創る心は泡沫に(短編集)

創心

「次は生きる事を許される世界でありますように」

崩れた瓦礫のすぐ傍で

小さな野良猫は鳴いた

それは最期の鳴き声だった

腐った親と兄弟の亡骸に寄り添いながら

彼女は誰の耳にも届かない声で

世界を嘆いた


恨み事など何も無い

けれども何故自分達が死なねばならなかったのか

疑問だけが残っていた


人の足が私達のすぐ脇を通り抜ける

霞む視界の中で一瞬だけ目線が合った

「▪️▪️▪️」

何を言われたのかは分からない

でもそれは

醜悪な物を見る眼差しで


嗚呼

識っていました

私達はこの世界に望まれていないという事

だからこれから死んでいくのだという事


視界が暗くなって

音が遠くなっていく

けれど、何処かで家族の私を呼ぶ声が

確かに聴こえる


痩せ細った子猫は瞼を閉じて笑った


翌朝

電話を受けた人が彼女達の骸を迎えに来て

白いタオルで包んで両手を合わせた

添えられた1輪の菊の花は

抱き上げられた拍子に瓦礫の下に落ちて

誰も気づかない暗いその場所で

また彼女と同じように

静かに散っていった



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