第194話  褒めろ! 褒めるんだ!

「おお! みんな綺麗だ! メリルもミレーラもミルシェもマチルダもイネスも、とっても綺麗だよ! アーフェンもアーデもアームも、とっても可愛いね。皆の素敵なドレス姿を見ていると、すごくドキドキする。皆を連れて王城のパーティーに出たら、出席している他の男達から呪いをかけられるかもしれないね。ああ、僕ってなんて幸せなんだ…こんな素敵な女性に囲まれて晩餐会に出れるなんて」

 うん…とことん褒めておこう。オーバーなぐらいがちょうどいい。


「も、もう…トール様ったら…でも、褒めて頂いて、ありがとうございます」

 さすが婚約者第一席、メリルが顔を真っ赤にしながら言葉を発する。

「この晩餐会でトール様に恥をかかせないよう、皆でしっかり準備してきた甲斐がありました…ねぇ?」

 メリルがそう言って皆を振り返ると、全員が顔を赤らめてコクンと頷いた。

 ん~~~~~! お世辞抜きにして可愛いではないか!

 それぞれのドレスをじっくりと見ながら、個々に感想を告げた。

 何分にも5人もいるので、そこら辺はカットします。だってめっちゃ長くなるからさ…疲れたよ。


「マスター、私達も可愛い?」

 アーフェンがそう言いながら、淡いオレンジ色をベースにし、髪色と同じ銀色のレースを贅沢にあしらったドレスの裾を軽く抓みながら訊いて来た。

「もちろん、3人とも良く似合ってて可愛いよ」

 改めて3人を褒めると、キャイキャイと喜んだ。

「と~っても可愛いけど、今日は敵の懐での晩餐会だから、何が起こるか分からない。マチルダとイネスは僕がカバーするから、メリル、ミルシェ、ミレーラの護りは頼んだよ」

 そう言うと、3人は真剣な顔で頷き、

「「「お任せください」」」

 そう力強く応え、婚約者~ずの側に控えた。


 ちなみにユズキは、ユズカの姿を見て、

「………」

 何も言えず、真っ赤な顔をして固まっていた。ユズカも真っ赤になって黙ってるし…何だこりゃ?

 2人して恥ずかしがってんのか? 特製とはいえ普通のメイド服なんだが…?

 ずっとモジモジしてる新婚ホヤホヤはほっとこ。



 さて、では全員で父さん達の控室に行ってみますか…って、隣だけど。 

 扉を軽くノックして呼びかけると、サラが開けて中へと入れてくれたので、ぞろぞろとお隣の部屋に民族移動。

 部屋の中に入ると、父さんが正座させられていた。

 もう何も言うまい…あんたって人は…一体、何を言ったんだか…

「母さん、とっても綺麗だ! ドレスがさらに母さんの美しさを引き立ててるね。コルネちゃんはとっても可愛いね。いつも元気なコルネちゃんにお似合いのドレスだよ。ナディアも、普段のイメージと違うけど良く似合ってる」

「あらあら、トールちゃん、ありがとう。みんなとっても綺麗ね。素敵だわ」

 母さんが婚約者~ずと天鬼族3人娘を見て、笑顔で褒める。

「そんな…お義母様こそ、とてもお美しいです」

 マチルダさん、いいぞ! ホレ、みんなももっと褒めろ!

「本当です、お義母様…とても綺麗…」

 普段、口数の少ないミレーラの言葉だから重さが違う!

「もう、みんな恥ずかしいからそんなに褒めないで。もういい歳なんだから」

 そうは言うが、いい歳してそんなドレス着てとか、若作りとか言った途端に、般若のスタンドが背後に現れるんですよね?

 俺は絶対にそんな虎の尾は踏まないぞ…父さんは学習できない様だけど…


 まあ、その後は女性陣がキャピキャピ互いのドレス姿を褒め合ったりしてた。

 無論その間、父さんはずっと放置されてた。

 時折、コルネちゃんとサラが痺れる足の裏をツンツンしに行ってた(笑)


 おっと! コルネちゃんのちょっと裾丈の短いかわゆいドレス姿を、この目に! 脳の記憶野に! じっくりねっとりと焼きつけねば! 

 さあさあ、お兄ちゃんに着飾ったコルネちゃんを見せておくれ!

 ん~クルッて回ってみようか? 

 おお! もしかしてスカートの下は白い膝上ソックスか! そうなのか!?

 絶対領域があるのか!? いや有るはずであーる! 無いはずがなーい!

 はぁはぁはぁ…コルネちゃんの、絶対領域をお兄ちゃんに見せてごらん!

 コワクナイヨ~ヤラシイキモチナンテナイヨ~!

 


『マスター…そろそろ止めてください…キモイです』 

 ちょ! ナディア、なんちゅー事を言うんだ! キモクなど無い!

『いや~大河さん、さっきの顔は間違いなくモザイク案件でした』

 な!? サラ、疲れて幻でも見たのではないか?   

 そもそも、俺は妹の成長を純粋に見守るただの兄だぞ!

『『目が泳いでる(ます)! 嘘だ(です)!』』

 ………俺って信用なさすぎじゃね?

『『そんなものは、元から無い(ありません)!』』

 ぶっ!

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