第3話  3歳になりました

 生まれてから3年の月日が流れた……らしい。

 今日は家族揃って3歳の誕生日を祝ってくれた。

 

 生まれて2年近くは、辛く長い生活だった。

 具体的には、〇んちした後のお世話をしてもらう時、両足もたれてケツの穴まで綺麗に拭かれた事だ。

 あれは精神年齢42歳の俺にとっては、かなり辛い。

 誰だ羞恥プレイも結構いいかもなんて言った奴は!

 ……はい、俺です。

 特殊プレイはもうこりごりだ。

 でも母さんのおっぱいだけは良かった。

 もう3歳となった今でも吸い付きたいほど愛おしい。

 父さんにだけ吸わせるわけにはいかない!

 あれは俺との共有財産にしてもらわねば!

 

 俺が生まれた家は、どうやらこの国? 町? 村? では、そこそこの立場らしい。貴族とかかな? まだ良くわからん。

 たかだか3歳の俺ごときに、色んな人がプレゼント持ってやって来る。

 しかも3歳児に頭を下げて、

「利発そうなご子息ですね」

「将来が楽しみですな」

 なんて言ってくる。


 3歳児に利発そうも無いだろう!

 将来? それは育て方と環境次第ですよ!

 まあ、俺はすでにおっさんだったんで、その辺の子供よりは利口ですよ?


 そうそう、ちょっと家族と自己紹介。

 父さんの名前は、ヴァルナル。

 長身で引き締まった体に軽く後ろに流したティシャンブロンドが格好いい。

 彫の深い顔をしたかなりの二枚目だ。

 琥珀色の瞳がワイルドでかなりいけてる!

 母さんは ウルリーカ。

 身長は父さんの肩ぐらい。

 長いプラチナブロンドに色味の深い碧眼のこれまたかなりの美女!

 しかも俺好みのキュッと括れた腰と推定Dカップのおっぱい、クイッと上がったお尻という、もう完璧なスタイル!どこかのモデルさんか女優さんかと言われても通用します。

 父さんも母さんも共に20歳。

 いつも父さんが出かけるときは、チュッチュしてるラブラブ夫婦。 

 

 そしてお待ちかね、俺の名前は トールヴァルド らしい。

 ただいま3歳。この家で鏡を見た事がないので、自分の顔をはっきりと確認できないが、あの夫婦の子供が不細工なわけない……よね、神様?

 まあ顔を洗う時に水桶に映った顔を見る限り、髪も瞳も母さん譲りのプラチナブロンドに碧眼。

 子供っぽい顔だけど、まあ今後の成長に期待かな。


 あとセリスさんっていう近所から通いのお手伝いさんがいる。

 ちょっとふくよかな気の良い女の人だ。

 後になって母さんと1歳違いと聞いた時は驚いたが……。 



 ▲

  

 さてさて、転生の時に神様からもらった便利グッズ詰め合わせなんだけど、実はまだ使えない。

 唯一、神様からの手紙? だけは2歳の誕生日に頭に浮かんできた。

 それによると、便利グッズは取扱注意なので、5歳までは封印されてるらしい。

 封印ってどこに?

 まあ手紙っていうか伝言も、いきなりピコーン! って頭の中に浮かんだから、どうにかなるんだろう。

 今のところ幸せなんで、あんまり気にしてない。


 前世では子供の頃から親の転勤で各地を転々とし、幼馴染もいなかったし虐めにもあった。

 だから始めた空手にはかなりのめり込んで、気づけば4段までなっていた。

 指導員として子供に教えていたが、それで生活できるわけでもなく、空手と両立できる仕事を転々とする生活だった。

 結婚もした。一応、恋愛結婚だった。

 でも仕事と空手で家の事を顧みない俺だったから、愛想をつかされ離婚した。

 子供は元嫁が連れて行った。

 落ち込んだ俺は仕事をクビになって、警備業法っていう法律に触れない人間なら誰でもなれる、万年人手不足の警備員になった。

 日給7,200円スタートだったよ。

 ずるずる続けて、気が付けば資格も取って、ベテランって言われる様になってたけどさ。

 その仕事中に死んだんだ、思い起こせばさみしい人生だった。

 だから今度は幸せを掴みたい。

 せめて家族との時間は大切にしたい。

 今度こそ幸せな家庭を築きたいなあ……便利グッズで何とかなるだろうか?


 ▲


「トールちゃん、トールちゃん! お誕生日おめでとう!」

「トール、誕生日おめでとう」

 やっと来客がいなくなった晩御飯時、身内だけで俺の誕生日を祝ってくれた。 

 今日はセリスさんのご主人と子供も一緒に祝ってくれる。

 セリスさんの旦那さんは農業を営んでいるらしい。

「トールヴァルド様、おめでとうございます」

 野太い声で、いかにもファーマーって感じのゴツゴツした人。

「とーるばるどさま、おめでとうございます」

 一人娘のミルシェちゃん、4歳。

 あの両親から、どうしてこんなお人形さんみたいな子が生まれたんだろう?

「トールヴァルド様、今夜は特に腕によりをかけましたからね。いっぱい食べてくださいね」

 セリスさんがにっこり笑ってスープを入れてくれた。

 

「みんなありがとう! 僕はすっごく幸せです!」

  

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