第245話  フラグ?

 会議での結論は、(仮称)ミニ恐怖の大王108体を、俺以外の全員で、無力化した上で捕縛、もしくは殲滅か足止めする方向で、大王本体を俺が叩く事で決まった。

 というか、それしかないしな。

 まず(仮称)ミニ恐怖の大王の正体を見極める必要があるが、それはナディアと天鬼族3人娘に任せる事にする。

 もしも人が操られているのであれば、無力化した上で捕縛する。元に戻す方法は、全てが終わった後に考える。

 (仮称)ミニ恐怖の大王が、文字通り大王の分体的な物であれば殲滅…というか消滅の方向で行きたいのだが…どんな性質を持っているのか分からないし、曲がりなりにも神の生み出した物であるならば、いくらチート装備持っていても倒すのが難しいかもしれないので、その時は俺が恐怖の大王を倒すまで足止めに徹してもらう。

 どっちにしても、妖精達の分析結果が出次第という事になった。


「では、本日の会議はここまで。明日の予定は、7時起床。7時半に朝食を摂った後、準備が整い次第大王に向けて進攻します。明日の決戦に向けて、各自しっかりと身体を休めてください。では、解散」

 会議の締めと明日の予定を確認した皆は、割り当てられた部屋へと戻っていった。


 今日ばかりは、全員がゆっくりと休める様に個室に別れる。

 不安もあるだろうが、俺も決戦前夜は1人でゆっくり寝たい。

 こんな夜にまで、婚約者~ずの突撃で精神値を削られたくはないからな。

 確かに、全員不安もあるだろう。

 なんたって、父さんと俺以外は、本当の意味での実践はこれが初である。

 自らの命を懸ける事も、他者の命を奪う行為も、そう簡単に出来る事じゃない。

 怖くなって当然だ。

 だが、冷たいようだが、そうなると知りつつ付いて来たのは皆だ。

 この戦いは、元々は俺と俺の創りだした眷属だけで行う予定だった。

 その方が気楽だったからと言うのが主な理由だが、皆を危険に晒したくなかったのも理由の一つ。

 一応、恐怖の大王…カズムへの対抗手段として、秘密兵器というか秘密道具は創ってあるのだが、それも下手をすると皆を巻き込んでしまう可能性がなくは無い。

 そういう意味では、俺も対決が怖いのかもしれない。

 誰かを傷つけてしまう可能性があるっていう事に関して。


 自分が傷つくのは、さほど怖くない。

 前世だって傷だらけになって地面這いつくばってでも、生き抜いてきたんだからな。最後には車にプチッと潰された人生だったけど、それまではマジで耐え抜いた人生だった気がする。

 おかげで転生した今も精神的には、同年代よりかなり強いという自負はあるんだ。

 だけど、身近な人が傷つくのには耐えられそうもない。

 この人生では、父さん母さんに、前世で出来なかった親孝行をいっぱいしたい。

 前世でも妹は居たが、碌な兄貴じゃなかった…だから、コルネちゃんが自慢できるような兄貴になりたい。

 嫁さんに愛想つかされ、子供とも離婚後1回も会ってない…子供達どうしてるかなあ…

 せめて生まれ変わったこの人生では、俺の手の届く範囲の人だけは幸せにしたい。

 幸いにも今の俺の両手の範囲は、かなり広い。それだけの権力がある。

 領民だけじゃなく、グーダイド王国や隣のアーテリオス神国の民だって、出来るかぎり幸せにしたい。

 その為ならば俺の持てる力の限りを尽くして、死力を振り絞って戦い抜く所存である!

 だけど、一緒に戦ってくれる人が傷つくのはなぁ…それだけが怖い…


『な~にを格好つけてんですか、このオタンコナス!』

 んぁ!?

『誰も傷ついたり死んだりしたって、大河さんに文句は言いませんよ! 好きで付いて来てんですから!』

『そうです、マスター。私はこの身命を賭して、マスターと共に戦い抜きます!』

『『『マスター、私達も同じです! この身ある限り戦い抜きます!』』』

 ナディア…アーデ、アーム、アーフェン…ありがとうな…俺は幸せ者だ…

『ちょ、ちょっと! 私は? ねえ、私は?』

 サラは…死なないじゃん。どうせこの世界で死んでも、転生局に戻るだけじゃん。

『そうですけど、そうなんですけど! でも、こう…雰囲気とかあるじゃないですか!』

 そ、そうか? それじゃ雰囲気出して…

 俺、この戦いが終わったら、サラに言いたい事あるんだ…

『まさか、ここにきて無理くり死亡フラグたてるつもりですか!?』

 この戦いを無事に乗り切れたら…

『ごくり…乗り切れたら?』

 少しは真面目に働けよって。

『………そのフラグはゴミ箱に捨てておきます』

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