第5話 成人式から始まる物語
かおちゃん達と昔話に花を咲かせている内に、成人式が始まろうとしていた。
「そろそろ会場に入らないと、遅れるで」
相変わらず、引き締め役なこーちゃんがそんな事を言う。
「だね。そろそろ、行こっか」
皆でぞろぞろと成人式が行われる部屋に向かう。
というわけで、成人式が始まったのだけど、正直なところ、退屈だ。
ふと、気がつくと、僕から少し離れた位置で、マユとかおちゃん二人が隣り合っているのが目に入る。幼馴染同士でも、やっぱり女子同士の方が気楽なのかな。そんな事を考えていると、ふと、通知が。
【なあ。ちょい、聞きにくい事やけど、ええかな】
マユからのメッセージだった。
【別に何でも答えるよ】
こう見えてマユは、おふざけ以外ではきちんと相手の事を思いやれる子だ。
【ユータは今でも、かおちゃんの事好きなん?】
思っても見なかったメッセージに、一瞬フリーズしてしまう。
【どういう意味?】
【そのまんま。ユータがかおちゃんの事まだ引きずっとるんかなって】
マユを含む仲間内は、僕がかおちゃんに告白して振られたことを知っている。だからだろう。
【気遣ってくれてるの?】
【まあ、そういうことや】
一瞬、何か探りを入れてきたのかと思ったけど、僕とかおちゃんの事を気にしてくれていたのか。びっくりした。
【引きずってはいないよ。気まずかったけど、今は割り切ってる】
【もし、かおちゃんがユータに告白して来たら、付き合う?】
その言葉がマユから出てきた事に、少し気が重くなる。
付き合わないって言ったら、理由を聞かれそうだけど、それは避けたい。しかし、付き合うと言ったら、これまた非常に困る勘違いをされそうで怖い。考えた末、
【その時になってみないとわからないよ】
そんな玉虫色の答えを返したのだった。
【そうなんや。余計なお世話やったね】
【いや、別にいいよ】
メッセージのやり取りはそれっきりで、引き続き、成人式が進行していくのを見守る時間が続く。しかし、さっきの意味深なやり取りは一体どういう意味だったのだろうか?
(ま、考えても仕方ないか)
考えるのをやめて、僕は、成人式が終わるのを待つのだった。これが、僕と彼女たちの間の大きな転機になるとも知らずに。
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第1章はこれで終わりです。
第2章では、USJへの道のりやUSJでの出来事を経て、人間関係が交錯します。
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