第4話 アレク、爺ちゃんを手伝う
ボクは五歳に成長した。身動き取れない苦痛の時間は、はるか昔に卒業している。
では、今のボクが何をしているかというと、それは爺ちゃんの手伝いだ。
「爺ちゃん、コルワ婆ちゃんとこに薬を届けて来たよ。ついでに、庭の薬草にも水をあげといたから」
爺ちゃんの部屋に入ると、爺ちゃんは薬作りの最中であった。爺ちゃんは優しげな顔を上げ、こちらに笑みを向けて来る。
「おお、アレク。お手伝い、ありがとう。こっちは良いから、夕方まで遊んでおいで」
「わかった。じゃあ、行って来るね」
薬師には興味があるが、まだ慌てる時間じゃ無い。今はまだ、村人のレベル上げを優先すべきだ。村人がLv10になったら、改めて爺ちゃんに教われば良い。
ちなみに、村人のレベル上げは、村の活動に参加する事で可能だ。
ヘルプ機能の回答に、初めは半信半疑だった。しかし、爺ちゃんの手伝いをしてたら、確かにレベルが上がった。なので、今のやり方で間違い無いらしい。ちなみに、今のボクは村人Lv2である。
時間はまだ昼過ぎだから、村に行けば何か仕事があるだろう。ボクとしては、使い馴れた
しかし、
ボクは爺ちゃんに手を振って家を出る。爺ちゃんはニコニコと、手を振り返してくれた。長い白髪と髭でモジャモジャだが、誰に対しても優しい爺ちゃんである。
なお、爺ちゃんの家は、村の外れにある。森が近くにあり、他の家とは結構な距離があった。
なお、この場所を選んだ理由は、薬草栽培に適しているからだ。決して、爺ちゃんが偏屈な訳では無い。
ボクは駆け足で、村の広場に向かって行く。しばらく走ると、途中で見知った顔を発見する。
向こうもボクに気付いたらしい。ボクに向けて、手を振っている。ボクは速度を落とし、彼の前で足を止める。
「やあ、アレク。また、いつもみたいにお手伝い?」
「やあ、ギリー。勿論、いつも通りのお手伝いだよ」
呆れた表情で、ギリーがボクを見つめている。
ちなみに、ギリーはボクの乳母、リリアさんの息子だ。彼は母親譲りの、ブラウンの髪と瞳を持つ。一般的な村人の特徴を持っている。
ちなみに、ボクは黒髪に黒目で、この国では珍しい姿である。
本来なら似ていない二人。しかし、ボクはリリアさんに、母乳を貰って育っている。その為、ギリーとは兄弟同然の付き合いをしていた。
「アレクも飽きないね。じゃあ、母さんが呼んでるから一緒に来てよ」
「わかった。今日も、いつもの毛皮剥ぎかな?」
ギリーの父親は狩人だ。良く森で、動物を仕留めて来る。
そして、ボクはその毛皮を剥で、素材にする手伝いをする事が多かった。
「薪拾いもお願いしたいみたい。今日もポムの実が二個づつかな?」
ボクとギリーは並んで歩く。ギリーの家で、一緒に働くのはいつもの事だ。
そして、リリアさんはいつも仕事後に、赤くて甘いポムの実をお駄賃としてくれる。サイズはサクランボ程だが、この村の数少ない名産品である。
「多分、ミーアも家に来てるよ」
「そっか。じゃあ、一緒に手伝って貰おう」
ボクの言葉に、ギリーは嬉しそうに頷く。ミーアは一つ年上の女の子。ギリーは彼女の事が気になってるらしい。
しかし、ボクの予想では、彼女はボクに気がある。五歳にして三角関係とか、勘弁して欲しい所ではある……。
「ミーアが待ってるから、急いで戻ろうよ」
「そうだね。待たせても悪いからね」
ボクとギリーは駆け足となる。ミーアが待っている、リリアさんの家に向けて。
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