第56話  掴みはオッケー!

 その後も父さんと話しあい、トンネルが出来るのであれば造っても良い事になった。

 微々たる金額だけど通行料もとっちゃうぜ!。

 具体的には片道で牛丼1杯分ぐらい……って、分かりにくいか。

 まあ現代日本で言えば、大体ワンコインでお釣りがくるランチ程度。

 トンネル掘って通しても、整備にかかる初期投資と維持管理費用を捻出せにゃならんから、父さんはもっと高くても良いのでは? って言うんだが、俺としては人や物の流れを加速したいから安くてOK。

 もちろん、それに合わせて防壁も建造します。


 実は聖地巡礼とかで遠くから来てくれる一般庶民の金は、実は全くあてにしていない。

 彼らにはせいぜい巡礼を通じて俺の領地の広告塔となってもらうつもりだ。

 収入源としては、主に父さんの領地の懐の暖かい冒険者や商人を引き込む事を目的としている。

 父さんの領地でダンジョンから素材を持ち帰り換金、俺の領地でギャンブルと風俗で散財。

 素材を売った時に税金が父さんの領地に落ち、通行料を取られ、俺の領地で金を落とし、またダンジョンに潜りエネルギーをダンジョンに落とす。

 こうやってアルテアン領の中から抜け出せなくなる冒険者目当ての商人も増えるだろう。

 その商人からも当然ながら、税金が落ちる。

 冒険者にとってアルテアン領は、もはや脱出不可能なアリ地獄と化す事になる。


 お、恐ろしい! ……俺って天才か?

『自画自賛』

 煩いサラ! 何だよ、良いじゃないか!

『捕らぬ狸の皮算用』

 ま、まあそうとも言う。

 だがこう夢と構想はでっかくだな……

『でもナニはまだちっさいですね』

 なんで知ってるんだ……またトイレか風呂で視覚同調しやがったな!

 お前だってちっさいじゃねーか!

『ヌーブ〇きぼんぬ』

 そんなもん創るか!

『豊胸薬かレシピを創ってもおっけー!』

 ……それ、儲かりそうだな。

『今日ご紹介するのは、グーダイド王国で話題沸騰中! 高品質のトールヴァルド社のバストアップ・サプリ! 人気の秘密は一般に出回ることのなかったアルテアン領産100%天然物で作った最高級品のサプリだからです! あなたのバストサイズを効果的かつ短期でアップ★アップ! 世の貧乳でお悩みの貴女にピッタリな最強のサプリメント! 何をしても効果が無かったあなたにおすすめします! 効果が実感出来なかったあなたには、使用後でも30日間の返品保証付き! トールヴァルド社は結果にコミットします! さあ今すぐご注文を! *返品時の送料及び返金手数料はお客様負担となります』

 怪しいテレビ通販みたいだな……。

『私は~このサプリを飲み始めて~2か月で~2サイズもブラのカップが~アップしました~! もう手放せません!』

 うん……こんなモザイクかかったインタヴューあるね。

『さあ! 是非とも想像と創造を! これでミルシェちゃんもDカップ!』

 そこまでは……手のひらに収まるぐらいが好みかなぁ。

 まあ、今後必要だと思った時に考えるとするか。

『私には、今必要なんですよぉぉぉ!』

 知るか!


 ▲


 さて、俺の領地とドリームハウス見学ご一行様をご案内。

 まだトンネルも通してないから馬車で向かうのは無理。

 って事で、みんなで馬で向かいます。

 ミルシェちゃん一家も同行しました。

 母さんは父さんの前に乗って荷物と一緒のサラの馬を曳く。

 ミルシェちゃん一家も同じく夫婦で、ブレンダーには俺とコルネリアとミルシェちゃんの3人。

 途中でダンジョンのモフリーナに挨拶をしたり、トンネルを掘るポイントを父さんと相談したり、防壁設置ラインを決めたりと、お仕事も忘れない。

 森に響くカッポカッポという馬ののんびりした足音と共に森を進み山を抜けて、俺のマイホームに到着した時は、すでに山陰に日が隠れて随分時間も立ち辺りも暗くなっていた頃だった。

 もちろん道中は火の精霊さんが辺りを照らしてくれてたので、危険は無かったけどな。

 う~ん……ブレンダーで走るとすぐなのになあ……早くトンネル造ろう。


 ▲


「さあ、入って入って!」

 流石に暗すぎて外観は良くわからないだろうから、まずは内部から。

 大きな扉を開けて指をパッチンすると、吹き抜けのロビーの天井から吊下げられたシャンデリアに火が点る。

 自動点灯とはいえ、誰もいないのに明るくする必要なし。

 照度も調節出来るし、ON・OFFだって簡単にできるんだぜ!すげえだろ?

 この世界で一般的な蝋燭のシャンデリアでは無いから、サラを除く全員がその明るさと美しさに暫し天井を見上げたまま、ぽかーんと口を開けていた。

 よし! 掴みはオッケー!

「ようこそ僕のドリームハウスへ!」

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