第208話 番外編)ダンジョンに行こう!②
さて、ダンジョンの入り口をくぐった俺達だが、別にダンジョンに挑戦して素材集めをしたり宝箱を探しに来たわけでは無い。
入り口から仄暗い通路をしばらく進むと、まるでダンジョンの壁をすり抜ける様にして目の前に女性が姿を現した。
もちろんこのダンジョンの管理者であるネコ耳巨乳のモフリーナだ。
「トールヴァルド様、そして婚約者の皆様、お付きの方々、ようこそ第9番ダンジョンにお越しくださいました」
丁寧に腰を折って挨拶をしてくれるモフリーナの頭が俺の目の前に…
くっ! ネコ耳をモフりたい…でも今モフるとみんなの目が…
我慢しろ俺! 頑張れ理性! ふぅふぅはぁはぁ…なんとか踏ん張れた…危ない危ない。あの耳は致死性のトラップだな…
「連絡を貰ったからね。毎月悪いねえ。もう本当にいいのに…」
「何をおっしゃいますか! トールヴァルド様のおかげで、我がダンジョンはここまで発展したのです! この御恩を忘れるなどあってはならない事です。本来であれば私が貢物を持ってお伺いせねばならぬ所を、わざわざお越しいただくなど…とても心苦しいのですが…」
「まあ、それは気にしないで。今日はみんながダンジョンを見学したいっていうので連れてきちゃったけど、迷惑じゃ無かった?」
こんなにゾロゾロ大人数で迷惑かけてるこっちの方が、マジで心苦しいって。
「いえいえ。ささ、ここに居ては冒険者達の目に留まるやもしれません。まずは管理室の方へお越しください」
そう言って、モフリーナがパンパンと手を叩くと、俺達はダンジョンの地下5階のモフリーナの私室へと転移した。
「さあ皆様。ゆっくりとお寛ぎください。すぐにお茶などお持ちいたしましょう」
地下5階は、かなり広い空間となっている。俺は何度も来ているのだが、始めて来た一行はまたもキョロキョロと辺りを見回す。
「みなさん、集合です!」
なぜかミルシェが婚約者~ずに集合を掛けて、円陣を組んでゴニョゴニョと話していた…
「モフリーナ…ケモ耳は…泥棒ネコ…あの巨乳は…危険…監視…力を合わせて…」
うん、あの中に混ざるのは止めよう。何だか危険な香りがする。
ユズカは壁に掛かっているダンジョン監視用のモニター(?)を食い入る様に見ていた。たまにモニターを指さしてユズキの肩をバシバシ叩いて騒いでいるが、あれはモンスターに興奮しているのか?
この世界ってファンタジーだけど、ファンタジー物に出てくるような魔物とかモンスターって、基本的に一般人は目にしないんだよね。
だってその辺にほとんど居ないんだもん。こんなダンジョンの中か、もの凄い山奥ぐらいしか生息してないんだって。
子供の時に成敗したワイバーンだって、結構な山の奥に居たわけだし。
魔物達の生息には魔素の濃度がどうたらこうたらと、昔モフリーナに教えてもらったが、どうでも良いので覚えてない(笑)。
その代わりと言っちゃ何だけど、ちょっと森に入っただけでサファリパークかってぐらい獣がうようよしている所もあるんだってさ。
俺の領も、森に分け入れば車程あるデカいクマやらイノシシがいたり、角が生えたウサギがいたりする。
そっちの方が一般人にとっては、なじみ深く危険で怖い。
一通りモフリーナの部屋を見て周った一同は、ソファーに座ってモフリーナの淹れてくれたお茶を飲みながら暫し談笑。
その際、どうやらユズカとユズキがダンジョンに挑戦したい様だと告げると、お試しで挑戦させて貰える事になった。
お試し区画として通常ダンジョンと切り離し、3階層までの弱めのモンスターを集めた場所を作ってもらいました。
ま、あくまでもお試しなので、ドロップも宝箱も出ないけどね。
取りあえず、3階層の入り口に2人を転送してもらった。
もちろん2人には変身解禁しておいたぞ。安全第一だからな。
喜々として変身した2人は…地上3階層で…無双してた。
いや~、3階層までのモンスターにあの装備は強すぎだな…
お? 今度はモンスターの群れが出たな。どうすんだろ?
あ! とうとうユズキが変形したよ! ユズカに強請られたかな? 本邦初公開!
キラキラのエフェクトと共に、異次元空間から飛び出した各パーツがユズカの周りに出現して、ガシャン! ガシャーン! と腰と背中のプロテクターと連結。
両肘のプロテクターは大きくなって、シールドへと変形。
あっという間に、ユズキは半人半馬の姿へと変形! 続けて背中からは、まるで火の鳥の様な炎の美しい翼が伸び、これで半人半天馬への変形完了!
