第327話  夢のプラン

 大陸がどうちゃらよりも、もっと差し迫った問題がある。

 およそ二カ月後に迫った、俺たちの結婚式に関してだ。


 俺達が属するこの国の王様である、サンデル・ラ・グーダイド国王陛下の第四王女様であるメリルとの結婚に際し、前日に俺が父さんの伯爵位を継ぎ、父さんは侯爵位を戴くことになっている。

 そして昇爵の為の謁見の翌々日に、俺たちの結婚式が行われるのだ。王宮で…。

 降嫁するメリルの結婚式を王宮で執り行うのは、変じゃないかとも思うのだが、陛下に押し切られた。

 その後、披露パーティーを行うのだが、これは父さんの王都に有る屋敷で行う。

 

 この世界の結婚式は、地球で言えば人前式なわけで、要はいっぱいいる参列者の前で『私達、結婚します』と宣言して、日本でいえば婚姻届けの様なものにサインをするだけだ。ちなみにサインした書類は、夫婦共に一部ずつ持ち、役所が一部保管する。

 結婚式はこれだけ。特にお式に感動もクソも無い。

 まあ、女性が着飾って、これが旦那だと見せつけるだけの物。

 なんとあっさりした式だろうと、ずっと思ってたが、なんせこのグーダイド王国には、宗教が無い…いや、無かったのだ。

 ネス様の登場により、大宗教ブームが到来したが、それまでは神様? 何それ美味しいの? 状態だった。


 ずっと昔には、いくつかの宗教が信徒獲得に躍起になって、結果として信徒同士の争いにまで発展し、国内が荒れに荒れた時代があったそうだ。

 国が荒廃した原因が宗教であったため、当時の国王は全ての宗教を一律禁止としたそうだ。

 記録では、『声も届かず姿も見せぬ神などに、一体どれほど価値があるというのだ。神罰を下すというのであれば、してみるがいい。我が身を持って受けてみせよう』と、当時の国王陛下が民衆の前で演説したとかなんとか。肝っ玉の太い王様だ事。

 宗教関係者は、国王に対し『神への冒涜だ、不敬な言動だ、傲慢な態度だ』と、散々詰め寄ってはみたものの、結果として神罰が下らなかった為、民衆の神への信仰心自体が廃れていったらしい。

 それでも尚しつこく食い下がる宗教関係者たちは、全て国外追放となったとさ。

 その追放された関係者って奴の末裔が、あの太陽神の教会の腐ったトップだったんじゃあるまいな?

 月神様は…教会無かったから、単に信仰心だけが残ったのかな?

 他にもこの世界の宗教は有るかもしれんが、特に俺が関わる事も無さそうだから、気にしない。

 いや、だって信じる人には申し訳ないが、日本人がブードゥー教の成り立ちや教えがどうだのなんて気にしないだろ? それと一緒だよ。


 そんな宗教のお話はこれぐらいにして、あまりにもあっさりしすぎるこの国の結婚式(披露宴は別)に、愕然とした俺の発案により実現したのが、地球式チャペルでの結婚式。

 ユズキとユズカが、このチャペルでの式、第一号になったのは記憶に新しいところだろう。

 あれを見ていた民衆の口コミで、今や我がトールヴァルド地区では、チャペルでの結婚式がブームとなりつつあるのだ。

 式を仕切るのは、婚約者~ずに自衛手段が出来た為、ちょっと暇を持て余している天鬼族の3人娘。

 うん、角が無ければ天使っぽいもんね。

 プログラム通りに式を進めるだけだし、誓いの言葉だって定型化してるから、誰でも出来るのさ。

 3人娘の誰かが交代で行っている。

 いや~、これマジで儲かるわ。

 式場は使いまわしだし、衣装のレンタルに、新婚さん用にちょっとお高い宿泊施設にと、ウハウハですわ、本当に。

 

 長々と横道にそれたが、要は婚約者~ずも、ここでも結婚をしたいとの事で、前からプランを練りに練っていたのだ…ユズカがアドバイザーとなって。

 その練りに練った夢のプランを、今日提出してきた…俺に。

 何とレポート用紙にすると20枚にもなる大作だった。

 プラン名、『私達5人の夢の結婚式』。 


 うむ、精査に時間を戴くと思うが、出来るだけ叶えましょう、その夢を!

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