第326話  凡人の発想

 俺は、じっくりと考えてみたんだ。

 何を考えたんだって? 

 そりゃ、この星に色々と影響を与えずに、大陸を創る方法だよ。

 そして、ついに考えついたのだ!

『ほ~! で、それはどんな方法なんですか、大河さん』

 よくぞ聞いてくれた、サラよ! 

 その方法とは…

『ごくり! 方法とは?』

 この星の真裏側に、この大陸のコピーを創るって方法だ!

『…ものすごく普通ですね。完全に凡人の発想です』

 そうは言うが、面積・質量ともに全く同じものだぞ?

 大陸を創造しても自転のバランスが崩れないように、完璧な調整が必要じゃね?

 それって大変なことだと思うんだが…

『いやいや、その考えが浅はかだって言ってんですよ。そもそも新たな大陸を反対側に創造して、バランスが狂わないわけないじゃないですか』

 何でだよ? だって、まったく同じものを配置するんだぜ?

『あのですね…現在この大陸だけでバランスを取ってるんですよ? 反対側に質量が増えれば自転速度が変わる可能性が大です』

 いや…だって海底を隆起させるから質量は…

『では、海底の質量バランスが崩れますよね?』

 ………。

『振り子の紐が長くなるようなものですよね?』

 ………。

『そんな方法しか考えつかないなんて、どこぞのご都合主義的ラノベ作家の発想と変わりませんね』

 うるさいわ! だったらどうすりゃいいんだよ!

『簡単ですよ。海底隆起に際して、最も比重の低い物質だけを集めて大陸を創造します』

 え? そんな事出来るの?

『そして押しのけた海水を、真水に変換します』

 え~っと…

『大陸創造に使用した物質の代わりに、同質量の変換した真水を置換します』

 置換?

『ちかんといっても、大河さんの好きだった電車での猥褻行為ではありませんよ? 置き換えの事です』

 俺は痴漢なんぞしとらんわ! ちょっと上りのエスカレーターとか階段で、短いスカートの女子高生の後ろにつくぐらいだ!

『…立派な犯罪行為です』

 あんなもん、見られたくなかったら長いスカートにしろと言いたい! あれを穿いてるってことは、見てもOKって事なんだよ!

『…見事に犯罪者の理論ですね』

 いや、それはどうでもいい…んで、置き換えてどうすんだ?

『ごほんっ! そこまですれば、この惑星の元々の質量バランスは崩れません。が、海流には影響が出ますので、そこは調整が必要ですけどもね』

 ああ、そういえば海流の調整がどうとか言ってたな。

『いえ、そもそも地下水脈とか海流まで説明したって、局長から連絡有りましたよ?』

 ……そういえば、言ってた気もする…。

『まあ、ケモ耳ハーレム大陸ひゃっほー! 俺は新大陸でハーレム王になる! とか浮かれまくって聞き逃したのでしょうけど』

 んな事は、目クソ程も思っとらんわい!

『それじゃ、若年性の健忘症ですね。ご愁傷さまです』

 クッソ! 言い返せないのが辛い…


 しかし、あんだけ俺の事脅してた割に、サラは正しい大陸作成方法知ってたんだな? しかも、めっちゃ簡単そうなの。

 最初から教えてくれよ! めっちゃくちゃ悩んだんだぞ!

『禿げましたか?』

 禿げてねーよ! そもそも、お前は俺のサポート役じゃなかったのかよ!

『ええ、そうですけども? 大河さんの人間性と知能の向上の為に、こうしてサポートしてるじゃないですか。禿げるまで宿題を出したりして』

 だから、禿げてねーよ! ってか、宿題だったのかよ! 

『そもそも、新大陸創造をするのは基本的に大河さんです。イメージがしっかり出来てないと、この惑星全土に大きな被害が出るのも確かです』

 むむ? 急に真面目だな。

『確かに大陸の創造に関してのサポートは出来ますが、そのためのアイテムを使えるのが大河さんだけなのですから、言われるままに作業するのではなく、創造にかかわる細かい部分まで考慮してほしいと思っての行動です』

 そう言われると、そうかもしんない…

『まあ、半分は悩んで苦しんで、就寝中に抜けた毛が枕にへばりついているのを、寂しそうな目で朝起きた時に見ているのを眺めているのが楽しかっただけですが。もうぞっくぞくしちゃいますよ~~! 私もSとして覚醒しました!』

 お前、ちょっとこっち来い! フルボッコにしてやんよ!

『いーやーでーすー! 若禿げ様にかかわると、私まで禿げます!』

 禿げは接触感染も空気感染もしねーよ! ってか、誰が若禿げ様だ!

『きゃー! 若禿げ様に、おーかーさーれーるー!』

 人聞きの悪い事叫ぶな! しかも俺の脳内で! お前の毛も毟ってやる!

『わーたーしーはー、元からツルツルでーすー!』

 どこがだよ! いや言うな、聞きたくないわ! このド変態が!


 こうして、何故かあっさりと大陸創造に関しての問題点が、解決してしまった。

 割とあっさりと…。

 長い間、夜も眠れず考えてた、俺の苦悩って、一体何だったんだよ…

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