第31話  討伐の功労者

 行け! ビ〇ト達! じゃない……兵隊蜂さんGO!

 群れで飛び立った兵隊蜂さんは、俺がクイーンに指示した通り10匹ずつの20分隊に別れる。

 この内、14の分隊が各々目標とするワイバーンに向かう。

 

 小さな蜂がどうやって大きなワイバーンと戦うかって?

 兵隊蜂の武器である毒針は、マク〇ナルドのドリンクに付いて来るストロー並みの太さがあるから、刺されただけだって激痛が走る。

 毒針と言ってるが、毒は無い。かわりに魔法が使える。

 ブレンダーの角とかと同じ水晶っぽい針だ。

 普段はおしりの中だから見えないけどな。

 氷に炎に岩といった属性の魔法を針状にして風魔法で発射出来る。

 エネルギー量が小さいため付いている精霊さん達の数も少なく、はっきりいって威力も小さいし射程距離も極端に短い。

 具体的には、切り裂く系の魔法ならちっちゃなカッター程度、射程は50cm程。

 威力はブレンダーに比べると大幅に低いが、なんせ数が違う。

 四方八方から集中攻撃なんぞされた日にゃ、間違いなく死ねる。


 さてさて、そんな弱い攻撃しか出来ない兵隊蜂の狙いはどこか?

 そりゃずばり、弱点を狙うに決まってるっしょ!

 まず各分隊10匹をさらに半分の5匹の2班に分ける。

 1班は、徹底的に目を狙う!

 そりゃ~見てて震えるぐらいにしつこく狙う。

 眼球じゃなく目の周辺でも刺されたら目を開けられない。

 魔法攻撃でも、えげつないぐらい集中的に同じ場所を狙う。


 もう1班は、きちゃない話だがお尻の穴を狙う。

 ワイバーンが硬い鱗で覆われているのは、ギルドで借りた本で予習済み。

 弱点は書いてなかったが、そんなもん鱗が無い所に決まってるじゃん。

 むき出しの眼球、鼻の穴、口の中、耳の穴は無いけど。

 そして爬虫類なら、何と言っても排泄腔。

 つまりお尻の穴ってわけだ。

 こんなもんちょっと考えたらわかるはずだが、ファンタジー世界の人間ってやつは、真正面から剣とか槍で戦う事しか考えてねえみたいだ。

 まあワイバーンもまさか狙われるとは思ってなかったんだろうな。

 目に攻撃を集中させて、意識がそこに集まった瞬間に半数がお尻の穴に総攻撃!

 もうそれは派手に刺すわ魔法を撃ちまくるわ、やりたい放題。

 思わず見てる俺もケツがキュ! ってなるほどの攻撃だ。

 あ、父さんも冒険者もケツを手で隠してる……。


 すぐに数匹が痛みでジタバタ悶絶しながら、落ちて来た。

「みなさん、出番です! 暴れてるので注意して止めを刺してください!」

 木陰に隠れてた冒険者達に声を掛けると、一斉に得物を持って飛び出して来た。

 食物連鎖では頂点に近いであろうワイバーンも、フルボッコ状態だ。

 翼を切り裂かれ、尻尾を切られ、腹を刺され、止めに父さんが首チョンパした。

 

 しかも手の空いた兵隊蜂は、休まず次の目標を攻撃している。

 難点は、ちょっと兵隊蜂の燃費が悪いことだ。

 だが、それを見越して残る6分隊が交代要員として控えている。

 エネルギー切れ間際の分隊と控え分隊が適時交代をしていく。

 交代してファクトリーまで戻った兵隊蜂は、エネルギー補給をした後また別のエネルギー切れ間際の攻撃組と交代。ローテーションで間断無く特攻をしまくる。

 もちろん目標を撃破した兵隊蜂も他の分隊の応援に向かわせる。

 ワイバーンの数が減れば減るほど、ワイバーン1匹に集る兵隊蜂が増える。 

 憐れワイバーンは、スズメバチの集団にブスブス刺されまくりなすすべ無し。

 これビ〇トじゃないよなあ……キュピーン! ってこないし……。

 

 ブレンダーは俺の護衛だが、袋叩きに参加したいのかな?

 そわそわうずうずしてるな……行きたい? そっか、んじゃ行っといで~。

 めっちゃ嬉しそうに落ちて来たばっかりのワイバーンに向かって走っていた。

 あ、瞬時に首チョンパした! マジで一瞬だったな。


 残りが……ひのふの……8匹か。

 あれ? クイーンも攻撃に参加したいの?

