第321話  最大の難問

 何や彼やとバタバタとした恐怖の大王討伐出張の旅も終わり、戦争の様な書類仕事もきれいさっぱりと終わらせることが出来たのは、帰宅後3日目の夕方にならんとする刻限であった。


 残すは最大の難問、人魚さんへの報酬である。

 これは、お見合いぱーりーというか、妊活ぱーりーというか…男の斡旋業務だけであったが、父さんが協力を申し出てくれて、領地で広く公募をかけてくれる事になったので、ちょい楽になった。


 募集条件は、①健康な15以上の男性である事。②人魚さんをはじめとした亜人種に対して偏見を持っていない事。③いかなる事故が起こった場合、その責を自ら負う事。

 簡単に言えば、未成年はダメよ(青少年保護の為)ってのと、差別はメッ! ってのと、例えフラれようと、出来ちゃおうと、結婚や離婚って事になったとしても、全部自己責任よって事。

 当局は、一切の責を負いません! あくまでも場をセッティングするだけです。


 これは後日談なのだが、こんな条件でひっそりと募集をギルドや役所の壁に貼紙した処、来るわ来るわ凄い応募者が来ました。

 一応人魚さんにお伺いを立てたところ、書類審査の後、参加者を決めたいとの意向なので、全員に履歴書的な自己アピール文を書かせてみた。もちろん代筆もOK。

 集まったアピール文は、なんと290枚。人魚さんが一次審査を通過したのは、195枚。

 あんまり減ってないのだが、どうやら人魚さん的に年齢を絞っただけらしい。

 195人は多いんじゃないかなあ~って思ったが、なんと海から仲間を大量に呼び寄せてしまった。

 かくして、女(人魚さん)140人対男(主に人族)195人の、大お見合いパーティーの開催が決定したのであった。

 場所は魔族さんの営む放牧場。のどかに七色羊が草を食む草原の、ネス湖にほど近い場所が会場となったのは、お水が必要な人魚さんにとって必然であった。

 人魚さん手作りのお弁当を食べながら(人魚さんの女子力アピール)の会話を楽しんだ後、ネス湖での水遊び(ビキニで人魚さんが猛アピール)をした結果、見事に人魚さんは全員が男を捕獲してました。

 いや、人魚さん結婚する気は無いんだけど…

 男を数人侍らしている人魚さんもあちこち見受けられ、いつの間にか用意されていた大量のテントの中に、まだ日も高いというのに消えていく人魚さん続出。

『ひっ…!! はぁーッ…あっ…』

『あぅ…ッやめ、あ゛ぁっ』

『おかし゛く゛な゛る゛ッッ…ん、ん゛ぅう゛っ!』

『こゎッ! れちゃ、うぅ…っ、あ゛っお゛っ、ん゛んっ!!』

『ひっまッ…ま゛ッて゛え゛ッキち゛ゃう゛う゛ッ』

 とてもテントの中はお見せ出来そうにありません。

 ってか、喘ぎ声の主が、全員男って…

 

 お見合いパーティーのお手伝いをしてくれていた婚約者~ずや、ドワーフメイドさん、天鬼族3人娘が、息をひそめて漏れ聞こえる声に耳をダンボにしていたが、教育に悪すぎるので無理やりひっぱって屋敷に戻りました。

 あの場にあのまま居ると、興奮した我が家の女性陣が飢えた狼になりそうで怖かった…

 見合いパーティーは、あの後5日ほど続いたらしく、結局人魚さんたちはとっかえひっかえ並み居る男達を食い散らかしたとか。

 長閑な牧草地帯は、今やサバトの会場と化していた…

 5日後の夕方、カラカラに干からびた195人が草原に放り出され、つやっつやの140人の人魚さんたちが意気揚々と海へと向かう虎バス臨時便に乗って帰って行ったそうだ。

 恐ろしい…飢えた狼に近寄るのは止めよう…

 

 ちなみにずっと後に分った事なのだが、草原に響き渡ったあの喘ぎ声に中てられた魔族さんご一行に、翌年ベビーラッシュが起きたそうだ。魔王さんにすごく感謝されたのだが…何とも言えない複雑な心境になったのは、当然の事なんじゃないだろうか。


 これで恐怖の大王戦にまつわるエトセトラも終わった事だし、本格的に新大陸について動き出そう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る