第二章 未開の森を好きに開拓

第33話  9歳最後の日

 *今回はちょっと長いです

===================

 さて、そんなこんなで俺は明日で10歳になる。

 毎日がバタバタしているうちに、もうこんな年齢になってしまっていた。

 時々魔物が襲撃してきたり、王国がどっかの国と戦争寸前までなったりと色々あったが、現在の我が領はいたって平穏だ。

 おかげさまで領民の暮らしも安定し、これからもまだまだ領民は増えそうだ。

 これも全てダンジョンのおかげだ。


 元々あった街は拡大して領都に、周辺には大小計8つの街と村が出来た。

 領民も増えに増え、今や40,000人近くにまでなっている。

 この国の子爵領としては異例な程の規模となっている。

 優しい領主なので最低限の税しか徴収していない事も相まって、経済活動が非常に活発なため、税率が低いにもかかわらず税収がとんでもなく多い。

 当然ながら国に治める税金も巨額になっている。高額納税者ベスト10には入るんじゃなかろうか?

 もちろん脱税や違法行為なんて一切してないぞ。

 しなくとも収入はずっと前年比を大幅に超えているんだから、違法行為で廃爵なんてアホだろ? 普通にしてたって、しっかり我が家は儲かっている。

 

 そんな領民に優しいクソ真面目(に見える)な父さんに、今度は伯爵へ昇爵のお知らせが国から来た。

 さらに俺も異例だがおまけで、貴民昇格&子爵位叙爵が決定した!

 まあ、父さんが昇爵するんで、空いた子爵位をくれるだけなんだが。

 年明けに王都への議会参加後に、謁見・叙爵の流れだってさ。

 真面目にコツコツしてきただけなのに、すげえ昇進だ!

 またまた王国最年少記録更新だぜ!

 

 そんで俺の家紋はちゃんと前々からデザインしてたんだ~!

 父さんの家紋は虎が向かい合ってる。

 だから俺はダンジョンの塔を挟んで向かい合うオオカミとスズメバチ!

 これまでの俺とこの領を支えてくれた、ダンジョン、ブレンダー、クイーン。

 デザインに取り入れるのは当然でしょう!

 家族もミルシェちゃんもモフリーナも賛成してくれ、王城にも確認したがOKだったのでこれで決定!

 年明けが実に待ち遠しい。

 

 でも、成りあがりは転生物でも恨みを買いやすいから、ここはひとつ手土産を沢山持って行って、あちこちのお貴族様にゴマスリしときましょうかね。

 モフリーナに相談したら、めっちゃ豪華な贈呈用武具を山盛り用意してくれた。

 いや、気を使わんでも……俺が用意したのに。

 え? 家紋にまで入れてくれたので感謝の意です?

 わかりました、ありがたく有効に使わせてもらいましょう。

 

 ダンジョンも増築を重ねて、もう天辺は雲にも届きそうな全600階層。

 塔の基礎部分も、すでに山全体を基礎として補強し頑丈にして拡大した。

 けど……よく倒れないな?

 確か地球ではエベレストより高い建物は作れないとか。

 何て言ったっけ……重力平衡形状だったかな?

 この世界では、何メートルなんだろ?

 まあいいや、そこはファンタジー世界だから何とでもなるんだろう。

 バベルの塔と違って、人類の作った建築物じゃないから神様も怒らないし。

 モフリーナ曰く、神様が良くやったと褒めてくれたらしい。

 そりゃよかった。

 俺のアドバイスとエネルギーで、ダンジョン運営は非常に順調。

 最果ての我が領への通り道となっている周辺の領も、通行人も増えて収入もアップしている様なので、ご近所の貴族との関係も悪くない。

 

 まあ今度の謁見では、わが領の好景気の恩恵に与かれない貴族の方々に手土産は必須だな。

 

 ちなみにあの‟気になる木型シールド発生装置”は、いまだにダンジョンの最上階に設置されている。

 大きく広くなった我が領を全てカバーするために、高くなったダンジョンの最上部は最適だからというのもあるが、移設が面倒くさかったのもある。

 モフリーナは、シールド発生装置の管理者をやり続ける事も俺への恩返しの1つだと言っていた。

 まあ、誰かに頼みたくとも、あんな高さにまでなった塔の最上階に行ける人間なんて居ないからちょうどいいんだけど。

 

 あと何年か前から俺の秘密基地2号に、ダンジョンとの連絡員が常駐する事になって、秘密基地2号はダンジョンの出張所として外観を改装した。

 連絡員は、人間の言葉を話せる二又の尻尾を持つ黒猫だ。

 うん……・妖怪・猫又だよな。

 ブレンダーやクイーンとも仲が良く、よく一緒に庭で日向ぼっこをしている。

 何かあれば、モフリーナから念話的な物で連絡が来るらしい。

 こちらからもタイムリーに連絡が出来るので便利だ。

 家族にも可愛がられていて、最近とても活動的になった最愛の我妹コルネちゃんが、「クロちゃん」と勝手に名付けてよく庭で遊んでいる。

 どうやら猫又も妹が気にいったようなので、好きにさせているが……名前それでいいのか?

 ちなみに俺以外の人間の前では、「にゃ~」と鳴かせている。

 言葉を喋ったら、色々と面倒だからな。


 秘密基地3号は、まだ造っていない。

 そのうちどこかに作ろうと思う。


 そうそう、この5年で弟も妹も生まれなかった。寂しい限りである。

 父さんも母さんもまだまだ若いのに……倦怠期か?

