第246話  朝からモヤモヤ

 朝、カーテン越しの柔らかい日差しで目が覚めた。

 ちょうどいい時間だな。準備を始めるとするか。

 腰の変身ベルト…よーし! 秘密兵器ポケットに…よーし! パンツ…新品よーし! 髪の毛…寝癖無し! 準備完了!

 って、簡単だな俺の準備って。


 これって女だと化粧とかいろいろあるんだろうけど、男だからなぁ…ビジュアル系バンドみたいに、俺も化粧してみようかな。

『止めた方が良いと思います、マスター…』

 何故にそう思うのだ、ナディアよ。格好良くなるかもしれないぞ?

 それに戦化粧っていうのかな? こう、自分自身に暗示というかバフを掛けると言うか、精神を高揚させるというか…

『いや、大河さん…この世界で化粧している男って、そっち系の趣味の方のみですよ? まさか、目覚めたんですか?』

 いやいや、それは無いぞ、サラ。

『マスター、BLはいけません! 非生産的な行為です』

『ちょ、ナディア! BLは見たり想像するだけならOKなんですー!』

『サラ様…確かにそうですが、その対象がマスターというのが問題なのですよ』

『何をおっしゃるナディアさん! 大河さんも十分に美少年の範疇です! 屈強な青年ぐらいに攻められてる姿を想像してみてください! ほ~ら、だんだん良くなってきたでしょう~?』

『う…確かに。しかし、私としては線の細いドワーフの男性をマスターが攻めるというのも…』

『むむむ…やりますね、ナディアさん。しかし細マッチョの青年にまだまだ未成熟な大河さんの肉体の絡み合い…そう、拘束されて抵抗できなくされた大河さんが、無理やり抑えつけられて、最初はあれほど嫌がっていたのに、だんだんと快楽の海の底に…』

『なるほど、それはそれで見てみたいです…マスターは押しに弱い所がありますから、きっと強引に攻められたら…』

『『大河さん(マスター)は、受けで決定です(ね)!』』

 お前ら、俺の頭の中で、何の話で盛り上がってんだよ!

 ってか、俺が受けなのか? そうかそうか、絶対に嫌だからな!

『大河さん、嫌も嫌よも好きの内といいますよ?』

 いやいや、絶対にイ・ヤ・だ! 俺は普通に女の子が好きなの!

『そう言えばマスターは、あれほどの婚約者に毎夜の様に攻められても、手を出しませんね…もしかして心の奥底では…』

 違うってば! どうせ俺はヘタレだよ! そうだよ、ヘタレですよ! 悪かったな、ナディア!

『そう…ヘタレ…それは受けへの第一歩…』

 そんな諺ないからな! 俺をその道に引きずり込もうとするな、サラ!

 ってか、お前ら腐ってたのかよ! この世界にもあるのかよ、BL!

『ありますよ? 婚約者~ずのどなたとは申しませんが、王都で購入してました、薄い本』

 え、マジ? なあ、サラ…誰なんだ? それ誰なんだ?

『この戦いに無事に勝利したら、教えてあげるかもしれません』

 俺、恐怖の大王と戦うよりも、そっちの方が怖いんだけど…勝利した後がめっちゃ不安なんだけど。

『さ、みんなそろそろ食堂に集まりますよ。いつまでも遊んでないで、早く来てください』

 お前だよね、グダグダにしたの! 

『大河さんの性癖が悪いのです』

 ぜ~~~~ったいに違うからな~~~!!!

 朝から疲れた…この船の中にまさかお腐れ様がいらっしゃるとは、思いもしなかった…

 何で、決戦前からこんなに俺のメンタルずたぼろなんだよ…おうちかえりたい…


 食堂にはすでに皆集まっていた。

 う…この中に、婚約者~ずの中に、お腐れ神が居るというのか? あれは感染すると聞くし…

 いや駄目だ! 今は恐怖の大王との戦の事だけを考えるんだ、トールヴァルド君!

 でも気になる…


 メリルは…王城にはメイドさんがいっぱい居るよな。もしもたまに帰った時にメイドから感染していたとしたら? あり得る。

 ミルシェは…あれは腐というよりも、ヤンデレだ。多分、大丈夫…だと思いたいが、素質は十分にありそうだな。

 ミレーラは…良くも悪くも純粋だからなあ。誰かが感染していたら、すでに染まっている可能性が…

 イネスは…ありゃ脳筋だから無いか? いやいや、だからこそあり得る…かも?

 マチルダは…知的なその表の顔の裏側に、腐ったご趣味を隠している? あり得る…


 うっわー! 全員に可能性があるじゃねーか!

 まともに婚約者~ずの顔が見れない! 飯の味すらわからん!

 こんなモヤモヤしたままで、恐怖の大王との決戦に臨んで大丈夫なのか、俺!?

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