ちなみに、ユズキは馬の下半身の胴体の中で正座してます(笑)
俺的に赤いと言ったら機甲界ガ〇アンなんだよな…
んで、強く印象に残ってるのが敵だったけど赤い人馬兵!
何でかって? 格好いいからに決まってんじゃん!
深い意味はないよ。面白そうだからなんて思って無いよ? 本当だよ?
サラにも突っ込まれたけど、ネタ変形で創ったとか、ユズキが尻に敷かれてるからとか、コレッポッチモカンガエテナイヨー(棒読み)。
さて、息の合ったユズキとユズカだから…ほら、やっぱユズカが跨った。
ま、ユズカのロスヴァイセは騎乗時に追加効果があるから、当然だけど。
ユズカが半人半天馬の背中でランスを構えて、ユズキが…やっぱ突撃したよ(爆笑)
ファンタジーでお馴染のゴブリンにコボルトにオオカミっぽいモンスターが、2人によって蹴散らされてゆくって言うか、ロードキルだな…憐れなモンスター…
一頻り暴れた2人は十分満足したらしいので、転移前に決めていた合図をしたのを確認したモフリーナが、また地下5階へと転移させた。
「楽しかった~!」
めっちゃいい笑顔で、ユズカは出ても居ない汗を拭く仕草をしながら言った。
「楽しんで頂けたようで、何よりです」
モフリーナも、社交辞令なのか本心なのか分からないが、ニッコリ笑顔でユズカに応えた。
お試しだけあって素材も無し宝箱も無しだけど、まあアトラクション感覚で楽しんだみたいだから、これはこれで良いかな。
ただ、お試しとは言ってもマジな戦闘なので、モニター越しとはいえ、グロ映像も幾らか見えてしまった。
それをモロに見てしまったメリル、ミレーラ、マチルダは、ちょっぴり青い顔をしていた。なぜかミルシェはウズウズとしてやりたそうだったし、イネスは元より戦闘職なだけあって参加したそうだったが、本日は装備が何もないので、又の機会にしてもらった。
ま、お試しとはいえ、モンスターの復活にも多大なエネルギーが必要なので、御礼の意味も兼ねてちょびっと大目に俺のエネルギーを渡しておいたよ。
お茶とお菓子を頂きながら、他愛も無い話をしたあとは、最上階の大ボスである巨大な黒竜も見学した。
俺は黒竜さんと挨拶したり、ちょっとしたお話をしたりしたのだが、後ろに居た社会見学御一行様は、全員ガタガタ震えていた。
うん…あれは流石に怖いよね。俺だって勝てる気しないもん。
だけど、俺は仲が良いから全然怖くナッシング!
お土産にって、ブチッ! と自分の鱗を引きちぎってプレゼントしてくれる優しいドラゴンさんだもん。全員、最後まで顔が引き攣ってたけど…
大ボスに見送られ(?)ながら、俺達はモフリーナにダンジョンの1階、入り口近くまで転送してもらった。
ここから5分程で、お外に出れます。
今回の貢物は、なかなか大粒の宝石類を小袋いっぱい。
くれる時にモフリーナが、
「これで婚約者の皆様に、ぜひ素敵なアクセサリーを作ってあげてください」
と言っていたのだが、それを聞いた婚約者~ずは、また円陣を組んでいた。
「…意外と…今後は…静観すべき…見逃して…6番目の…」
うん、聞かなかった事にしよう。
「さ~それじゃ家に帰るよ~! 早く帰らなきゃ、晩御飯に遅れるからね~!」
俺達は、のんびりと歩いて出口を目指した。
ダンジョンに入ったというのに、服の乱れ一つ無い俺達を見た入り口のギルド職員は不思議そうな顔をしていた。
ごめん! 俺達、ダンジョンマスターのお部屋に遊びに…もとい、ダンジョンへ社会見学に来ただけなんですよ…
車に全員乗ったのを確認した後、我が家目指して出発進行!
「みんな、ダンジョン楽しかった?」
「「「「「楽しかった~♪」」」」
後日、婚約者~ずそれぞれに、モフリーナが献上してくれた宝石でネックレスとピアスを作らされました…
ドワーフ職人さんが妙に張り切ったので、ものすごく良い出来で、
「とっても素敵…」「ふぁ~可愛い!」「…あの…似合いますか?」「これは…(売ったら幾らになるかしら?)」「ありがとうございます! 家宝にします!」
うん、みんな喜んでくれた様で、良かった良かった。一部、アクセサリーを渡した時の感想がおかしい気もするが、まあ良しとしよう。
さすがドワーフ職人さん! だけどその分お値段もお高めで、俺のヘソクリが見事に吹っ飛んでしまいましたとさ…トホホ…
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