第7話  お勉強しましょう!

 5歳になった俺は、神様からの便利グッズを開封したわけだが……

 この星には敵っているのかな?

 めっちゃ牧歌的なこの村には、絶対に敵はいない。

 たまに来る行商人のキャラバンに、どうみても人を3~4人は殺してるとしか思えない悪人顔がいるんだが、話してみると結構いい人だったりしたし、犯罪なんてあるんだろうか?

 

 ってか、神様が言ってたファンタジー要素が少なくね?

 剣と魔法のある世界だろ?

 俺、聞き間違えたんだろうか…心配になる。


 最近、母さんから文字を習い始めた。

 何を唐突にと思うかもしれないが、こんなど田舎ではそんなに読み書きは必要ないのだ。

 四則演算もあまり必要ない。

 麦の袋が何袋……って、難しい計算しなくても数えれる程しかない。

 行商人だって物々交換が基本だ。

 野山で狩った獣の毛皮や農作物と、生活必需品を交換するだけ。

 商人が決めたレートに多少は交渉もするが、商人の機嫌を損ねて来なくなったら困るので、あくまでも多少しか出来ないしな。

 だけど、父さんの部屋(執務室かな?)で本を見つけたんだ!

 もしかすると魔法関連とかの本があるかもしれないだろ?

 これはぜひとも読まねばならぬ!



 という事で、幼馴染のミルシェちゃんと並んで、今は読み書きのお勉強中だ。

 蝋石って知ってる? 石筆って言ったらわかるかな。

 鉱石なんだけど蝋みたいに柔らかいぬるっとした感触で、チョークみたいに書いたり出来るんだ。

 んで平らな石で出来た石板に書くんだ。

 消すのは布でゴシゴシと、結構力いるんだけどね。

 これで書き取り勉強中なんだけど……この星の文字って基本的にローマ字だわ。

 めちゃ簡単で、10分で全部覚えた。


 数字もちょっと形が違うけど、ほぼアラビア数字。

 なんとびっくり、ゼロの概念がちゃんとあった!

 いやゼロって凄いんだぞ?

 そもそも文化が進まないと、ゼロって意識しないからな。

 何もないなら数えない。有るから1になる。

 いや無いならゼロだろって思うでしょう?

 でもこんな田舎だと、無い物は無いで終わっちゃう。

 ゼロと無いは同じ意味なんだけど、生活上イコールで結ばれて無いんだよ。

 って、熱く語ると長くなるので割愛します。


 そんなこんなで、あっという間に覚えちゃった。

「トールちゃん天才よ!」

 母さんは狂喜乱舞し、

「トールヴァルドさま、すっごーい!」

 ミルシェちゃんに尊敬の目で見られた。

 ……ちょっとだけ心が痛むのはなぜ?


「お母さん、お父さんのご本を読んでもいい?」

 こっそり母さんにおねだりしてみると、

「いいわよ。好きなのを読んでみなさい。わからない文字があれば聞いてね」

 許可も出たので、さっそく父さんの部屋にレッツ ゴー!



 むぅ……どの本も面白そうだ。

【グーダイド王国史】【グーダイド王国 紋章一覧】【初めての徴税と納税】

 ありゃ、やっぱりうちの父さんは村長か領主? いやいや代官あたりかな?

 ってか俺がいるのは、グーダイド王国っていうんだ。ふ~ん、どうでもいいや。

【農業と酪農】【戦略と戦術】【騎士と囚われの姫】【幸せになる名づけ】

 えらくジャンルがバラバラだなあ……。

【才能の伸ばし方】【足し算と引き算】【初めての魔法】【食用キノコ図鑑】

 …………ん!? あった! 魔法の本だ!

 むむむ……ちょっと上の方で手が届かないな。

 父さんの椅子をよっこらせっと、んで上って取りましょうか。

 

 本棚からズルッと引っ張り出して、さあいよいよご対面!

 ほうほう、なかなか凝った皮表紙ですな。

 ファンタジーを感じさせますね、新たな知識というものはワクワクします!

 これはかなり期待できるぞ!


【……気づけば私は彼女の甘い香りにクラクラとしながら、彼女の臀部に手を回していた。驚き声をあげようとする彼女の唇に私は唇を重ね、その口中を貪るように自らの舌で蹂躙した。やがて二人の口からはクチュクチュと二人の唾液が混ざり合う湿った音が……・】


 って、これ官能小説じゃねーか!

 表紙だけかよ! 俺のワクワクを返せ!

 オヤジ! 魔法の本どこやったんだ!

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