第153話  帰宅するまでが遠足です

 王家ご一行は、神木である生命の樹のその大きさに驚き、祭壇の周囲を飛び回る妖精達を見て、さらに驚いた。

 もちろん、これは俺が考えた演出なんだけどね。

 コルネちゃんとナディアが祭壇で両手を神木に向かって広げると、まるで神木からにじみ出る様にして姿を現し、まるでフルートの様な美しい声で歌い舞い踊る姿は、とても幻想的で誰も目が離せなかった。

 やがて一通りの演技が終了した時には、その場の全員から盛大な拍手が沸き起こった。

 祭壇の上で恥ずかしそうにペコッとお辞儀をするコルネちゃんと、スカートの端をちょこんと摘まんでお辞儀をするナディアと妖精達には、誰しも惜しみない賛辞を贈った。


 妖精達は、ネスにとって大切なこの村やご神木を護る存在である事の説明を、一通り王家の皆様にした後、簡素ではあるが父さんの屋敷にて王家一同とお茶会が催された。

 ここでもやはり話題の中心は、コルネちゃんとナディア、そして妖精達だった。

 陛下から、「しっかりお勤めを果たすんじゃぞ」と声を掛けられたコルネちゃんは、しっかりと「はい、頑張ります!」と返事をした。

 うん、可愛い。でも、特に頑張る必要は無いからね。だって、巫女ってでっち上げのお仕事だから。


 さてさて、駆け足にはなりますが、ツアーの最終目的地であるネス詣でに出発しましょう。

 とは言っても、ホワイト・オルター号だと、父さんの屋敷から俺の屋敷まで15分程。離陸したと思ったら、もう着陸と言う感じだ。

 ネス湖の畔には、多くの参拝客が今日も来ているのだが、王家の警護のために少しだけ拝殿の代わりに建築した、湖の中の鳥居の正面は立ち入り禁止とさせて頂いた。

 王族の方々が参拝する間だけだから、許して欲しい。

 ついでに遠巻きでも御利益がある様に、久々のネス様ご本体に登場してもらいましょう。


 畔から望む鳥居の先の湖面から、ゆっくりと真っ白なネスが浮上させると、くるぶし付近までを湖面に浮かばせる。

 巨大な女神像が宙に浮くのだから、その光景は奇跡に見えるだろう。

『良くぞ参った、グーダイド王国の王族達よ。この先、この世界には多くの試練が訪れる事でしょう。しかし、そこな我が使徒トールヴァルドと共に、それを乗り越えるのです。さすればより明るき未来がこの世界に齎される事でしょう。また、我を信奉する多くの民たちよ、そなた達も我が使徒に協力し、善行を積み徳を高めなさい。徳なき者は、来世で畜生道へと堕ちるであろう』

 う~ん、てけとーだけど、ネスの説法はこんなもんでいいか。

 王家一同も参拝客たちも、ネスのお言葉に感動して平伏しちゃってるし。

 

 【王家ご一行様、空の旅にご招待ツアー!】のスケジュールは、これで終了。あとは王都に帰るだけです。

 まあ、もう夕方なので、本日は我が家で一泊してもらいましょう。

 我が家自慢のドワーフ・メイド4人衆が、本日獲れたて新鮮な魚介類を使って、腕によりをかけたのドワーフ料理(ほぼ和食だけど)を用意してくれますから、どうぞご堪能ください。

 あ、刺身は苦手かな? もう慣れたメリルが刺身を美味しそうに食べてるのを見て、国王様が手を伸ばしたけど…大丈夫?

 国王様、めっちゃ手をパタパタしてるけど…美味しかったのね。良かった。

 それをきっかけに、全員が貪る様に料理に手を伸ばしたよ。

 大きなテーブルに所狭しと並べられた料理が、あっという間に食べ尽くされました。

 食後は父さんと陛下が米酒(日本酒)で、良い感じに酔っぱらってて、母さんやお妃様に呆れられてるけど、今日は大目に見てあげてね。

 自慢って程じゃないけど、そこそこ広い浴場でリラックスしてもらったら、申し訳ないけどホワイト・オルター号でお休みください。

 俺の屋敷には、こんな人数泊めれる程の部屋数無いんで…申し訳ない。

 でも湖の上に浮かんでるから、きっと朝は綺麗な景色が見れると思うよ。


 さてと…あとは王家ご一行様を王都まできちんと送り届けなきゃね。

 その後は、我がアルテアン家一同揃って、ミレーラの故郷である真アーテリオス神聖国へと、突撃しますかね。

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