第7話 USJ出発前

 成人式が終わった僕たちは、


「ああ、終わった、終わった」

「だるかったよねー」

「お偉いさんのスピーチってなんであんな無駄に長いんやろ」

「そういうもんやって」


 僕、マユ、カナの三人は口々に不満を口にするけど、こーちゃんはどこ吹く風という感じだ。彼は、昔からどこか超然としたところがあって、そんな所が羨ましい。


「まあ、気分変えて、USJ行こかー」


 とカナが言う。


「よっしゃー!待ってました!」


 ノリノリで応じるマユ。


「まだ行ったことがないんだよね、楽しみ」


 皆で一緒に行くUSJに期待を寄せる僕。


「お目当てのがあるといいんやけど」


 そして、あくまで冷静なこーちゃん。お目当てのってなんだろうか。


 そんな事を言って盛り上がっていると、ふと。


「ええと、皆、USJ行くの?二次会あるけど」


 かおちゃんが、おずおずと声をかけてきた。


「ああ、二次会とかつまらんやろし、皆で行こうって朝から話してたんや」

「じゃあ、一緒に来たんだ……」

「ん?まあ、俺ら四人はそうやな。かおちゃんも来るか?」

「え、いいの?」


 目を輝かせるかおちゃん。考えてみれば、せっかく再会して縁が戻ったのに、危うくハブにしてしまうところだった。


「もちろん。かおちゃんは用事ある?」

「ううん。私も、二次会どうしようかなって迷ってたから、行きたい!」


 強い意思のこもった言葉を返すかおちゃん。


「よっし。じゃあ、かおちゃんも追加で。カナ。車、5人行けるか?」

「大丈夫やでー」

「良かったー」


 心底ほっとした様子のかおちゃん。やっぱり、寂しかったのだろうか。


 そして、カナの車がある自宅まで、今度は時間を重視して電車で戻る。幸い、一駅なので、着くのはすぐだった。


 カナの車がある駐車場にたどりつくと、少し薄汚れたミニバンがあった。


「へえ。凄い!これなら、五人でも平気そうだね」


 感激するかおちゃん。


「まあ、俺らが一緒に遊ぶために買ったんやからな」


 褒められて、少し照れくさそうなカナ。大阪で集まるときは、カナの車で遊びに行くのが恒例で、ほんとにお世話になっている。


 さて、後は誰がどこに乗るかだけど-


「俺、助手席がええな」


 真っ先に手を挙げたのはこーちゃん。いつも、特に座席を主張しないのにどうしたのだろう。


「こーちゃんが助手席なら安心やな。頼むわ」


 あっさり決めるカナ。


「私らやと安心でけへんっていうんか?」


 ぶーぶーと不平を言うマユ。


「マユはおしゃべりやから、運転に集中でけへんし」


 もっともらしい理由を挙げるカナ。


「じゃあ、僕は?」

「ユータはぼーっとしてて危なっかしいし」

「……」


 グサっと来る一言。それは否定できない。


「わ、私は?」


 少し遠慮がちに会話に入ってくるかおちゃん。


「かおちゃんは適任やなー」


 否定しないのか。


「こーちゃんの方が向いてるってことで、ここは一つ」


 と言って、話を終わらせるカナ。当然、本気で助手席を争っているわけじゃなくて、単なるノリだ。


 結局、助手席がこーちゃん、後部座席の左がマユ、真ん中が僕、右がかおちゃんという位置取りになった。


「両手に花やな」


 カナがそう言ってからかってくる。


「ひょっとして、狙った?」

「さあ、どうやろな」


 どこ吹く風という様子のカナ。カナはよく、こういう気の回し方をする。きっと、マユと同じように、かおちゃんと仲良くなれるように考えてくれたんだろう。


「よーし、出発するでー」

「「「「おー!」」」」


 皆でノリ良く掛け声をかけて、USJに向かって出発する。

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