第2話 友人の死

 

『どうして!? どうしてよ! どうして貴女が生きてうちの利香が死ななきゃならないの!?』


 私を揺さぶる利香のお母さん。


 泣いてる。

 責めてる。


 血の繋がった娘が殺されたんだから。


『見殺しにしたんでしょ!? 自分が助かりたい一心で利香を……!』


『よさないか!紫姫さんとは住んでいる区域が違うんだ! 途中で別れたと話しているじゃないか!』


『一人で登下校は止めるようにって政府でも警告していたじゃない! 家まで利香を送って、それから帰れば良かったのよ!』


『そうしたら紫姫さんはもっと長い時間、一人で帰宅することになるんだぞ!』


『知らない! 知らないわよよよおおお!』


 利香のお父さん、お母さん、ごめんなさい。



 もう少し早く帰れば。

 もう少し遅く帰れば。

 違う道を通れば。

 

 良かった。





『本当はどうなの?お友達を見殺しにしたんでしょ?』

『悪運が強くて』

『代わりにあんたが死ねば良かったのに』


 歪んだ笑みを見せる女の唇は、血のように赤い。




 毎日、利香の机に花を添える。


 現実なのに、教育という環境に社会から隔離された学校生活は、十代を無知で無垢にさせる。


 今、日本が、地球が、人間が、窮地に晒されていることに現実味を実感しない。

 

 私は利香の死を目の当たりにして、現実世界に放り出された。


 そして、教育という囲いの中でぬくぬくとしている者達は、情報操作に簡単に引っ掛かり、私を知ろうとせずに『悪』と認定するのだ。




『人殺し』



 と――




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