第217話 よきかな
残された婚約者~ずが何を話しあってたのかなんて、俺は知らない。
遠く無い未来に、サラから全部聞く事になるのだが…やましい事なんてしてないから大丈夫だよ。 本当だよ?
ベッドでブレンダーとクイーンと久々にめいっぱい遊んで、ぐっすりと寝たお1人様極楽飛行船旅は、日が傾く頃にお終いとなる。
まず王城に呪法具で到着の連絡と、着陸の許可を頂き、近衛兵の皆さんが見守る中、練兵場のど真ん中に着陸。
船体後部のカーゴスペースから、大型の蒸気自動車を引っ張りだして、近衛兵の皆さんに挨拶をしてから、父さんの王都別邸へと移動します。
予定では、議会は明日、納税処理は明後日。全部終わったら、父さん達を送って、俺も帰る。最短で3日、余裕を持って5日かな。
明日と明後日の夜は暇なので、父さんとどっかに遊びに…行けるわけないよな…母さんが居るんだし…
毎年、父さんと2人で来てた時は、王都の本屋巡りしたり、ちょっぴりエッチなお店(服装だけだよ? サービスは無いよ?)に行ったりもしたんだが、別邸に母さんがいるから、それはアウトだ。
しかも通信の呪法具なんて物があるんで、もしもエッチなお店で、
「あん、社長ったら~えっち♥」
なんてやってる最中に入電しようものなら、とんでも無い事になる。
通信に出なければ、間違いなく後で厳しい追及をされるだろうし、出たら出たで甘ったるい女の声がもしも先方の耳に届けば…間違いなく地獄を見る。
こそっとだまし討ちの様に家を出てきたから、もしも事がバレたら死を覚悟せねばならなくなる。
だから、今回は我慢なのだ! いや、そもそも俺は真面目なので、父さんに嫌々付き合ってただけだから。
本当だって、信じてくれ! オレハ、エッチナコトニナンテ、キョウミナイヨ。
父さんの別邸に着いた俺は、着替えと晩飯を済ませて、父さんと難民関連の報告と打ち合わせ。
今後の難民や王都のスラムからの移民関連の対策も色々と話しあった。
ま、結論から言えば、俺が地下都市をバンバン造って、どんどん受け入れちゃおうって事。
まだまだ工場は拡大するし、冒険者へなってもらっても良いし、お仕事は山の様にある。
間違いなく自立した生活が出来る様になるまで、地下でいいなら期限付きで無料で貸し出す事に。期限を設けないと、いつまでも居座る奴が出るから、そこは心を鬼にしてやりましょう。
ただし、孤児達や身体や年齢的な理由によって職に就けない生活困窮者は、その限りではないけどね。
炊き出しも備蓄が尽きるまでは継続するつもりだが、ここは陛下にちょっと援助をお願いしようかな。
スラムの民を引き受けるんだし、それぐらいはして貰わなきゃね。
ま、移民にはある程度の支度金を出す様な事を言ってたし、そこは大丈夫だろう。
打ち合わせが終わったら、クッソ眠い議会に備えて、おやすみなさい。
コルネちゃんに、「お兄ちゃんと一緒に寝る?」って聞いたら、母さんと寝るんだって…寂しい…
仕方ないから、ブレンダーとクイーンとで寝る事にするよ、とほほ。
さて、明けて本日は議会の日。この日は、グーダイド王国の貴民、勲民が一堂に会する日でもある。
王城付きの貴民・勲民による議会は、実は事あるごとに行われているのだが、本日は年に1回のフルメンバー議会。
っていっても、常日頃から政務や財務を担当している人が纏めた、来年度の予算や政策その他諸々を、長々とボソボソとした声で、この場で並べ立てて、反対の人手をあげて~ って感じで承認を得るだけの議会。
ま、つまり特に何も問題なければ、手を上げる事すらない、お昼寝タイムなのだ。いや、寝ないけど。
たかが俺様ごときが、国全体に関わる様な政策に突っ込むなど、畏れ多い事でごじゃります。
何か気になったら、ネス様より~ッとか言って、陛下に直接奏上するという荒業もあるので、ぼへ~っと過ごします。
終わったら、顔見知りの方々とちょこっと歓談。
お酒の席へのお誘いは、ノー センキュー!
さっさとお家に父さんを引っ張って帰ります。
翌日の納税に関する処理も順調に進んで、子爵領としては破格の納税額を収める手続きも終了。
父さんのとこも、少し時間が掛かったけど、何とか終了。
まあ、父さんの領地は、街や村が多いからね…時間が掛かるのは仕方ない。
親子で高額納税者名簿に名を連ねる事になったよ! 前世では考えられない事だ。
って事で、本日も、ダッシュでお家に戻ります。
帰宅した時の婚約者~ずの追及を華麗に躱せる様に、万全の体勢で望まねばならないのだ。俺はまだ死にたくないからな!
このグーダイド王国で貴民・勲民が一堂に会する日に、王都にやって来てない方が何人か居るそうだ。
謎の義賊が某男爵家の不正の証拠の数々を盗み出し、王城に持ち込んだらしいぞ。
某も聞きましたぞ。その証拠類を見た陛下は、すぐに兵を差し向けたとか。
某男爵と所縁のある家や商家は、軒並み査察が入るって話だぞ。
議会の為に王都に来ていた所縁のある者は、すでに捕縛されたとか。
義賊はその屋敷の金目の物もごっそりと盗み出し、陛下にお渡ししたそうだ。
陛下は、その私財を恵まれない孤児やスラムの民のために使うと決めたらしい。
なんと! 建国以来、どうにも手付けられなかったあのスラムをか!?
今回の件で潰す家や商家の私財も差し押さえると、莫大な金が国庫に入るぞ!
スラムの民は、アルテアン領が内々に引き受けると承諾したそうだ。
伯爵家は、すでに領の備蓄を全て吐き出す勢いで、難民に施しをしていると。
さすがは、ネス様の使徒殿と巫女殿の御父君ですな。いや~慈悲深い。
いやいや、降って湧いた差し押さえと、義賊が寄進した金品を、スラムや難民の為に使おうという陛下のお考えが…
腐った貴族や商家を一掃して、その金で建国以来の問題解決にあたるとは…
まてまて、浮いた爵位を狙う競争に乗り遅れるなよ?
それよりも、まずは今代の国王陛下を、まさしく賢王として歴史に刻まねば!
おう、それは良い考えだ! すぐに王国史編纂課の担当に言伝よう!
それが良い! どれ、私も連名で…
私にも連名を! 私も是非に! 某も名を連ねさせて頂きたい!
議会が終わった議事会場で、残った貴民・勲民が、この様な話をしていたそうな。
王国史に陛下を賢王として名を残すように呼びかけ、その功を使って浮いた爵位を自分の身内に貰おうとする者が、王国史編纂課に押し掛け、大騒ぎになったとか。
ま、大体は筋書き通りに進んでるみたいだな。
よきかな、よきかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます