五十一夜  女神たちの襲来

深夜、ピースは目を覚ました。

「寝れないな。みんな寝ているから、外の様子を見るがてら一服するかな」

警戒しながら、窓を開けてバルコニーに出て、先ほどラッシェオとフーガが話していた場所から海と月を眺めながら、愛用している煙草に火を付けた。

普段はラッシェオやルルがいるので二人の健康の妨げになるのを考えていない所を見つけて吸っていた。だが、クレアとトルギスの結婚式を見届けて、皆もたくさん泣いて気持ちの整理が付いたと信じたい所だ。明日の行方はわからないがどこへ向かえば良いのか考えなければならない。

今はただこの海と空から来る脅威にどう備えるかが最大の課題と思っている。

「どうしたもんか…?」

すると、闇夜の海の向こうに何か光が見えた。それは、一つ、二つと全部で五本の筋が見えた。

“まさか”

ピースは寝ている皆を起こしにかかった。

「起きろ、みんな」

「う、う〜ん、どうしたの?」

「こんな夜に…」

「何かあったのか?」

「魔物たちの襲撃だ」

全員“え?”となった。

バルコニーに警戒しながら出て、ピースは光のする方を指差した。

「あれは?」

ラッシェオとルルは双眼鏡と望遠鏡で光の方を確認する。

すると…

「女の人が五人と魔物たちが争っているよ」

閃光の先には、かつて六人の前に現れたカリと牛頭、銀角、馬頭、金角の五体の魔物とそれぞれ相まって漆黒や灰色、紫色、赤色などの服を身に纏った女たちが五人戦っていた。

「なんだありゃ?」

するとアマとミズキが千里眼のガラスを使い確認すると、

「暗黒の女神たちだわ」

「ええ?」

「トモエちゃんたちが以前から争っている女神たちか?」

「いったい、なんで争っているんだ?」

なぜ、怪物たちと女神たちは争っているのか、彼らの目的とは…?

すると、女神たちが放った弓矢や槍、スピアーがカリや金角たちに当たり、この世のものと思えない悲鳴が辺りに鳴り響き、それは、塔にまで聞こえた。

千里眼やモルディーの最先端の光学レンズの望遠鏡で見ているが、距離に直すと大阪のあべのハルカスの展望台から神戸元町の南京町の中央広場の十二支の像を見るくらいだ。

怪物たちと争い、女神たちは勝利を治め、そして、次なる標的を自分たちに定めた。

「こっちに来る!」

「みんな、隠れろ」

バルコニーの窓を閉めて、屋根裏に作った部屋に入り、武器や防具を身に付けて戦う準備をした。そして、怪物たちが一度侵入したことから色々対策しておいた。

女神たちが広場に降り立った。

暗闇の女神、常闇の女神、暗黒の女神、宵闇の女神、月読の女神の五神は黒や紫、灰色、赤色、青紫のローブを纏っている。

“ダーン!”扉が強く蹴り破られる。

(ようやく、来たわね)

(ええ、メグがヤツラを倒してくれたからよ)

(やだ、フミも強かったじゃない)

(これから、この選ばれし地を拠点に私たちは…理想世界を作られる)

(アッツ、そんなに興奮しないの)

五人は何か壮大な野望を話していた。

「理想…世界?」

「何だそりゃ?」

ラッシェオとピースは、壁越しに五人を伺うが、言葉がはっきりとわかった。彼女たちはどうやらここを占領するのを目的に攻め込んで来たようだ。

「これは、戦わねば」

「ここを奪われたら、私たちはモルディーに、ミズキちゃんたちも王国には帰れないわ」

フーガとティアは、女神たちと戦おうとする。

ピース、ユリ、ラッシェオ、ルルも“怖い”の文字は思い浮かぶことはなかった。

トモエ、アマ、ミズキ、フィナたちと一緒に戦うために以前からモルディーから持ってきていた護身具を改造していた。女神たちや使い魔たちの弱点を聞いて教えてもらっていたのだ。

「戦うぞ」

「よし、各部屋にトラップを作っているから、それで、追い払おう」

トモエたちが戻る数時間前、ラッシェオたちは塔や広場に侵入者用のセキュリティートラップをモルディーから持ってきていた電子部品を改造して作っておいた。

(ティアがここまで器用にこなしたのは驚いたよな)

(ユリがプログラミングして作るのは凄かったな)

ピースは大工仕事は得意だが、機械や電気を使うのは苦手だが、ユリはコンピューターを使うのは昔から得意だった。シュバルツ家の自宅の電気関係やAIはほとんど彼女が組み立てたのだ。電気屋さんや大工さんたちからその腕を買われてウチで働かない?とスカウトされた事もある。

ティアも工作が大得意なので、簡単な機械をいじるのは朝飯前なのだ。

さて、女神たちをどのように撃退するのか、戦いの火蓋は切って落とされた。





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