「!!!!」
「そしてボディーのこの配線に、電池から出ている配線を繋ぎます…こう手作業で」
リリアさんは、何の迷いも見せずに、サラの腹の中に手を突っ込んで実演中。
但し、俺は直視できません…スプラッターは嫌いだっつーの!
「ここがこの作業の肝なんですよ? 見ないのですか?」
内臓だけに肝なのか? 掛けてるのか?
「いいや、もういい! 怖くて見れない!」
血みどろの作業なんて見てられるか! 外科の先生とか、何であんなの見ながら手術出来るんだよ! 怖いよ! でも指の隙間からチラチラ見ちゃう…
「そうですか。ボディーとの配線が完了しましたら、次は貴方のエネルギーを供給するための管を、こう通してから腹を閉じます」
と言って、サラの切り裂いた腹を一撫ですると…綺麗さっぱり元通り…
「え? くっつくの??」
驚くの無理ないよね? ね? だって、まるで切った跡が分からないんだぜ?
ツルペタロリボディーが真っ裸をおっぴろげている事なんて、気にならないぐらいの衝撃映像! どうやったんだ!?
「え? 地球でも良く知られている手法だと思っていましたけど?」
そんな絶賛困惑中の俺に、意味不明な事を告げるリリアさん。
地球の手術って、こんなに進んでたっけ??
「これは心霊手術という名称で、地球全土に広がっていたと思いますけれど…違いましたか?」
……心霊手術って、地球全土に広がってたっけ? そもそも、あれってマジックだとかインチキだとか言われてた気が…
あれ? そう言えば、高額の医療費を請求する無免許スゴ腕外科医の先生の話にも出てきたよなあ…本当なのか?
「いや、実際には見た事ないんだ…」
「そうなんですか。サイバネティックス・ボディ管理部 第1課の職員が、何人か地球で施術して見せたと言ってましたが…確か、テレビにも出演したとか」
「アレもお前らが犯人かーーーー!」
こいつら、地球で好き勝手してやがるな!
ガキの頃、ユリ・ゲラーとかTVで特番してて、確かに超能力ブームがあったよ。
その中に心霊手術も出てたよ、間違いなく。
でも、色んな人が99.99%マジックだと言ってたはずなんだが…こいつらが関わってたら、真贋鑑定不可能だな。
そもそも、どいつが管理局の職員なのか、見た目で判断できんからな。
「犯人? 何の事ですか?」
「地球では、心霊手術のほとんどがインチキだって言われてんだよ! いや、まてよ…もしかして管理局の手術を見た奴が、インチキを思いついたのか? 金もうけのために」
そうだよ、きっとそうに違いない。
「なるほど、そうだったのですね。1課の職員に、良く言っておきます。今後は、もっとしっかりと実演する様に」
「ああ、うん…そうだね」
「どうすればインチキだと思われない様に見せる事が出来るか、1課にアドバイスしたいので、今度相談に乗ってくださいね」
見せるんだ…このスプラッタを…ってか、
「リリアさんがさっきやったみたいに、一気に切り裂けば良いんじゃないんでしょうか…TVだとモザイク案件だけど…」
大きく頷いたリリアさんは、
「なるほど、派手さが必要だという事ですね。パフォーマンスという奴ですか。勉強になります」
勝手に納得してた。もう、好きにしてくれたらいいと思う…
「あとね…俺の胸から伸びてるこの管。心臓に刺さってるんだっけ? これ、いつ取れるの?」
未だに俺の胸から伸びてるこの赤い管…めっちゃ気になるんだけど。
「ああ、もう起動は出来たので抜いて構いませんよ…エイッ!」
そう言うが早いか、リリアさんは赤い管を握ると、一気に引き抜いた。
「ぐぁ!」
ズルズルッ…という、嫌な感触と音が俺の胸の辺りからした。
そして、管を引き抜かれた跡は、綺麗さっぱり消えていた。
「はい、これで完了です」
「あ、ありがと…あと、もう着替えていいかな?」
やっぱボンテージは、ちょい趣味じゃないというか…
「T.〇.Rみたいで似合ってると思いますけど」
「T.M.〇?」
「消〇力のCMやってる人ですよ」
「西川〇教かよ! いや、似てるっちゃ似てるが、違うからな!」
不思議そうな顔をしたリリアさんが、
「いえ、でもきっとあの人って真正のMですよ?」
などと、宣わった。
「嘘つけーーーーーー!」
ボンテージファッションで身を固めた俺の叫びが、地下室に響いた。
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