第317話 困った時には精霊建設さん
蟻さんの如き移住者全員を無事に神国へと送り届けたのは良いのだが、ただ移住者へと割り当てられただけの土地なので、当然ながらな~んにも無い土地であった。
とはいっても、あの盆地と違って周囲には緑も溢れ、水量もそこそこある河川と小さいながらも湖もある。
今まで乾いて荒れた大地ばかりを見てきた人々は、この何も無い土地であっても、希望溢れる地に見えるようだった。
ここまで来たら、アフターサービスとして、仮の住居ぐらいは何とかしてあげよう。
父さんの領地で造った地下都市(笑)っぽい物なら簡単だからな。実際に造るのは精霊さんだけど…
元々、地下に住んでいた人達だから違和感もないし、もしかしたら地下の方が落ち着くかもしれないし。
父さんの領地で造った地下都市に少し手を加えたアレンジ版を建造してみよう。
彼らの主食だった、巨大な萌やしとエノキ茸とタマゴダケ農場用の地下農場スペースを用意しないとな。
もしかしたら将来的に特産品として彼らの収入減になるかもしれないし、慣れ親しんだ食べ物があれば、故郷を遠く離れても少しは慰めにもなるかなあ…なんて。
だが、あの巨大カタツムリと粘菌スライム擬きに関しては、今回持ち込むのは却下した。
ウドチャンはもう彼らも二度と口にする事は無いだろうが、許してほしい。
だってホワイト・オルター号の船倉に、あんなカタツムリを乗せたくないからさ。
嫌だろ、普通? いくら害がないとはいえ、あんな巨大なのが船の中をうろうろしてたら。
ましてや、どっかに卵でも産みつけて、それがわちゃわちゃと孵化したりしたら…さぶいぼ出るど!
『マスター、さぶいぼって何ですか?』
ありゃ、通じなかったか。日本のとある地域の方言で、鳥肌の事だぞ。
『なるほど…いぼというのは、あくまでも形容なのですね』
うん。まあ、あんまり真面目に分析しないでくれると有難いかな…なんか恥ずかしいから。
子供の頃は、さぶいぼって共通語だと思ってたんだけど、東京で言ったら通じなくてさ…どうでもいい思い出だけど。
さて、それではまたまた登場の精霊建設の出動です! ここはきちんと挨拶をしておきましょう。
俺の前にずらっと並んだ属性ごとに色の違うヘルメットを被った、屈強…ではなく、愛嬌のある姿の精霊さん達。
彼等に向かって、土地建設に向けた指示を出しましょうかね。
「今回は、父さんの領地に造った地下都市とは違って、幾分あの自然の洞窟都市っぽいアレンジを加えたいと思います。今まで地下で生活してきた人達が、いきなりこんな場所で暮らせと言われても馴染めないでしょう。ですから、すこしでも心安んじられるような生活空間を、目指して施行したいと思います」
いきなり何も無い空間に向かって大声でしゃべり始めた俺を、訝しむ移住者の方々を尻目に、まだ続きますよ。
「あの地下を見てきた君達であれば、俺が何を求めているのか理解しているだろう。だから細かい事はあえて言いません。皆の好きにやっちゃってください。ただし、将来を見据えて5000人規模で生活出来るスペースは確保して欲しい!」
まるで俺が1人で演説ぶってる痛い奴の様に見えるんだろうなあ…精霊さんって基本的に俺以外には見えないから。
「今回、地下は3階までを居住スペースとします。さらにその下に農業プラント用のスペースを確保してください。基本的な設備は、前回同様にお願いします。はい、質問ある方? 誰もいませんね。それでは、十分に安全に気を付けて、工事開始! ご安全に!」
そう締めると、精霊さん達は一斉に散らばった。
散らばると言っても、各属性のリーダー精霊の指示の下に、地下都市予定地へと別れただけなのだが。
俺の頭がおかしくなったとでも思ったのだろう。
周囲の人々がざわつき始めた時、ビリビリと空気が震え始め、同時に立ってられない程の揺れが足元を襲った。
ずごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご…
精霊建設さん、フル稼働のお時間です!
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