第158話  いざお城に!

 翌朝は見事なまでの晴天!


 べダムさんの居るお城まで、のろのろと空を進む。高度にも最新の注意をはらう。

 あまりにも低いと威圧感が半端無く高く民衆が怖がるだろうし、かといって高すぎると降下する時に驚かせてしまう。

 適度に姿が見えて、威圧感があまり高くない高度…100mぐらいで良いかな?

 確かコマーシャル用の飛行船って、それぐらいの高度だったよね?


 ゆっくりゆっくり空を進み、お城の裏手にある空き地に降下する。

 着陸と同時に、一応シールドを張っておく。

 この世界の武器で、ホワイト・オルター号に傷を付ける事は出来ないが、内部からの工作には弱いからね。

 勝手に乗り込まれ無い様にするためだ。

 まあ内部が弱いと言っても、ほぼ全てが不燃・難燃素材で出来ているし、強化プラスティックよりも強固な不思議素材で出来ているので、破壊はものすごく困難なんだけど。


 さて、キャビンから格納式のタラップが迫り出し、アルテアン一家が真アーテリオス神聖国へと降り立ちました。

 実は、戦争に参加した俺も父さんもこの国に入るのは初めてで、もちろん家族も初めて。

 真アーテリオス神聖国出身のミレーラ以外は、初体験ってわけ。

 コルネちゃん、キョロキョロしないよ! おのぼりさんみたいだからね。ネス様の巫女なんだから、堂々としていなさい。

 サラ、くんかくんか匂いを嗅がない! 確かに外国って変な臭いするけど…ここはしないだろ!

 そんな馬鹿な一幕は、神聖国の皆さんに全て見られておりました。

 笑顔の母さんのこめかみの青筋が怖い…


 我が一家を出迎えてくれるのは、もちろん筋肉ゴリラ…ではなく、神聖国首長であるべダム氏。氏を先頭に、ずらりと並ぶ騎士や文官の皆様の姿は壮観だ。

 家は俺を先頭に、父さん母さんコルネちゃん、メリル、ミレーラ、ミルシェ、妖精一同と続き、使用人が最後に控える並び。

 ナディアや天鬼族3人娘の姿を目にした、出迎えの人達は、目を見開き驚いた様子だった。


 そのままべダム首長の前まで進むと、当たり前だが挨拶の言葉が投げかけられた。

「グーダイド王国より遠路はるばるよくお越しくださいました、女神ネス様の使途殿、アルテアン伯爵殿。此度はネス様のご意向による訪問だと窺っております。真アーテリオス神聖国一同、心より歓迎いたします」

 一応、ネス様の意向で訪問した事になっているので、ここは俺が答礼する。

 外交官や貴族としての訪問だったら、爵位の高い父さんの出番なのだが、今回は俺と言う訳だ。

「べダム首長殿、急な訪問で誠に申し訳ございません。此度はネス様と太陽神様、月神様のご意向により、この真アーテリオス神聖国へ神託が下されましたのでご報告に参りました」

 そして俺は振りかえりつつ、

「我が家族と、ネス様の眷属である妖精達も此度の訪問には同行しおりますが、何卒ご寛恕頂きたいと思います。神託の内容は、また後程別室にてお話させて頂きたいと思います」

 恐怖の大王とかこの場で言っちゃうと、きっと場は大混乱だろうからなあ。

「アルテアン家の皆様、ネス様の眷属の皆様、ようこそお越しくださいました。まだまだ戦後の混乱が残っておりますれば、存分なお持て成しとなりませぬが、どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」

 べダムさんは、俺の家族達に向かっても、丁寧にあいさつをしてくれた。

 そして、再び俺に顔を向けて、

「神託の件は諒承いたしました。長旅お疲れでしたでしょう。まずは城内にてお寛ぎいただければと思います。案内させます故、どうぞこちらへ…」

 べダムさんはそう言うと、背後に控える騎士へ軽く視線を向け顎を引いた。

 合図を受けた騎士が、俺達の前に進み出て、

「では皆様、私がご案内させて頂きます」

 丁寧に腰を折ると、キビキビとした動きで回れ右をして歩きだす。

 クソでっかい騎士なのに、俺達の歩幅に合わせてゆっくり歩く心配りには、とても好感が持てた。

 べダムさん、しっかり騎士の教育が出来てるなあ…戦争の時の罵詈雑言吐き出してた騎士達とは違うのかな?

 そんな感想を抱きながら、俺が騎士の後に続き歩きだすと、我が家のメンバーも静々と俺の後に続き歩きだした。

 

 向かうは城との事だけど、どう見たって教会だよなあ…これ。

 ゴシック様式の真っ白な石造りの壁と、神々の逸話かな? を表し緻密で色鮮やかな美しいステンドグラス。

 高く聳える数々の尖塔には、美しい彫刻が施されているのだが…あのごっついおっさんの彫刻が太陽神? 申し訳ないねえ…太陽神のイメージが完全に真逆になっちゃって。ただのおっさんの彫刻になっちゃったよ。

 あそこにウサ耳ロリ巫女の彫刻を追加してね。ニコニコ顔付きの太陽のぬいぐるみを持たせてさ。

 フライング・バットレスで美しいアーチを描く回廊を抜け、幾度か廊下を抜けて、俺達は食堂の様な部屋へと案内された。


 入室と同時に、ミレーラが部屋の片隅で並び立つ人物を目にし、大声で叫んだ。

「お父さん! お母さん!」

 部屋の中には、ミレーラが心より再会を望んでいた彼女の両親が、滂沱の涙を流しながら微笑んでいた。

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