第154話  ヨーソロー!

 王家の皆様には、アルテアン領ネス様参拝ツアーにご参加いただき、まことに有難うございました。

 今後ともアルテアン領をどうぞご贔屓に、お願いいたします。

 

 帰路のキャビンで、一応簡単ではあるが陛下にはこの後に真アーテリオス神聖国へ行く事は告げておいた。

 無断で隣国へ行ったら、まあ問題だと騒ぐ輩も居るだろうから。

 当然ながら陛下には、行く理由を聞かれたが、

「ネス様のご意向です。真アーテリオス神聖国へ着いたときに、ネス様より何をすべきかご神託があるかと思います」

 と言ったら、簡単にOKが出た。

 陛下に、どうせ行くなら親書ぐらい持って行って欲しいと言われたので、それぐらいならば快くお引き受けしようと思う。

 隣国…つまりミレーラの祖国とは、相互に理解と尊重できる良い友好関係を築きいて行きたいと心から願う。

 出来るならば、この世界にたった一つしかないこの大陸内での争い事など、この先起きないで欲しいのだが。

 ま、時間が出来たら、見た事も聞いた事も無い国を見て周るのも面白いかもしれないな。

 

 帰路は、やたらと順調だった。

 もう精霊さんが、まだ何も指令が無いのかと、しびれを切らしそうだったので、風の精霊さんに取りあえずスピードアップをお願いしたら、張り切って限界速度以上の速度まで追い風で後押ししてくれた…嬉しいが、やりすぎは困りますよ?

 たった5時間で1000km以上を飛びきってしまったのだが、何も言わずとも皆が神の御業という事で納得しているので、あえて何か注釈を付けるつもりもない。

 下手な事を言えば、ドツボにはまりそうだから…

 精霊さんは、もっと速度UPできますよ? って感じでウズウズしてるけど、自重しましょうね。


 無事に王城横の練兵場に着陸し、王家の皆様を降ろす事が出来てほっとした。

 ワイバーンぐらいでは、かすり傷一つ付ける事が出来ない…というか、シールドで近づく事すら出来ない我が飛行船だが、やっぱり山盛りいっぱいの王族を乗せてると思えば緊張もする。

 

 別れの挨拶をしていると、内務卿が悪い笑みでこっそりと、

「元軍務大臣と一族の不正の証拠がたんまり見つかりました。アルテアン子爵のおかげですな。これで領主の居ない領地が出来そうなので、色々と工作が出来そうです。いや~実によい働きをしてくれました。感謝いたしますぞ」

 うん、腹黒さでは、やっぱ政治畑の人間の方には負けるね。

 この言い方だと、一族は爵位も領地も全て没収って感じなんだろうな。

 命があるだけましってとこかな。

 しかも、内務卿はここぞとばかりに、自分の派閥の人間に領地を与える気なんだろうな。

「領民たちに害が及ばなければ、多少はネス様も目を瞑って頂けるでしょう…やりすぎにはご注意を…」

 軽く注意はしておこう。

「はっはっは! 分かっております! 税も下げますし、公費を投入して雇用促進でしたかな? 卿に教えてもらった経済政策を実施して、ネス様にお喜び頂ける領地運営をいたしますので、ご安心を」

 あ~確かにそんな話も、チラッとした記憶があるけど、覚えていたとはさすがだね。この人に任せておけば大丈夫そうだな。

 これ以上、国の面倒事なんて、俺は関わりたくねーし。


 それでは、王都の皆さん、また会〇日まで~会〇る時まで~♪ 別れの、その訳は、話し~たくない~♪ ってなもんで、さっさと出発いたしますよ。

 もうここ最近、何度王都に来ている事やら…もう飽きた。

 ここからは、我がアルテアン一家のファミリー旅行の時間です。

 父さんと俺は、一応領主なんだが…こんなに領地をほっといていいのかなぁ…


 王城の上空をゆっくりと旋回し、進路を真アーテリオス神聖国へ! ヨーソロー!

 正確な距離はよくわからないが、戦争の時の移動時間からして、明日には着くと思われる。

 早朝とか夕刻の訪問はよろしくないので、近くまで飛んで一泊。翌日の昼前後ぐらいに到着するのが理想かな。

 ちゃんと皆にも正装を持って来させてるし、ミレーラも姫巫女の衣装を持って来させてるので、着替えてから訪問しなきゃね。

『大河さんの正装って?』

 アレだよアレ。戦争の時の似非司祭服。

『ああ、アレですか。胡散臭い司祭にしか見えない青い服』

 うん…確かに胡散臭いけど…良い生地使ってるから、結構仕立てるの高かったんだぞ!

『生地はともかく…デザインセンスが…さすが大河さんですよねぇ…』

 うっうっう…泣いちゃうぞ?

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