第78話  え?

 国王様との謁見に臨む予定の俺と父さんは、別に緊張もな~んもしない。

 

 あの凱旋パレードで父さんは気分が高揚してただろうし、俺は締め付けられた心臓が解放されてほっとしてたからかもしれない。

 ちなみにうちの領の兵士さんは、5歳の時に近衛のゴリラ騎士と戦った演習場で休憩中。もしも俺と父さんが泊りになるなら、ここに天幕張って兵士もお泊りだ。

 

 実際の謁見では、サンデル・ラ・グーダイド国王陛下と真アーテリオス神聖国の代表(仮)べダムさんが緊張してたのは仕方ないかな。

 戦勝国と敗戦国って立場だけど、下手な事したら神様に見放されるのはどっちの国も同じだから、めっちゃ言葉や話の内容に気を使ってた感じだな。

 俺がサプライズで、いきなり謁見の間に女神ネスと太陽神を俺が呼びだしちゃったから、緊張度合がさらに増した気もするけど。

 もうね、2人だけじゃなくて集まってた貴族もガチガチになってたけど、反対に俺はリラックスできたね。

『サンデル・ラ・グーダイド国王よ、この争いに関しての報復は無論の事、遺恨を残す様な一切の言動・行為を禁ずる。邪なる物に欺かれし民に罪は無い。しかと心得よ!この言を違える事があれば、この国に与えておる加護が無くなるものと思え!』

 ネスにあの時と同じ事+α話させたし、

『此度は、我の目が行き届かず信徒が迷惑を掛けた。我に宥恕してやって欲しい。さすれば我の加護もこの国に与えよう』

 なんて太陽神に言われた日にゃ、同じ加護を受けている真アーテリオス神聖国はもはや我が国と同盟国として扱うしか無くなったってわけだ。

 べダムさんだって真アーテリオス神聖国からの賠償は出来るだけしますって言ってるのに、「そんなものは一切不要!」と玉座から立ち上がりべダムさんとフランクに握手したりしてたもんね。

 2人共めっちゃ笑顔が引き攣ってたけど。

『『グーダイド王国と真アーテリオス神聖国に幸あれ』』

 映像だけど花びらが舞い散る中、最後にネスとうさ耳神に言わせると、もう誰も文句を言えなくなった。

 これで俺のこの戦争におけるミッションはコンプリートだよな?

 さあ、お家に帰ろう!


 国王様とべダムさんが話しあいに一旦下がったんで、俺達は休憩。

 いや、そんな事は謁見とか論功行賞が終わってからにして欲しい。

 こんな赤絨毯の部屋にいつまでも閉じ込められててもしんどいだけだし。と思ってたら、20分後に再開だって。

 なんだトイレ休憩だったのか。謁見でトイレ休憩あるなんて、初めて聞いたわ!


「さてヴァルナル・デ・アルテアン伯爵、トールヴァルド・デ・アルテアン子爵。この戦で2人の貢献は過去に類を見ぬほど大きい」

 ありゃ? 再開早々、国王様が何か言い始めた。

「我としては昇爵してやりたい所ではあるが、両名とも現在の爵位になり日も浅い。両名にはすまないとは思うが、此度は昇爵を見送らせてほしい」

「「ははー!」」

 うん、今でも十分だから爵位はいりません。金でいいぞ! 

「だが、真アーテリオス神聖国のべダム代表との話し合いの結果、両名には真アーテリオス神聖国より名誉貴族位を贈る事となった。この貴族位には何の義務も責任も伴わぬが、貴族報酬は我が国を通し真アーテリオス神聖国が出すそうじゃ。受けてくれるな?」

 お? 日本で言う文化勲章とかみたいな感じかな? 毎年、幾ら幾ら終身年金で支給されますって感じの。

 こりゃいい! 貰えるもんはもらっとこ!

「ヴァルナル・デ・アルテアン伯爵には名誉聖騎士位を、トールヴァルド・デ・アルテアン子爵には名誉司教位が与えられる。史上初めて2国より爵位を受けた者となる。また、我が国からも両名に新たに作られた、聖女神勲章を授与するものとする」

「「ははー!」」

 謁見ではこうやって、ははー! って言ってれば大概は何とかなるって学習した。

 ほら、国王様めっちゃ満足そうだ。

「そしてトールヴァルド・デ・アルテアン子爵と、我が娘のメリル・ラ・グーダイド第四王女がこのたび婚約するはこびとなった。いや、実にめでたい!」

 ははー………………えっ?

「「「おお!おめでとうございます陛下!」」」 

 え? え?

「トールヴァルド卿、成人を迎えたら婚儀を執り行うぞ。それまでメリルはそなたの屋敷にて過ごす事となるが、よろしく頼む。これで将来は卿とわしは義理の親子じゃな! わっはっはっはっは!」

 え? ええ? えええええええええええ!!!???

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