 近いうちに、2人が燃え上がるような官能小説でも差し入れしよう。


 幼馴染のミルシェちゃんは、昨年から我が家でメイド見習いをしている。

 もう11歳になるので、少しずつお子ちゃまから少女に変わろうとしている所だ。

 両親に似ず、とても可愛い顔立ちの女の子に育って俺は嬉しいよ。

 ミルシェちゃんの家も、新しい家族は出来なかった……残念。

 

 家も建て替えて、もう立派なお屋敷と言っても過言では無い。

 三階建てで、客間や使用人部屋も合わせれば15も部屋がある。

 しかも、広いキッチンに浴室は3室トイレは5か所もあるんだぜ!

 ミルシェちゃんのお母さんは通いのままだが、なぜかミルシェちゃんは住み込みになった。

 ま、まあ……嫌じゃない。

 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 さて、そろそろ皆さんお気付きだろう。

 ショタエロ貧乳ロリ駄メイドのサラの話をしてない事に。

 (誰に向かってナレーションしてんだろ、俺?) 


 実は……まだ我が家に居ます。

 ってか、住み込みになりました。

 

 なぜかこの5年間まったく成長しておりません(肉体的にも精神的にも)。

 おまけに懐かしい昭和ネタをガンガン使います。

 

 そこで俺は色々と考えた。


 転生者は俺が第1号だったはず……では転移者か?

 いや、それもおかしい。

 あのネタに突っ込みを入れる俺が、地球関係と分からないはずが無い。

 同郷の人間と分っていて、何のアクションも起こさないなんてあるだろうか?

 最初から俺の前世が地球人と分っていて接近し、なおかつ素知らぬ顔をして今も接していると考えるのが妥当な気がする。 

 

 あの時、神様は……「粗品もつけちゃうよ」「便利グッズ詰め合わせと思ったらいいよ」と確かに言った。

 貰ったのは、実際には便利グッズではあっても、詰め合わせでは無い。

 粗品=ガチャ玉だと仮定すると、詰め合わせっていうのは何と何を詰め合わせたんだろう?

 言葉の内容からすると、絶対に1種類のグッズではおかしい。

(まあ光の弱いガチャ玉もあるが・・)


 もう5年近く前になるが、王都からの帰路で父さんは、

「……あの娘の事を誰も知らなかったみたいなんだよ」

「あの歳の城の使用人は大体貴族の子女の行儀見習いのはず……」

 と言っていた。

 あの時は色々とあったんで、軽く聞き流してしまった。

 だが、はたしてそんな事があり得るのか?

 だって国王様が居る城で、身元不明者がメイドだぞ?

 しかもそこに居る事を、誰も不思議に思ってなかったんだぞ?

 どう考えたって、セキュリティー的に大問題だろ。

 父さんが言ったように、身元がしっかりした人間しか使わないはず。

  

 ここまで言えば、皆さんにもお分かりだろう?

 (皆さんって誰だよ!)


 そう、サラ=便利グッズ ではないのかという疑惑。

 身元不明で王城で誰にも怪しまれずメイドをしていた。

 転生・転移者でもないのに、ありえなほど地球ネタを知っている。

 しかもブレンダーやクイーンと同じく、5年間まったく成長をしてない。 

 思い起こせば、ガチャ玉を開封する時のナビの声とサラの声は似てる気がする。

 

 そんなわけで9歳最後の今日、思い切ってカマをかけてみた。

「なあサラ、【その他の詳細のご案内は、都度ナビゲーションが行います】って言ってたけど、その他の詳細って何?」

「それは、創造システムのルールに抵触する場合の回避方法や、創造時のエネルギー使用りょう……が……」

 得意げに話し始めたサラだったが、だんだん言葉が途切れていった。

「お前、やっぱりナビだろ!」

「ふひゅーふひゅー」

「出来ない口笛ふくな!間違いない、お前はナビだ!」

「ば、ばれては仕方ありません……」

「最初からそう言えばいいんだよ!」

 サラが胸元からペンダントを取り出して、

「さよならを言いに来たんだ。君のことは永遠に忘れないよ。ミラ〇スパーク!」

「お前はミラー〇ンか! く、ついつい突っ込んでしまった!」

「まさかこのネタまでご存じとは……」

 ふ……この俺に特撮を語らせたら……って、

「いやいやいやいや! お前は俺の脳内イメージを読み取れるはずだ! だからそれは元々俺の知識だったはずだ!」

 そう、こいつが地球の懐かしいネタを知っているのはこれで説明がつくと思ったからこそ、こいつを怪しいと睨んだんだ。

「人は真〇を知りたがる。あるいは自分の知っていることを〇実だと思いたがる」

 我慢しろ~……突っ込むな~……突っ込んではいけないぞ~……。

「つまり、〇実が何かなどは、二の次なのだ!」

「お前は貝〇泥舟かよ!」


 ってなわけで、こいつはシステム? 便利グッズ? の一部って事が判明した。

 詰め合わせって、ガチャ玉とこいつの事だったんだな……。

 返品できませんか、神様?

『クーリング・オフ期間は終了しておりますので、返品はお受けできません』

 あ、そう……ってサラの声だよな!

 勝手に俺の思考に割り込むな!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る