第35話  サラの衝撃的な告白 1

 我が家に戻った俺は、部屋でうんうんガチャ玉のためのイメージを固めていた。


「トールヴァルド様、本日は如何なされますか?」

 急に真面目な声で話しかけられると、気色悪いぞ、駄メイドのくせに……。

「お前、俺が言わなくても思考読めるだろ?」

「もちろんです。ですが、ちょっと通信が入りまして……お時間があれば、お話がしたく思います」

「通信? 誰から?」

「輪廻管理局の上司です」

「へ?」

 

 懐かしいな……10年ぶりにその名前聞いた。

「上司って……光の巨人?」

「なんですか、それは? 上司は管理局局長です」

「はあ……んで、その局長さんが何て?」

 こんな話、誰かに聞かれたら困るんだが……。

「現在この部屋は結界で外界と隔離していますので、声は漏れません」

「おま、結界とか使えるのかよ!」

「まあ、20畳ほどの広さだけですが」

 いや、十分だと思うんだが……。


「んで局長さんの話って何?」

「はい、大河さんがこの星に転生する時に、この星が新しい輪廻転生の輪を作るための実験星だと言うのは聞かれたと思います。同時にこの星の魂のエネルギーが1/200だという事も」

 懐かしい前世の苗字で呼んだな、こいつ。

「確かに聞いたな」

「そこであなたがこの星に送り込まれた訳ですが、管理局の想定したエネルギー使用量に達していないので困っているのです」

「…………ん?」

「つまり、もっとエネルギーを浪費して欲しいのですよ」

「それが実験に繋がるの?」

「ええ、新たな輪廻転生システムを問題なく稼働させるために必要なのです」

 ん~~~~~~~~~わからん。

「つまり、今のままのんべんだらりの生活だと、システムが稼働しないと?」

「そうです。なので使わせるように局長から指示が来ました」

 

 もう意味がわからん。

 神々(?)の考えがちっとも理解できないのは、俺の頭が悪いから?

「あなたが内包している莫大なエネルギーは、この世界の神々の持つエネルギーを凌駕します」

 神々やっぱいるんだ。

「現在、この世界の神々は閉じた世界で輪廻転生を行っています。つまりこの星だけの輪廻の輪の中で魂を循環させているわけです。人間一人を転生するのに必要なエネルギーは小さいのですが、少しずつこの星の神の管理する魂のエネルギー総量は減少しています」

 なるほど……魂がすり減ってるのね。

「今後、このままエネルギー総量が減り続けますと、やがて輪廻の輪が維持できなくなり、この星の生命体はゆっくりと減少し滅びてゆきます」

 こわいな!

「普通の星々は、色々な星や世界と魂をやりとりして補充して転生させています。つまり、多くの星に輪廻の輪を繋げる事によって、魂のエネルギー総量を輪廻の輪の繋がったすべての星の算術平均を出します。これによってエネルギーの極端で偏った目減りを防ぎ、その星の生命体の自然な絶滅までの時間を得ています。もっとも自然災害等は考慮されていませんが、その場合は余剰エネルギーが他の星の生命体の寿命にまわされます。ここまではいいですか? Are you OK?」

 Are you OK? って、なんか馬鹿にされてる気がす。

 まあ……なんとなく理解した。


「寿命を迎えた星に魂のエネルギーが残っていた場合、このシステムの輪に連なる他の星にエネルギーは譲渡されるわけです。近年、地球に非常に偏ってエネルギーが流れる傾向にありました。これは地球人の想像力と創造力が非常に高く、そのせいでシステム異常を起こした事が原因でした。」

 想像力と創造力?

「ええ、想像や創造といった文化は、非常に高いエネルギー産み出します。一般的な星では色々な学問の発達により、Manufacturingは多く見られますがImagination&Creationは、滅多に観察されません。なぜならどの星も過酷な環境で日々の生活に追われ、ファンタジーなど考える余裕が無いからです」

 日々の生活が大変だから、想像する暇もないって事?

 それで……えっと、製造と創造は違うって事でいい?

「ええ、その解釈で結構です。それらによって生み出された莫大なエネルギーがシステムを暴走させてしまいました。一時的に通常の数十~数百倍近くの低エネルギーの魂が地球に引き寄せられてしまたったのです。ですがこの流れを急に止めると、どんなシステム障害が起こるか予測出来なかったので、自然に止まるのを待ちました……約3,500年間」

 3,500年とは気の長い話だなあ。

 

「それだけ昔から多次元や並行世界の事を、地球人は想像だけで見事に地球上に創造したのです。まあ、大河さんの趣味に合わせていうならファンタジー世界を口伝や文字や映像で再現しちゃったってとこですね。根暗な趣味です」

 根暗言うなし!

 そんな昔って神話や伝承とか、現代では映画、小説、漫画、アニメとか……? 

「ええ、そうです。知るはず無い異世界の事を何で知っているのか不思議でしたが、地球への転生者の中にうっすらと前世の記憶を持った方がいたみたいです」

 それって、俺みたいなバグ……?

