第255話  痛くないよ~

 そうこうしている間に、カズム・キノコ君は、綺麗さっぱりと地面から引っこ抜かれ、空中に固定されていた。

 これで中心に光り輝く飛〇石があれば…いや、止めておこう。


 キテ〇ツ斎様もびっくりの大発明、『全部すいとーる君1号』も順調にカズムの菌糸を吸い込み続けている。

 この『全部すいとーる君』、実は他の創造物を内蔵しているのだ。

 本体にあるサイクロン分離機の中には、創造した2個の黒い玉が入っている。


 黒い玉の1個目は、『エネルギー吸収ボール』。

 直径15cmほどあり、ガチャ玉に比較すると結構大きい。

 こいつの特徴は、『全部すいとーる君1号』…面倒くさいな、掃除機で良いか…で吸入したエネルギーに関して全て吸収する、言ってみればエネルギーのブラックホールって感じの代物。

 カズムは吸い込まれる端から、長い時間溜めこんでいたエネルギーをこの吸収ボールに吸い取られてしまうって訳だ。

 元々、魂のエネルギーの余波とかいう、良くわからんエネルギーを溜めてこの世界で復活したんだ。

 その大元であるエネルギーを吸い取っちゃえば、再生も復活も出来ないだろう。


 黒い玉の2個目は、『物質吸収ボール』。

 ま、要は掃除機で吸い込んだあらゆる物質を、原子レベルに分解して吸収してしまう、疑似ブラックホール…何か違うけど、そんな感じの物。

 今も透明な掃除機のサイクロン部の中では、吸い込んだ菌糸がうにょ~~んと伸びては、さらさらと粉末状に分解され、さらに霧の様になったカズムの菌糸が、ぐんぐん吸われている。

 見てるとちょっと面白い。


 我が発想は、やはり無敵だった! 元は神とかいう話だったので、完全に倒す事は無理だろうとは思ったが、封印は出来ると考えて、これをガチャ玉で創ったのだ。

 まあ、これだけでは心もとないので、ボールを封印して保管する手も作ってある。

『でも、それって某ニンテ〇ドーのゲームとか超人でロックな人の超能力が元なんですよね? 地球人の想像力とは、恐ろしい物です…まさか、神を封印する手段のヒントが、そんな物に隠れているとは…』

 これが日本人の底力なのだよ! 敬いたまえ! うわっはっはっは!

『…すごく軽蔑したくなったのは、何故でしょう…』

 日本人の魂は、サブカルにあり!

『…真面目な日本人に怒られますよ…』

 これでいいのだ!


 ん~ナディア、そっちの状況は?

『全て順調です、マスター。しっかりと灰になるまで焼いて、すべてこのサ〇クロン号ですか? これで吸い込んでます』

 サイ〇ロン号では無い。

 それでは仮面のライダーな人が乗るバイクになってしまうではないか! 『全部すいとーる君』という立派な名前があるのだ。間違えない様に。

『これは失礼をしました。ダジャレの様な下らない名前ならば、まだネタの方がましじゃないかと、勝手な真似をいたしました。お許しください』

 うん…俺、微妙に貶められてる気がする。まあ、いいけど…

 仕事はちゃんとしてね。


 まるで、蜘蛛の巣の様に広がっていた菌糸のほとんどを吸い込んだ掃除機は、いよいよカズム本体へと迫る。

 ジタバタと空中でもがくカズムだが、世界中から集まったのではないかという数の精霊さんに抑えつけられ、成す術も無し。

 掃除機の吸い込み口に、精霊さんが一致団結して押し込もうとしている。

 あ、精霊さん…無理やり押し込むと、故障の元です。

 それに、あまり近づくと、精霊さんも何かの間違いで吸い込まれるかもしれませんので、注意してください。ええ、近づけてくれるだけで十分ですから。あ、そのぐらいの距離でオッケーです…はい、ありがとうございます。

 怒れる精霊さんには、丁寧を心がけましょう。


 あ、キノコの傘にくっついた目が、すっげえ涙目…そりゃそうだわな…見せ場なんも無かったし…俺もだけど…。

 キノコ・カズムが足(菌糸)を自らブチ切って逃げ出して…あ、はい、精霊さんが逃がすわけ無いですよね。

 土の精霊さんが、でっかい岩を投げて、風の精霊さんが岩を加速させ、火の精霊さんが過熱して…溶岩みたいになった岩が、カズムにブチ当たりましたよ。

 ええ、それも無数に。

 敵(本当に敵なのか?)ながら、ここまで一方的にボコボコにされてると、ものすごく憐れだな。

 水の精霊さんの拘束がこれでもかってぐらいに締め上げて、俺の前にポイって捨てられたカズム君。

『お゛う゛ばぉえぁくょえゑぬれゐぃあああ…』

 うん、何言ってるか、言語がカオスだからわからん。 


 この世界では、ちゃんと意思を持って発した言語は相手の脳内で自動的に変換されるはずなのに、意味不明ってことは意味の無い叫びなのか?

 何となくカズムが『たすけてくれ~!』って言ってる気もするんだが、助ける気も無い事だし、無視しとこう。

 ほれほれ、大人しく我が渾身の創作物である掃除機君に吸われちゃいなさい。

 そして原子レベルまで分解されて、大人しく封印されちゃいな。

 怖くないよ~痛いのは最初だけだから。

 ほら、もう先っちょ入っちゃったよ…どう、怖くないでしょ?

 だんだん、良くなってくるから。

 大丈夫大丈夫、優しくゆっくりしてあげるからね。

『大河さん…その表現は、ナイスです! ここがええのんか~って、渋いおじさまの声でお願いします』

 サラはショタだけじゃなく、フケ専 もいけるのか!?

『失礼ですね! 私はストライクゾーンが広いだけです! この世の全ての雄は私の物です!』

 広すぎだろ、お前…

『何を仰る! 私は正直に、スケベを曝け出しているだけです!』

 いや、普通は全てをさらけ出すんだぞ? スケベだけ曝け出してどうするよ。


 でもなあ…このままだと、せっかく作った俺の新装備が無駄になるなあ…

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