何の取り柄もない営業系新入社員の俺が、舌先三寸でバケモノ達の相手をするはめになるなんて。(第二部) Dollhouse ―抱き人形の館―

二式大型七面鳥

000_承前

「……これは……」

 ブラインドを閉め切った薄暗い部屋で、デスクライトに照らされたリストを追っていた、コートを羽織った男の枯れ木のような指が止まり、しゃがれた声が漏れた。

「……なるほど、東華貿易の一件は大損だったが、あながち無駄でも無かったか……」

 ぐつぐつと、くぐもった含み笑いが響く。

「そろそろ、茉茉モォモォの新しい依り代も必要だし、東華貿易にはもう少し、ツケを払ってもらっても良さそうだな……」

 男は、嫌な音をたてて軋む事務椅子の上で振り向き、壁際の安楽椅子に座る人影を一瞥する。

 そこには、骨と皮ばかりになった、人相も、性別すら定かで無い人影が、背広の上に道袍――道教の道士が着る漢服の一種――を羽織ったまま、へたり込むように座っている。

 そして。

 その膝の上には、薄汚い人形、時代を経て、手垢にまみれた「抱き人形」が、ちょこなんと座っていた。

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