第187話 明日は我が身
結婚式という我が領…いや、この世界初のイベントを成功させた翌日から3日間、ユズキとユズカには休暇を与えた。
俺は何かと気遣いのできる男なのだ。
この世界では、結婚式など今まで無かった。結婚は役所に書類を出したら終わり。
せいぜい身内でお祝の席を設ける程度の簡素な物が普通だった。
まあ、地球だって文字通りの結婚は、婚姻届けを出すだけなんだけどな。
んで、何が言いたいかというと、結婚したからといってお仕事に休みなんて、本来は無いんだ。
だが、俺はちゃ~んと有給休暇をあげたわけよ。
ちなみに、有給休暇なんて概念もこの世界には無い。ブラックな世界だ…
休暇明けに出勤してきた2人は、朝一番に俺の所へと挨拶にやって来た。
うん、めっちゃユズカが艶々して、ユズキの疲労度合いが半端無いんだが…もしや休暇中ずっとお楽しみでしたか?
思っても口に出さない俺って、空気が読める男だ。
いや、あとでユズキには、元気の出る魔族さん特製の栄養ドリンクっぽいお薬でも差し入れてあげよう。流石にかわいそうだ。
もしやかしたらとは思っていたが…ユズカは肉食系女子だったんだな…まあ、ユズキ…がんばれ。
2人は街の温泉やリゾートで思う存分遊んできたらしい。
ユズカがカジノにはまって、大変だったとか何とか。
地球だと新婚旅行とか行くんだろうけど、この世界で気軽に旅行なんて行けるわけ無いし、近場で遊ぶところがあるんだから思いっきり遊んだって事だろう。
「そうか、‶街″を楽しんだか。この領に来てから、なかなか遊ぶ時間もなかっただろうから、良かったよ」
「ええ、子爵には感謝しております。僕たちの家も建てて頂いたし、ゆっくりと2人で遊ぶ時間までもらえて」
ユズキは、相変わらず固いなあ…異世界組しか居ないときは、敬語なんていらないって言ったのに…
「子爵様! カジノでヘソクリすっからかんです! お給料のアップを要求します!」
ユズカ…それは自業自得というものだぞ…バクチというのは、胴元が絶対に儲かる仕組みなんだからな…
「却下だ! まあ、条件次第で、お小遣いなら出せるがな」
「やった! どんな条件ですか? えっちぃのはダメですよ! もう人妻なんですから!」
こいつは…何を言っちゃってんですか!?
「アホ! んな条件出すわきゃないだろ。レポートを提出しなさい」
「「レポート?」」
「うん、レポート。我が街のリゾート施設を利用してみての感想や問題点、出来たら改善案まで書いてくれたらベストだけど、まあ感想文でもいいや。各々レポート用紙10枚以上!」
「はい、分かりました」「げ!」
ユズカ…げって何だ、げって。
「出来が良ければ、僕からお小遣いをあげよう」
あちらの知識を豊富に持ってる異世界人の意見は貴重だからね。
多少のお金は惜しくないさ。
2人は、仕事の合間や夜に家で書くそうだ。
別に2人の夜の時間を潰そうとかいう、意地悪で言ったんじゃないぞ? 本当だぞ? なんでユズキはそんなに嬉しそうなんだよ…そこまでなのか、ユズカは?
そうか…色々と検討を祈る。
明日は我が身だな…
まあ、2人がリゾート施設で遊んだり、新築の家でベッドの使い心地を試したりしていた間、俺と婚約者ーずは俺の実家に遊びに行ってた。
別に新年を迎えたからって、挨拶や帰省する風習なんてこの世界には無いんだが、可愛い可愛い、地上に舞い降りた純白の天使コルネちゃんに、お兄ちゃんからお年玉いをあげようかと。
やっぱ正月と言えばお年玉じゃん。
そんな風習、この世界には当然ながら無いが、超絶かわいいコルネちゃんにお小遣いあげたいじゃんか!
お金は、民とコルネちゃんの為に使うのが、正しい使い方です!
とか言いつつ実家に帰ると、コルネちゃんとナディアがご神木の前で、ネスへの今年一年の領内の諸々の幸せを祈念して、奉納の舞を舞っている最中だった。
ミレーラの巫女服を参考にした緋袴姿のコルネちゃんは、やっぱりラヴリー!
こ、今夜は久しぶりにお兄ちゃんとお風呂に入らないかい?
んあ、何だナディア…何故結界をはった?
『…』
おま、俺を危険人物だとでも言いたいのか!?
『マスター…新年早々、シスコン病を発症しないでください…コルネリア様の貞操の危機と判断しました』
こらー! 何っちゅー事を言うんだ! コルネちゃんの貞操は永遠に不滅なんだぞ! YES コルネちゃん! NO タッチ! の精神を持つこの俺様が、そんな不埒な事をするわけないだろーが!
『いえ、先程のマスターの邪悪な顔は、コルネリア様にとってトラウマになり得る物でした!』
…お前、最近何気に酷いよな…
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