第340話 素敵な夜を…
「つまり、彼女…リリアさんは、神の世界からこの世界に来たサラの身体の健康状態を検査して、表面化していない病気を見つけたり、もちろん不調がある場合は治療を行うために、ネス様に遣わされたのです」
あの後、リリアさんと色々と話し合った結果、こういう設定で我が家に住み付く事となった。
なぜか古いSF映画のコアでディープなファンである事が発覚した彼女と、ものすごく話が盛り上がったりもしたが…
もちろん復活したサラが彼女の同居に大反対したのだが、サラの意見は物の見事に、0.005秒で却下された。
そしてさらに叩きのめされ、またもや我が家のペット達の玩具となった。
あのサラを手玉に取る人材は非常に貴重なので、手放すわけにはいかないとい、俺個人の事情もあったりする。
そうして彼女の設定を決めた後、こうして食堂で集まった我が家の面々に紹介しているのだ。
「ご紹介に与りましたリリアです。そこでピクピクと痙攣している間抜けで馬鹿な同僚のサポート要員として、ネス様より派遣されました。奥様方の健康に関してもフォローさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いいたします」
いつの間に着替えたのか、ハイカラさんが通る様な袴セットに着替えていた。
そんな服は、女子大学生の卒業式とかでしか見た事ないんだけど…どこで調達したんだろう…
「そうですか。先ほどもご挨拶しましたが、私がトールヴァルド様の婚約者序列第一位のメリル・ラ・グーダイドでございます。このグーダイド王国の第四王女でもあります。どうぞよろしくお願いしますわね」
メリルが貫録を見せつけつつ、挨拶をする。
「私はミルシェです。平民ですが、婚約者序列第二位です。よろしくお願いします」
ミルシェは…普通の挨拶だな。
「あの…ミレーラ=マレスです。えっと…第三位だそうです…アーテリオス神国の出身です。一応、実家は貴族…です」
ミレーラは、ちゃんと言えて偉いぞ~! 何だか、ほっこりする。
「マチルダ・スロストです。婚約者№4です。トールヴァルド様とは従姉にあたります。実家は商家を営んでおります」
№4って…それより、この世界では自己紹介の時に、実家の紹介もセットでするのが常識なのか?
「イネス・マリオンだ。序列第五位。好きな事は修行だ。実家は父が叙勲されたので、来年は男爵家となる予定だ。よろしく!」
うん、そう言えばイネスの実家は、勲民からきちんと男爵位をもらって、貴民にジャンプアップ出来るそうだ。
俺との結婚にあたって、陛下が気を回したのかどうかは不明。
っちゅーか、やたらと自己紹介が男前だな、イネス!
そのあとは、ユズキ&ユズカ夫婦やドワーフメイドが自己紹介。
一応、天鬼族はネスの遣いって設定なので、紹介は変なのでしていない。
もちろんナディアにも念話でしっかりと根回しをしてあるので、今頃は実家で話してるかもしれない。
「そうでしたか、皆様まだ婚約者でいらしたんですね。お式のご予定は?」
「ああ、年明け早々の予定だよ」
リリアの問いに俺が応えると、
「そうでしたか、それはおめでたい事でございます。私も微力ながらお式の手伝いをさせてくださいね」
とても優しい笑顔で皆を順番に見ながら、そう言った。
「ちなみに、トールヴァルド様」
「ん?」
「私は真正の同性愛者ですが、既婚者には興味ございませんので、ご安心くださいませ」
『ぶっ!』
全員、噴き出しました。
「あ、ドSでもありますが、相手はきちんと選びます。サラは論外です」
『ぶっふーーー!』
ダブルで噴き出しました。
「なので湯あみの手伝いを申しつけられるのでしたら、女性限定でお願いします。殿方の裸は、ノー センキューですので」
「絶対に頼まんから!」
はっきりと断言しておきました。ええ、頼みませんとも…こんな危険な女に、背中を任せたくないわい!
「奥方様達でしたら、まあポリシーに反しますがお受けしますよ? ドワーフの女中さん達は…じゅるり…好みですね…」
『絶対にお断りします!』『おらがだはぜったいにえんりょすっど!』
全員から見事にお断りされていた。ドワーフさん、それってお断りって事であってるよね? あ、あってるのね。
「残念です。仕方ありません、この際サラで我慢しましょう」
『どうぞどうぞ!』
女性陣の心が、今一つに!
「…みんな、ひどい…」
何か聞こえた気がするが、
「リリアさん、当面はあの地下をお好きに使ってください。すぐに改築して、サラと共に住めるようにしますから」
「あら、心遣い感謝いたします」「い~や~だ~!」
サラ、うっさい!
「明日にでも改築しますので、本日は狭いでしょうが、サラの部屋で一緒にお過ごしください」
「ちょーーーーー! それだけはーーーーー!」
「まあ! それは素敵な夜になりそうですね」
「だーれーかー! 一緒に寝てーーーー!」
『どうぞ、ごゆっくり~!』
そして全員が心からリリアさんとサラへと、その言葉を送ったのであった。
『素敵な夜を…』
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