「正解です。その知識を地球の多くの人が宗教や神話として認識し、低エネルギーの魂しか持たなかった転生者にも文化として定着し、さらなる高エネルギー生み出されてしまいました。しかも時間を経ても薄れるどころか現代まで姿形を変えて二次創作物として生み出すなど、もはや全地球レベルで日常というレベルまで人々に根付いてしまい、異常な高エネルギーが集束してしまったのです。原因は大河さん、ヲタクにもあります」

 はあ、ごめんなさい。

 って、今俺の事ヲタクって言ったよな? 句読点の位置がおかしかったからな!

「地球の仏教やギリシャやケルト神話その他あらゆる伝承等に出てくる神や異形の者達は、全て他の世界に存在しています。普通は想像できませんよ。見た事も聞いた事もない異世界の神や生物を正確に表現して文化になるなど、システムも予測できませんでした。もちろんそのバグはすでに修正されていますけど」

 ふ~ん……あれ? でもバグは修正されたんでしょ?

「ええ。大河さんは普通よりもエネルギー量が少しだけ多いので、システムから地球への転生を拒絶されました。このままだと算術平均がとれませんからね。しかしなぜか他の星への転生も拒絶されました」

 やっぱそれはバグなの?

「バグです。本来であれば記憶を消去して他の星に普通に転生出来るはずでした。しかし輪廻転生システムその物に拒絶されたんです。嫌われ者ですね、ぷっ!」

 うるせー! ちょくちょくディスるなや!


 んじゃつまり……

「システムは、エネルギーの多い奴は他の星に転生させて、エネルギーの少ない奴はエネルギーの多い星に転生させる事で、エネルギーバランスを取ってた?」

「ほぼ正解です! 正確には、他の次元世界や並行世界にある星も含めた宇宙全体のバランスです。バランスが崩れると、次元崩壊や並行世界の合一などが起き、結果どの世界も存在できなくなりますから」

 怖! 怖いな、それ! 

「まあ、その場合はビッグバンが発生して、また新たな宇宙が始まるのですが」

 Oh! 宇宙の始まりの謎が解けちまったぜ!

「Oh! って欧米か?」

 お前もさっき『Are you OK?』とか言ってたよな!

 

 なるほど、地球⇒地球の転生は、文化的な生活を送ってなかった人で、地球⇒他の星は、文化的で高エネルギー保持者ってとこか。

 エネルギー収支の辻褄を合わせている?

 あ、質量保存の法則を宇宙ってか次元とかの規模でやってるって事か!

 ってことは、俺は超文化的な生活を送って高エネルギーがあったって事?

 いやいや、そんな事なかった気がする。

 あ……だからシステムバグなのか。


「話を戻しましょう。この星は元々閉じた世界での輪廻転生システムでの魂の目減りを計測するための実験星でした。この星に生命体が生まれてから数億年に亘りこの実験は行われてきました」

 また気の長い話で……。

「計測は終了しましたが、この世界をこのまま滅ぼすのも忍びないと管理局は考えました。そこで新たな試みとして、閉じたシステムを内側から改変するために必要なエネルギー量を算出する実験を、10年前から始める事にしました」

 なるほど……だから実験星なのか。

 神々の箱庭って感じかな?

 つまり神様が作った箱庭を、箱庭の住人が壊すって感じか。

 ってか、俺が転生した時から新たな実験が始まったのかよ!


「たまたまシステムから弾かれた大河さんが適任でした。この星のエネルギーと比較して、大きなエネルギーを持つ大河さんが。あなたのエネルギーが莫大なのではなく、この星の持つエネルギーが極端に小さすぎるだけなのです」

 そうか、比較の仕方が間違ってるのか。

 俺がこの星の200倍じゃなくて、この星が普通の1/200なんだな。

 いや魂の総量でなく、一人あたり換算だと何百億分の1とかかもしれない。

「この星の神々の持つ輪廻システムを改変するために、多くのエネルギーが必要です。大河さんの魂のエネルギーは、大量に使っても大河さん自身の健康状態に影響を及ぼしません。具体的には99.99%使用しても大丈夫です」

 フォーナインまで俺のエネルギー使っても大丈夫なのかよ!


「よくご存じのダンジョンは、転生システムのモデルケースの1つです。あの中で死んだ魔物はエネルギーさえあれば生き返りますよね。エネルギーさえあればダンジョンは発展しますよね。ではそのエネルギーは何処から来ますか?外から入ってくる冒険者という新しい魂のエネルギーからです」

 あ、確かに……ダンジョンには輪廻転生の輪がある。 

「冒険者が入ってこなければ、寿命で死んだ魔物の魂のエネルギーは、2匹分で1匹を転生させる程度にしかならず、やがて魔物は居なくなります。そうするとダンジョンマスターもエネルギーが必要ですから、自らを維持できなくなります。ですが抜け道があって、ダンジョンマスターに変わる何かが存在すれば、ダンジョンは維持できます。具体的にはエネルギー供給システムですね。この星と神も同様なのです」

 なるほど。

「って事で、最終的には大河さんには、この星の神になって頂きます」

「ふぁ!?」

 いきなりの意味不明発言で、変な声出ちゃったよ。

 

 って事は、俺がこの星の神になって、輪廻転生システムにエネルギーを注ぎ込むって事なのか? 

「熱い欲望の滾りを激しく注ぎ込むのは、是非とも私の中にお願いします!」

 い・や・だ・よ!

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