第167話  楽しく創造!

 いつもの様に、丑三つ時にサラと家を抜け出して、光の魔道具を持って山の中に。

 後ろにサラもくっ付いて…ちょ、くっ付きすぎだ! 離れろ! 歩きにくいだろ!

 あんまり季節感の無い世界だけど、ちょっと気温が下がってきたかな?

 肌寒さを覚えつつ、慣れた山道をえっちらおっちら真夜中のハイキング。

 変身すれば簡単に駆け抜けられるんだけど、何となくいつも自分の足で歩く。

 あのスーツ着て運動しても、全く筋トレにならないからな。

 最近忙しくて修練も出来てないから運動不足だし、ちょっとは身体を動かさないと、なまっちゃうし。

 さて、いつもの場所に到着したんで、始めますかね。

 

 テレッ テッテッテッテ♪ テレレッ テッテッテッテ♪ テレッテッテテ テテテテ テッテッテ〜♪ トール君、〇分クッキング~!

 本日は、遠距離通信の道具製作にあたり、3〇で新たな法則や概念をこの世界に創り出したいと思います~!

 まず用意するのは、真っ黒なガチャ玉でございます。

 これを両手で、決して落とさない様にしっかりと、しかし優しく握り込みます。

 そして、新たな法則や概念を創り出すためのイメージをしっかりとしましょう!

 ここで創造のポイントです。絶対にこの時に余計な事を考えてはいけません。雑味が入ってしまいますからね。よ~く集中してイメージしてくださ~い。

 この素材を使用するのは、実は初めてなんですよ~。ちょっと緊張しますねぇ。

 さあ、イメージがしっかりと出来たらそっと秘密の呪文を唱えましょう。

 『創造!』簡単でしょう?


『え~っと…大河さん、何をゴチャゴチャ言ってるんですか?』

 いや、何となく創造も楽しくやった方が良いんじゃないかな~って…てへ♪

『いや、可愛くありませんけど…まあいいです。今回使用する黒いエネルギー変換玉は、かなり危険な香りがします。しっかりと結界を張っておきましょう! 主に私だけに!』

 俺には無いのかよ! ってか、ずるいぞ! 俺にもセフティーゾーンをプリーズ!

『では、創造を開始しましょう!』

 無視かよ! 無視なのかよ! もういいよ! やってやるよ!


 新たな概念・法則をイメージ…この世界には魔法は有る。しかしその大半は、もう大昔に伝承が途切れたりしてしまい、現在では千人に1人しか魔法を使えないという。例外的に魔法を使える種族として、魔族が存在するが、それでも使える魔法の威力は低く、種類も非常に少ない。

 だが、ガチャ玉の制限で、この星に過去に存在していた魔法は創造で作りだす事は出来ない。この世界に存在しない物で無ければ創れないんだからな。

 そう考えると、魔法と似てはいるが別の術を創り出した方が確実だろう。

 万人が平和的に利用できる術で、そう理論的に難しくなく、なお且つ発展性もある形が望ましいのだが…あまり多くを望むと失敗してしまう恐れがある。

 なので、シンプルに前世の俺の世界の表語文字である漢字をベースに、それ自体に意味を持たて組み合わせる事で術を発動出来る様にしたいと思う。

 簡単に言えば、漢字の組み合わせが魔法陣となる感じだな。

 言霊や言魂って言葉もあるぐらい、日本では言葉に魂が宿ると言われてたんだから、それを術に組み込んでも違和感ないしな。

 うん、イメージは整った。

 完全なこの術の体系化には、俺以外で唯一日本語を理解しているユズ&ユズのコンビにも手伝ってもらう必要はあるんだが、何とかなるだろう。


 よし、行くぞ! イメージ…イメージ…イメージ…

 

『願望内容確認。脳内イメージ確認』

 ふむ…ここまでは今までと同じだなあ…

『重要事象改変願望のため管理局規定により、この星のアカシャ年代記を参照…既存の概念・物理法則の照会、確認中。この星において存在しない概念・法則であり、且つ今後も自然発生や発見される事の無い概念・法則である事を確認。管理局長への承認申請、承認確認』

 なんか、小難しい事になってる…アカシャ年代記って、アカシックレコード?

『世界改変に伴う必要エネルギー量算出、算出完了。必要エネルギー補充開始、完了。イメージ補完に伴う概念・思想・物理法則の改変開始、完了。輪廻転生管理システムのバグチェック開始、完了。』

 うぉ! めっちゃエネルギー吸われた感じがするぞ! 大丈夫なのか?

 でも順調っぽい?

『ギフトカプセル内包物変換開始、完了。事象改変に伴う最終影響を確認、OK。カプセル開封を許可します』

 キター! 開けるぞ~! 開けるぞ~! ドキドキ… これ固いんだよなぁ…

 よっしゃ、いくぞ! 


 かぽっ!


 へ?


 どっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!


 吹き飛びました…ええ、数十メートルほど転がりました。

 ゲホゲホ…こんな衝撃、ガチャ玉開封で初めて味わったぞ…あちこち打ち身で痛いし、頭もたんこぶ出来てるし…

 ってか、かぽっ! って何だよ! 緊張しまくってたのに、あっけなく開いたから心の準備もパーになったわ!

 まだクラクラする頭を手でさすりながら爆心地に向かうと、ゆっくりと明滅する水晶玉みたいなのが宙に浮いていた。


『ふ~、危なかったですね~大河さん!』

 おま! 1人だけ結界に籠って逃げてたじゃねーか! 

『そりゃ危険ですからね。そんなの当然でしょう? 私はこれでも、か弱い乙女なんですからね!』

 か弱い? 乙女?

『何か言いたい事でも?』

 エロい痴女なら目の前に居るが。

『誰が痴女かー! ちょっと熟れる前の青い果実である至高のショタの味見を趣味にしているだけの幼気な少女に向かって、セクハラだー!』

 いや、お前…めっちゃ一息で痴女暴露発言やん。ってか、ドワーフ男子を毒牙に掛けてないだろうな? やめろよマジで! マジでセクハラで訴えられるからな!?

『それが、まだ味見できてないんです…近づくとなぜか逃げてしまって…』

 危機察知能力が半端無いな、ドワーフ。

 どうかそのまま悪魔の手から逃げおおせてください。


 そんな事より、この水晶だよ! これ…どうやって使うんだ?

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