第347話  知らんがな…

「原初のエネルギーだか、情報統〇思念体だか知らんが、つまりリリアさんもサラも実体のないエネルギー体なんだな?」

「もの凄く簡単に纏められた気がしますが…ええ、そのご理解であっております」

 放置すると、まだまだ電波な話が続きそうだから、さっさと話題転換しよう。

「それじゃ、サラのボディーのデザインなんて、好き勝手に出来るんじゃねーの? それこそサラの希望するボンキュッボンとかに。本来の姿を模して造られるとか言ってたけど、本来の姿って何?」

 だって、要はエネルギー体が入る為の入れ物な訳だよな? あの神にも等しい管理局の技術があって、物理的に無理って意味がわからんのだが。


 そもそも不定形生命体らしいのに、本来の姿って意味不明なんだけど?

「それがですね…サラのエネルギー体が蓄積した情報の質と量を元に、サラの思考や嗜好などを加味して、転生局のシステムが何度かボディーを作成したのですが、あの姿にしか製造できなかったのです。本来の姿とは、魂のエネルギーが持つ情報の有り様とでも表現すれば良いのでしょうか」

「ふむ。つまり、魂のエネルギーが蓄積した情報とか趣味嗜好とかを形にしたら、あのツルペタになるっていう事?」

「ええ。そもそも魂の形とはそんなに固定されていないはずなのですから、多少ボディーのデザインが変わろうとも問題はないはずなのですが…。ちなみに私と同タイプのボディーの電子頭脳にサラの疑似霊魂をインストールしようとした所、電子頭脳の回路が焼き切れました」

 ……それは何故に?

「電子頭脳には、そのボディーの情報が最初からインプットされていますが、どうも拒絶された様です…電子頭脳に」

 そんなにサラと同期すんのが嫌だったのか、電子頭脳!?

「例えば、貴方の魂を取り出して女性型のボディーに移そうとしたら、嫌でしょう?」

 まあ、俺には特殊性癖とかないから、そりゃ嫌だな。喜ぶ奴もいるかもしれんが…

「インプットされていたボディーの情報を元に、電子頭脳もある程度は受け入れる相手を選ぶらしいのです」

「って事は…身体が魂を拒絶したって感じか?」

「そう、正しくその通りです! サラの魂というか情報というかエネルギーは、色々と欲と煩悩で穢れているのです! ですから、初心な電子頭脳には刺激が強すぎるのかもしれません!」

 知らんがな…ってか、電子頭脳って言ってるけど、人格っぽいもの持ってないか?

「我々も電子頭脳の反乱では無いのかと、色々と調べてみました」

 まあ、そうだろうなあ…

「しかし、回路まで焼き切れるほど拒絶されるのはサラだけだという事が判明しましたので…」

「したので?」

「どうでもいいかと、それ以上の追及は止めました」

 止めたんかい! 

「管理局には金銭という概念が存在しませんので、コストとしては時間とエネルギーのだけになりますが…サラのためだけに同期可能な素体を何百体も試作し続けるのは、はっきりいって無駄です」

 そりゃそんなに試作繰り返してたんじゃ無駄だよな…

「結局、実害はサラのボディーがツルペタロリで固定されるだけの事ですから」

 管理局でのサラの扱いも、大概だよなあ…

「なので、物理的に不可能なのです」

 うん、良く分からんけど納得しました。


『納得しないでください! 何とかしてくださいよ、大河さん!』

 いや~、機械にまで拒否される程の変態性を持ってるサラのせいだろ?

『そこの鬼畜ガチレズのドS女の方が、どう考えても変態じゃないですか!』

 いや、違うと思うぞ。

『どこがですか!』

 リリアさんは、基本的に仕事は仕事としてきっちりとこなしつつ、余暇に趣味を楽しんでるだけだろ?

『そんな事は無いです! 24時間365日変態です!』

 それに比べて、お前は仕事もしないドジばっかするアホで足の臭い変態じゃね?

『ひっど! って、足臭いって何ですか! 嗅いだんですか? 一日中仕事をして蒸れたサラちゃんの靴下の匂いを愉しんだんですか? 変態です! おまわりさーーん! 幼気な少女の靴下の匂いをクンカクンカする変態がココに居ますーー!!』

 いや、見た目に臭そうじゃん。

『どんな見た目ですか! サラちゃんの足は、バラの香りです! 言いがかりは止めてください!』

 そもそもお前が仕事してる姿って、滅多に見れないからな。

『……そんな事は無いですよ?』

 無駄にスキルはあるくせに、サボってばっかじゃねーか。

『……そ、そんな事は無いはずですよ?』

 一日のほとんどを、変態的な妄想で費やしてるだけじゃねーか。

『……そ、そんな事はないんじゃないかな~って』

 お前が俺の目と同調して何を見ていたのか、リリアさんなら調べられるんじゃないのか?

『……そ、それは無理なんじゃないかな~って』

 って事で、詳細に調べ上げてください、リリアさん。

『お任せください。我々に内蔵されている電子頭脳は、管理局の通称バベルの塔にある超高性能コンピュータとリンクされてますので、全ての行動や言動および思考内容はログとして記録されてます。貴方の情報にはブロックが掛かっておりませんが、サラの情報には制限がかかってますので、すぐには難しいですが』

 その塔って、砂の嵐に囲まれてないよね? あくまでも通称なんだよね?

 三つの僕に命令できる人っていないよね? 

 ってか、俺の情報は誰もが閲覧可能なんかよ!

『それは冗談ですが、局長の許可さえ取れば、閲覧は可能です』

『ちょ!』

 どこが冗談だったんだろう…バベルのあたりかな? 俺の情報のくだり?

 それはともかく、許可があれば閲覧できるのね?

『きっと、面白い記録が残されている事でしょう』

 だとさ、サラ。今までお前しか管理局とアクセス出来なかったから、俺の情報ばっかり抜かれてたが、これからは逆にお前の情報を抜き取って白日の下に曝してやる!

『おーぼーだ! 個人情報漏洩反対!』

 やかましい! どの口が言うんじゃい!

 お前が今まで散々俺にしてきた事だろうが!

 リリアさん、ガンガン晒して炎上させましょう!

『むむむ…鬼畜ドSの地が騒ぎますね~』

 あ、リリアさんやる気なってる。

『局長~~~! た~す~け~て~! サラちゃんが虐められてる~!』

『管理局から、サラの情報開示に関して、全面的に許可が下りました。たった今』

『……見捨てられた…』

 安心しろ、サラ。ちゃんと拾ってくれる人がいるぞ…ここに。

『お、大河さん…』

 何かを俺に期待している様だが、俺じゃないぞ? 

 お前を拾ってくれるのは、リリアさんという素晴らしいお方だ!

『だと思ったよ、この悪魔ども!』

 

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