第32話  ワイバーン討伐の英雄

 冒険者さんが、ワイバーンの卵を集めて戻ってきた。

 う~む……ダチョウの卵ぐらいあるな……でかい!

 これって本当に売れるの? 国軍が買ってくれると……ほっほー!

 んで、おいくら万円で? えっマジで? そんなお値段で!?

 んじゃ冒険者さんの報酬は十分出るね。

 あ、ギルマスが父さんにめっちゃお礼言ってる。

 1人頭だいたい農家の年収分は払ってあげられるらしい。

 そりゃ良かった! 税金はちゃんと納めてね~♪

 脱税したら兵隊蜂が群れで挨拶に行きますからね~。

 

 ▲


 ワイバーンの素材と卵を馬車に積みこんだ俺たちは、意気揚々と我が街まで帰ってきた。

 ほとんどの人が、俺達が生きて戻れるとは思ってなかったらしい。

 少数の冒険者と領主と子供……そりゃそうか。

 今聞けば、軍が総出であたる様な案件だったらしい。

 だから街では、凱旋した俺たちは全員が英雄扱いだった。

 まあ、俺は英雄なんて称号は、欲しい人が持って行って感じ。

 のんびり幸せに生活したいだけなんだから。

 ちなみに今回参加した全員に、俺の戦力は極秘事項として口止め要請してある。

 一応、これでもお貴族様なんで、みんな快く要請を受け入れた。

 まあ、黙ってれば自分達がワイバーン討伐の英雄になれるからな。

 子供が最大戦力なんて、大半が信じないだろうし。

 魔法使いだって事は知られてるけど、魔法の規模も知らないはずだ。

 元からの村人は、口がめっちゃ固いから大丈夫。


 ちなみに王城で魔法を披露した時も、陛下が見学者に厳重に口止めしたらしい。

 戦略級の人間兵器が、この国が嫌になって出奔したら大変だとでも思ったのかもしれない。

 ま、平和に暮らせるなら、多少は目をつぶるつもりだけどね。

 俺の平和を脅かすなら、その限りでは無い。これは断言しておこう。


 モフリーナもこっそり出迎えの列に居たので、近づいて警戒解除を伝えた。

 実は、誰もモフリーナをダンジョンマスターだと知らない。

 単なる巨乳ネコ耳娘としか認識されてない。見た目は普通の獣人だからな。

 大樹の水晶に溜めたエネルギーは、半分は好きにしていいと伝えたら、感極まって抱きついて来た。

 衆人環視の中で困るじゃないか~君~。いやあ~もてる男はつらいね!

 貴族じゃなかったら、周囲の男達にボコられる案件だからね……。


 家に帰ると、玄関で母さんとミルシェちゃんの熱い抱擁が待っていた。

 駄メイドも目を潤ませて抱きついて来たけど、さっと躱した。

 逃げようとしたら、後ろから抱きつかれたから、まあそのままでもいいか……と思ったら……。

 おい駄メイド!お前の手は、ナニをさわさわしてる? ……ナニです! だと?

 俺のお棒ちゃま君を気軽にさわさわすんな!

 みろ! ミルシェちゃんまでくっついて、手を伸ばそうとして来ただろうが!

 教育に悪いからや・め・ろ!

 ヤダ? このばかちんがー!

 

 部屋へ向かう廊下で、何故だかサラは急に立ち止まり、振り〇きざまに俺に拳を見せて……寂し〇うに笑った……って、おい! なんでそのネタ知ってんだよ!

 く……こいつにだけはネタで負けたくなかった。

 がっくり跪く俺に、サラは……立ち〇がれもう一度その足で、立ち上が〇命の炎を燃やせ! だと!?

 お前、絶対転生者だろ! しかも俺と同年代だろ! ア〇スだぞ!谷〇新司だぞ!

 サビを忠実に語ったぞ! ちくしょう……懐かしすぎて泣けてくる!

 わずかに開いた〇の両目に、光る涙が〇かを語った……って?

 ごめん……俺が悪かった……。


 こいつの事を詮索するのはやめよう……作品的に危険だ。

 作品って何の事だ?

 あれ? ふと頭を過ったが……まあいっか。


 ▲


 やっと部屋で落ち着いた俺は、ベッドで横になり目を閉じて色々と考えた。

 

 今後しなければならない事。

 ① この領の発展と我が家の収入アップ(ただし無理のない範囲で)

 ② 神様から貰ったあのガチャ玉の検証(まあその気になったら)

 ③ 同じくガチャ玉の有効な使い道の模索

 ④ この世界の事をもう少し勉強

 ⑤ 魂のエネルギー200倍の有効な使い道の模索

 ⑥ ミルシェちゃんの好感度アップ(すでにメーター振り切ってる気もするが)

 ⑦ 愛しの妹のために出来る事(5~6歳ぐらいまでに考えればいいか)

 

「ん~こんなもんかなぁ……」

「何がです?」

「今後やらなきゃいけない事」

「ほう……ナニをする予定なんですか?」

「ああ……それは……っ! サラか!」

 俺の横に並んで寝てやがった!

「何してるんだ?」

「ナニをする予定ですが?」

「出てけー!」

「え~! 良いではないか良いではないか……しません?」

「し・ま・せ・ん!」

「ちぇ!」

 

 コンコンコン…『トールヴァルドさま、入ってもいいですか?』

「「…………」」

 ミルシェちゃんが来たじゃねーか! 

 俺は幼馴染枠は大事に育てたいんだよ!

 さっさとベッドから降りろ! ゲシゲシ! 抵抗すんな! ゲシゲシ! ドンッ!

 ふぅ……蹴り出してやったぜ。

「いいよ~入っても」

 入ってきたミルシェちゃん、床でケツ上げて倒れてるサラを見て固まった。


「あ~いまね、サラにお仕置きしてたの。失敗ばっかりしてるから。ほっとけばいいよ」

 そういって二人でソファーに座ってお話をする。

 主にワイバーン討伐の事だ。

 俺様の活躍……は目立たないから、皆で頑張ったって話にしといた。

 サラは何食わぬ顔でお茶を配っていたが、めちゃすまして白い眼で見てる。

 ミルシェちゃんと和気あいあいと話してる背後に、最後まで無言で立ってた。

 白目はやめろ! マジでこえーよ!


 俺の気の休まる場所は、もう秘密基地2号しかないな……。

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