 でもお前は司令塔なんだよ?

 え? 離れてても意思疎通は出来るから、大丈夫?

 ん~、んじゃ分かった! 好きに暴れておいで。

 楽しそうに飛んでるワイバーンに突撃するクイーン。

 クイーンの針は……油性マーカーのマ〇キーの先が尖った方ぐらいある。

 刺されたら俺は死ねる自信がある!

 あ……ワイバーンのお尻の穴にクイーン突撃した……ご愁傷さま。

 この戦いにおいて、ワイバーンに良いとこ無しだな。


 ぽつんと一軒家……じゃない、俺一人。

 ぼ~っと空を見てるわけじゃないぞ? ちゃんとクイーンに指示してるからな!

 

 え? 精霊さんも何かしたいの? それじゃ俺と魔法で遊ぼうか。

 ん~こんな感じで……こんな風に……出来る? おお、んじゃ準備しようかね。

 え~ワイバーンに突撃中のクイーン以下兵士の諸君、ご苦労だった。

 一旦俺の傍まで戻るように。

「お父さん、冒険者のみなさん、ブレンダー、残り4匹に大技を使います。みなさん巻き込まれない様に下がってくださいね。」


 皆が下がったのを確認してっと……精霊さん、行っくよ~!

「マッドウォーター・スネーク(泥水の蛇)!」

 土の精霊さんと水の精霊さんの合わせ技。

 おどろおどろしい濁った水の蛇が地面から伸びていき、ワイバーンにグニュニュと近づき、巻き付き動きを止める。

 暴れて引きちぎっても、すぐに地上から伸びた蛇と合体して動きを拘束。

 ワイバーン相手の泥々触手プレイ……誰得なん?

 抜け出そうともがき、口を大きく開けてギャーギャー騒ぐワイバーンに向けて、

「さらにフレアー・ハードボール(炎の剛速球)!」

 火の精霊さんと風の精霊さんの合わせ技。

 開いた口に向けて直系30cmはあろうかという炎の球が、球速100マイルで突貫し、口中と肺まで焼き尽くす。

 憐れなワイバーンは真っ逆さまに落下。


「さあみなさん、止めをお願いします!」

 瀕死のワイバーンでも情けはかけない!殲滅だー!

 みんなすごい良い顔で止め差してるよ。

 ワイバーンを倒せる冒険者って高評価らしい。

 

 そう言えば気にしてなかったけど、冒険者ランクってあるのかな?

 近くであんぐり口をあけてたギルマスに聞いてみた。

 あ~やっぱ、あるのね。

 あとで詳しく教えてね、ギルマス。

 え? 俺なら登録即上級冒険者として認める?

 いやあ~照れるな~。

 でも、あんま目立ちたくないんで、その時は見習いからオネシャス!


 うむ……これで終わったな……あ、まだ卵の回収があったっけ。

 ん~蜂さん、どの巣に何個卵があるか見て来てくれる?

 偵察部隊の蜂がまた飛び立ちました。

 クイーンとブレンダーがすり寄ってきたんで、なでなでしときましたよ。

 こいつらマジでかわええのぉ! もふもふは正義や!

 おっと精霊さんは、おやつを強請りに来ましたか。

 どうぞお好きに吸って下せえ。みんな今回はありがとうね。

 めっちゃ助かったよ(?)。


 お? 偵察部隊も帰ってきたな。

 ふむふむ、7つの巣にそれぞれ2個ずつあるのね。

 って事は14個あるって事だな……よしよし、お疲れさん。

 みんなファクトリーでゆっくり休んでね。

 

 父さん父さん、卵は14個あるって、さっさと回収して帰ろう。

 格好つけて演説してる場合じゃないって。

 お仕事はまだ終わってないから。

 冒険者さ~ん! お宝の卵は14個もあるよ~! 取り放題だよ~。

 ワイバーンの解体なんて後回しにして、取ってきてね~。


 ふう……今回の討伐もあっさり終わったなあ。

 いや~蜂の軍団ってめっちゃ強くね?

 今回の俺、な~んもしてないけど、配下の手柄は俺のもの!

 ふっふっふ……討伐の功労者は俺だな!

 いや、どうでもいいんだけどね。

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