第146話 はやっ!
アルテアン領トールヴァルド地区…つまり俺の領地は、父さんの領地とはダンジョンの鎮座する山で隔てられているとはいえ、トンネルで繋がっている訳だ。
俺の街から父さんの街までは路線馬車も走っていて、片道2時間半ほどで行き来が出来る、非常に便利な土地柄です。
え~何が言いたいのかと言いますと、そんなにご近所さんなので、噂という物はすぐに伝わるという事です。
我が家の女性陣(特に母さん)は、隠し事には敏感だし、とても怖いので、ホワイト・オルター号の事も話しておかないと危険では無かろうかと、私めは愚考した次第でございます。
しかし、あまりホイホイと使っていると、ネス様からの賜り物という有難みも薄れてしまうので、どうしたらいいかと思い切って婚約者~ずに相談を持ち掛けてみた。
「では、‶第一回 母さんへ怒られない様に報告するのはどうしたらいいか? 対策会議″を、始めたいと思います」
「トール様…義母様に、普通に報告すればよいのでは?」
「うむ、メリルよ。普通とは、どの様な感じなのか具体的に」
会議には、メリル、ミルシェ、ミレーラを緊急招集した。
「いえ、普通に義父様の邸宅に訪問して、事の次第を報告すれば良いだけかと…」
「ふむ、それも一つの案ではあるな。他に意見は無いか?」
その普通が難しいんだ…あれ、何で難しいんだろ?
「トールさま、それしかないのでは無いでしょうか?」
「ミルシェよ、もっと他に良い案があるかもしれないじゃないか!」
「あの…トールさま、それでしたら義父さまと義母さまとコルネさんを、ホワイト・オルター号に乗せてしまうというのは如何でしょうか?」
「なるほど…してミレーラよ、乗せてぐるぐる飛び回れば、母さんも納得すると思うか?」
「はい…あの…きっと、お喜びになるかと…」
やはり、ここはもう一度、飛ばねばならないか?
しかし、昨日お披露目したばかりで、有難みに欠ける気がするし、心配事はもうひとつ…
「自由に使って良いとは言われているが、簡単に何度も飛ばして良いものだろうか?ネスさまの御威光を笠に着て、好き勝手にしている悪い使徒というイメージを持たれないだろうか?」
そう、ネス様を実質的に我が家で独占しているのだから、ネスを利用して好き勝手な事をしている、悪徳領主だの、腐れ使徒だのという噂がたてば、この先いろいろとやり難くなってしまう。
「それこそ、緊急時を除いては、事前に使用理由を民衆に明確に示してから、使用すれば良いのではないでしょうか?」
さすがメリルだ! なるほど、確かに言われてみれば至極当然の事!
「よし、ミレーラ案にメリル案を加えて採用! それで、今回はどんな理由にする?」
駄目だ…俺の貧弱な脳みそでは、良い案が浮かばない! 何故だ、俺の脳みそよ! もっと働け!
「トールさま、こうしませんか? 義父さまと義母さまとコルネちゃんを乗せて、王都まで行くのです。そして、国王さま達、王族の皆様を乗せて、生命の樹とネス様を詣でる為に使用するというのは、どうでしょう? ネス様の御威光を広く世に知らしめるため、特別に王家の方々を乗せる事にしたという事で」
「お? おぉ! いいじゃないか! ミルシェ案、採用!」
「「また王都に行くのですか?」」
メリル、ミレーラよ。これを地球では、蜻蛉返りなのだ~! と言うのだ。
言葉の使い方が間違ってるんだけど…状況は似た様な物だ。
某パパは、蜻蛉と蛙が結婚したって言ってたから、絶対に使い方間違ってるけど…
「うむ! 今度は、快適な空の旅だ。計算上ではあるが、休憩を入れずにぶっ続けで無理をすれば、朝に飛び立って夜には到着するはずだ」
「「「はやっ!」」」
試乗段階で時速80Km/hは出そうだから、12~3時間ってとこかな。
「だが夜間飛行はせず、余裕をもって途中で1泊することにしよう。片道2日の旅だな」
「「「それでも、はやっ!」」」
試乗時は、30km/hぐらいでトロトロ飛んだからね。海上で徐々に加速しつつ最高速度を試したから、誰も速度の変化にに気付かなかった様だけどね。だって海しかないんだから、流れる風景の速さなんてわかんないし。
「まあ、のんびり飛んでも翌日の夕方には到着するから、着替えとかは最低限でいいよ。陛下達を乗せたらすぐに戻るつもりだしね」
トランク1つだけで~浪漫〇行へ~ In tha sky♪ って感じで、いいじゃな~い!
「良し! そうと決まったら、早速準備しよう!」
やはり婚約者~ずに相談したのは正解だった!
俺の貧弱な脳みそでは、こんな案は出なかったはずだ。
蟻と蝶が結婚して、アリガチョーなのだ!
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