第174話  奴が戻って来た…

 失敗した魔石の残骸の山を築く事、実に苦節15年…嘘です、1週間です。

 とうとう通信機が完成しました!

 

 と~るねっと~と~るねっと~♪ 夢のと~るねっと~あるてあん~♪

 さあ、本日皆様にご紹介するのは、こちら!

 遠距離の方との音声通話を可能にした、世界初! 初ですよ~皆さん!

 なんとなんと、夢の通信機でございます!

 筐体は、いわゆる地球という星のガラケーと言われる物を模しております。

 この通信機には、なんと通信用と着信音用に魔石を2個も搭載しており、着信時には一部の方にはとても昔懐かしい黒電話のベル音が鳴ります。この着信音に関しては、かなり喧々諤々と激しい討論が開発者の間であった様ですが、分かりやすく飽きの来ない音と言う事で決定したそうです。

 通信用の魔石は本体に内蔵されており、発信・通話と終話の操作用のボタンはガラケーと同様に緑と赤で分かりやすくなっており、お年寄りやお子様でも簡単に使用する事が出来ます。

 もちろん通話中に間違って操作しない様に、少しだけ凹んだ場所に付いておりますのでご安心してください。

 この通信機は2台で1セットとなっており、相互間でのみ通信できます。

 多数の場所との通信の必要がある方は、複数セットをご購入下さい。

 操作はいたって簡単! 発信や着信通話時には緑のボタンを押し、通話を終了する時は赤いボタンを押すだけです。

 通信機には魔石を複数使用しているため、どうしてもお値段もお高くなってしまうのですが、なんと今回は完成記念として特別価格! いいですか~特別価格ですよ~…2万を切って、イチキュッパ! イチキュッパでのご提供になります!

 みなさ~ん! 数に限りがございますので、この機会に是非ご検討ください!

 今ならなんと発売記念として、先着50セットに限定で素敵な女神ネスのストラップも付いてきます。

 お電話はお早めに! 


 って、電話なんてこの世界に無いから通信機作ったんだけどね~。


『大河さん…言いたい事はそれだけですか?』

 うん!

『私、大変だったんですよ! ソロで…しかも素手で30階層まで何度も死ぬ思いをしながら登ったんですよ!』

 ほっほー! そりゃ~自業自得だな。口は禍の元だぞ。

『モンスターは攻撃してこないうえに弱点を教えてくれたし、トラップの手前には注意書きが貼ってあったし、かすり傷を負ったらすぐにモンスターが回復薬を飲ませてくれたし、ご飯時にはデザート付きの定食が用意されてたし、夜には結界を張ってくれて風呂とベッド付きのセーフゾーンが用意されていましたけど、苦労しました!』

 おま、そんなヌルゲー仕様だったのかよ! もう一回ダンジョン行って来い!

『いーやーでーすー! ずっと薄暗くてジメジメしててモンスターしか出てこないダンジョンにいたら、私のリドビーが爆発します! いえ、すでに何度も爆発しました! あやうくもふもふのコボルトとぬめぬめスライムを相手にするところでした!』

 お前の性欲は見境なしかよ!

『なぜかコボルトとスライムは、私を見たら一目散に逃げ出す様になりましたが』

 怖かったんだろうな…お前が…

『でも美少年のパーティーと一緒なら、何年でもダンジョンに潜りましょう!』

 そのパーティーが危険だわ! モンスターより危ない性獣に喰われるわ! 

『あ、でも妊娠したら帰ってきますよ?』

 やかましいわ!



『それで、これが通信機の完成版ですか?』

 おう! 完成品だ。すでに量産体制に入ってるぞ。

『まあ、大河さんとしては良い出来なんじゃないでしょうか。これをばら撒けば、恐怖の大王出現への対応はひとまず落ち着きそうですね。あとは以前話していた、例の対策ですか…あれも今回の創作でいけるんじゃないですか?』

 うむ、そこも考えている。現在、ユズキとユズカも交えて鋭意製作中だ。

『ほうほう。完成が楽しみですね』

 まあ、もうちょっと時間はかかるかなあ…仕様が決まれば早いと思うぞ。

『ふっふっふっふっふっふっふ…』

 ふっふっふっふっふっふっふ…


 ▲


 父さんの領地では、蒸気自動車の製造に加え、この通信機の製造工場も新たに建設した。

 細かい作業が多いが、軽量な材料しか扱わないので、成人したばかりの子供や女性など、体力の無い人達に人気の職場となっている。

 地球のクリーンルームとまでは言わないが、冷暖房設備も完備した工場で、ほぼ座ったままで出来る仕事でもあるしね。

 これで雇用も大幅に増え、仕事に困る人は全く居なくなった…っと言うよりも、人手全然足りず、近隣の領に求人をかけるぐらい忙しい。

 だがしかし! 各工場は、定時8:30~17:30、週休二日制を厳守させている。

 異世界でブラックな起業はしたくない。福利厚生もしっかりがっつり充実させており、領民の生活レベルも右肩上がりで向上中。

 この他にも魔石式蒸気機関を利用した紡績工場や製材工場など、多くの工場を続々と建造中だ。

 仕事さえすれば確実に収入が得られ、安定した暮らしが出来る領なので犯罪も激減した。

 これを王国全土に広めたいのだが…腐った領主がいたら難しいかもな…

 

 とにかくまた新しい発明と商品なので、国王様に献上せねばならない。

 いつもの如くネス様からの啓示とか神託に沿って作ったって言えば、だいたい納得してくれるのだが、販売前に陛下に献上しとかないと、ぐちぐち文句言われるかもしれないからね。報・連・相は大事!

 ミレーラとマチルダさんの実家にも通信機を置いてあげたいので、またまた家族総出でホワイト・オルター号に乗って、お空の旅へ出発だー!

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