第151話 彼女へのサプライズ
ミレーラに里帰りを提案すると、少し驚いた後で、彼女はまるで夏に咲く大輪の花の様な、明るい笑顔を見せてくれた。
やはり13歳の少女だよな。
遠い異国の地に独りぼっちで来る時に、きっと二度と故郷の地は踏めないという覚悟で来たはずだ。
交通手段の限られたこの世界では、馬車で数十日の旅は、本当に危険が多くて難しい。
この世界には、どっかのラノベの様な、魔獣や魔物などはほとんど存在しない。
ワイバーンなども居たが、実はあれも空を飛ぶ肉食の爬虫類らしい。ちゃんと卵を産んで育てる、普通の(?)獣だ。
魔獣や魔物と言われる存在は、深い森の奥深くでひっそりと生息しているか、子供の頃の様に、ダンジョンが発生する時にそこから出て来るぐらいだ。なので、異世界物のテンプレの様に、魔獣や魔物と戦うって事は、ほとんどない。
だが、野生の肉食動物は結構いる。オオカミやトラの様な獣に襲われて命を落とす事例は、毎年沢山ある。
もちろん、野盗の類も当然ながら存在しているわけで、馬車の旅ともなれば護衛は必須となる。
1人や2人の護衛では、当然ながら集団で襲ってくる野盗や獣の群れに勝てるはずも無い。だからと言って護衛の人数を増やせば、それだけ費用も物資も必要になってしまう。
ミレーラがグーダイド王国の王城に来た時は、今は真アーテリオス神聖国の首長をしているべダムさんが聖騎士団を引き連れて、やって来たらしい。
そして王城でミレーラを引き渡すと、そのまま神聖国へと引き上げてしまったという。つまり、王城に捨てられた様なもんだな。
それを聞いた時、俺はクソほど頭に来たのを覚えている。
12歳の少女を異国の王城に置き去りって、ミレーラが何か悪いことでもしたのかよ! ってさ。
だけどよくよく考えると、俺の屋敷までのグーダイド王国の地を、真アーテリオス神聖国の聖騎士団を通すのは非常によろしくない。
なのでべダムさん達も、断腸の思いで置き去ったのだそうだ。
べダムさん始め聖騎士団やお付きの侍女たちも、泣きながらミレーラに別れを告げたそうだ。きっと、誰もが二度と逢うことは適わないと思ったんだろう。
そして、グーダイド王国の手厚い警護で俺の屋敷まで来たのだが…政治的な駆け引きがあるにせよ、もう少し何とかならなかったんだろうかと思う。
そんな彼女の心情は、俺だけでなくメリルもミルシェも当然ながら、最初から気付いていたので、常に誰かが側につき添い、寂しい思いをさせない様にしていた。
もちろん母さんもその事には気付いていたので、何かと声を掛けていた。
二度と会えない彼女の実の母親の代わりに、本気でなってあげようとしているのは、傍で見ていて良くわかる。
だからこそ、この国の生活に早く馴染めたのもあるだろうし、我が家の女衆の団結力は驚くほど強い。
まあ、だから逆らったら駄目なのだが…父さんは、結構な鈍ちんなので、よく地雷を踏んで折檻されているが…
ってな事情もありまして、実はこっそり彼女へのサプライズ里帰りを、ミレーラを除く皆で相談をしていたのでした。
皆は大賛成で、是非とも連れて行くべきだと、俺の背中を後押ししてくれた。
いや、本当にいい家族だよな。
ちなみに、実は父さんには何も言っていない。だって、言ったらすぐにバラしそうじゃんか。
今日は、ぐっすりと眠れたらいいね、ミレーラ。
しかーし! 実はミレーラの為だけに、真アーテリオス神聖国へ行くわけでは無いのだ!
かの国に、太陽神をプレゼントしてあげようと思う。
ふっふっふ…戦争の時にせっかく創った、あのウサ耳ロリ巫女の太陽神3D映像投影装置は、倉庫の片隅で死蔵するには惜しいからな。
こっそりあの国で一番高い建物の天辺にくっ付けてやろうと思う。
その時は、クイーンたち、頼むよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます