第323話 その挑戦、受けて立つ!
『あのですね、そもそも大陸を創るって事は、それだけ海水を押し退けるのですから、満潮時の潮位が高くなるって事なんですよ?』
う、うん…
『その上、重力や引力のバランスが崩れたら、大量の海水が陸地部分に押し寄せてくる、つまりは津波ですね』
津波は駄目だ! 防潮堤とか無いもんな、この大陸には。
『そんな簡単なものではありません。計算では、現在あるこの大陸と同じ大きさの大陸を、最もバランスが狂う場所に造ってしまうと、およそ5~60mもの高さの津波が押し寄せます。この大陸の平地の平均的な海抜は、約15mほどです』
げっ!
『大陸の周囲全方向から津波が押し寄せれば、まず平地の人達に逃げる手段はありません。なにせ緊急放送も警報もこの世界には無いのですから。押寄せる濁流で…』
いや、もう理解した。つまり、相当この星のバランスに注意しながら大陸を創らなければいけないって事なんだな。
『ええ。ここまでの話を聞いて、どうお考えですか?』
大陸創るの止めようかなあ…って。
この星を壊滅させてまで大陸を創りたい訳でも無いし…でも、人の生存圏の問題もあるんだったなあ…どうすべ。
『ここは、やはり大河さんのヲタク脳でラノベやアニメ的なご都合展開で、ズバッと解決! 出来ませんか?』
う~~~ん…いや、現実世界にご都合設定とか展開とかはなあ…色々と辻褄が合わなくならねーか?
『そこも含めて、お願いしますよ~。すでに超ご都合主義的な精霊さんを従えてる事ですし』
いや、精霊さんはそもそもご都合主義って言うか、自由気ままな存在だから、俺にもどうにも出来んぞ?
大体、精霊さんに出来ない事も結構あるし…
『ビビューン! バシャーン! ズシーン! って出来ません?』
それ…某特撮物の3人の名前じゃねーか! いや、精霊さんの働き的には間違ってない擬音だけど…
『ほれ、早よ~案を出しなされ』
ちょっと一晩考えてみるわ…でも、何かまた引っかかってる気がするんだよなあ…
寝ながら色々と考えてみたが、たかが一晩で良い案など出るわけも無く、翌日も何やかやと仕事をしながらも考えていた。
あの管理局長は、ご褒美だと言って大陸を創る事が出来るチートなツールをくれたわけだが、実際にはこの星の生物の生態系拡大の為なのであって、本当の意味でご褒美としてくれたわけでは無いってのに、今さらだが気付いた。
いや、気付いてはいたのだが、あえて無視した。
だって、ちょっとだけ新大陸創造とかって、少年心をめちゃくちゃくすぐって、ワクワクしたから。
しかーし! よく考えてみよう。
俺って良い様に使われてるだけなんじゃね?
サラの重力や引力の小難しい話からして、あの管理局長の言った『海底を隆起させるだけ』って言葉をまともに信じたら、偉い事になるのは、しっかりと理解出来た。
管理局長は、この星の生命体を滅ぼしたいのか? いや、それは無いはずだ。
残念な思考の持ち主ではあったが、決して無能な奴ではないだろう。滅ぼすぐらいなら、直接的にせよ間接的にせよ、幾らでもやり様があるはずだ。
それじゃ…単に、新大陸創造のリスクを理解していなかったって事か? あの残念脳ならあり得るか? いや、それもないな。
この絶妙なバランスで成り立つこの星だって、管理局が創造したってんだから、その微妙な部分を崩すリスクを理解してないはずは無い…はず。
って事は、もしかして…管理局長に試されてるのか、俺!?
こんなすごいチート・ツール与えたんだから、使いこなしてみろ! とか、将来は管理局で働く事になるらしいから、その能力をこれで測るつもりなのか?
そうか、これは俺への挑戦か! 良かろう! その挑戦を受けてやる!
つまりはこのツールを使いこなして、人や生き物の生存圏を拡大させればいいんだろう?
やってやろうじゃねーか! この天才トール君の辞書にに、不可能の文字はたまにしか無いのだ!
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