10話

 ぱちぱち。


 二回ほど目を瞬き。メリィちゃんは笑顔だが、その裏には「してやったり」的な、俺をからかう色が見える。


 可憐な手に摘まれたポテト。そんな魅惑的なことに俺はーーーー


「あーん」


「……………え」


 特に何も躊躇しないで頂いた。うん、美味いな。


 だがしかし、甘い……甘いぞ!メリィちゃん!そんなこと!さっき俺がこの店に入る前に本来はやろうと思っていた事だからだ!


 絶対メリィちゃんはやってくると思った。だから心の準備もできたし、特に同様もしなかった………と思う!


 旦那様呼びにはときめきましたけど。


 さて……俺も仕返ししましょうか。


「メリィちゃん、はい、あーん」


「……ふぇ?」


 俺が動揺しないで食ったのが余程衝撃的だったのか、急なカウンターを食らったメリィちゃんが変な声を出した。可愛い。


「え………あの……」


 にこにこ


「あの……みぃくん……」


 にこにこ


「みぃ……くん……」


 にこにこ


「………いただきましゅ」


 勝った。いや、別に勝敗を競ってるわけじゃないんですけどね。こう……なんか俺の奥底でメリィちゃんを虐めたくなってきてーーーーやだ!俺って実はSっ気なのか!?


 あーとゆっくりポテトに向かって伸びる口。はむ、と可愛らしく閉じた口は、俺の指にまで侵食していた。


「「っ!?」」


 ちろっと舌が指に当たる感覚。咄嗟に指を引き抜こーーーーうとしたが、危ないのでギリギリの自制心で止めて、ゆっくりと指を引き抜いた。


「ご、ごめんなさい!みぃくん!」


「い、いや!俺の方こそごめん!」


 ちょっと調子に乗りすぎた!そうか……あーんってこういう事件も起きるのか……知らなかったなぁ……初めてだったもんなぁ。


 とりあえず……舐められた指どうしよう。





 あの後、舐められた指はメリィちゃんの手でしっかりと拭き取られ、お店を出た。しかし、俺たちの顔は真っ赤であるが、俺たちの手はしっかりと繋がっていた。


「えっと……次、どこ行こうか」


「…………」


 ゆっくりと首を横に振る……と、言うことは、ちょっと今はそんな気分じゃないから少し落ち着ける場所で休憩したい、か……了解。


「じゃあちょっと公園見つけて、休憩しよう」


「うん」


 俺は半ばオートモードと化しているメリィちゃんを引っ張って先導する。


 さて……この辺って公園あったっけ?


 適当に歩いていると、ビル群から抜け出し、少し景色が落ち着いた場所へ着いた。そしてなんと都合のいいことか、目の前に公園と現れていた。


「メリィちゃん、あそこ行こう」


「うん」


 二人で公園に入る。特に遊具という遊具は見つからず、あるのは滑り台とブランコと鉄棒だけだった。


「ねぇみぃくん。今日楽しい?」


「うん、めちゃくちゃ楽しいよ」


「うん……私も、今までで一番楽しいかも…」


「いや、それはさすがに言い過ぎじゃ……?」


 二人で横になってベンチに座る。今はまだ五月だが、高くなっている太陽で少し暑い。


「言い過ぎなんかじゃないよ。本当に」


「………………」


 繋いでいた右手をメリィちゃんの両手で包まれた。


「ねぇ、みぃくん」


「……うん」


 メリィちゃんが体ごとこちらへ向けてくるので、俺もしっかりと目を合わせる。


 そのまま二人でじーっと見つめ合う。変な気なんて起きない。ただ、俺がと本能的に悟ったからだ。


「………ありがとう。やっぱりみぃくんは優しいね」


 と、メリィちゃんの体が俺に近づいたかと思うと、腕が背中に伸ばされーーーーーーて、え?


「お………おおおおおお!?」


 ナンデ!?ナンデ俺今メリィちゃんに抱きしめられてるの!?真正面から何とは言いませんけどご立派なものがぁぁぁ!!


 しばらくわちゃわちゃしていると、メリィちゃんが上目遣いでこちらを見てくる。


 うっ………すっごい可愛い……一度でいいからされたかった……じゃなくて!


「え……えっと……」


「………抱きしめてくれないの?」


「………え?」


「だから……わたしを抱きしめて、旦那様……」


 ドクン!と、心臓が一際強く鳴り響く。その弱々しい表情、今にも泣きそうな声色、そして何より、


「……これでいい……?」


「うん……ありがとう」


 優しく、求め合うようなハグではなく、今は包む優しさのハグの方がいいと思った。


「暖かい……他人ヒトってこんなに暖かいんだね……」


「………うん。そうだね。とても、とても暖かいね」


 何となくだが、俺はメリィちゃんの事を少し感じてしまった。


 それは、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昨日夜7時ちょい過ぎくらいに寝てしまったので、若干遅くなりました。申し訳ない。


ここで読者の皆様に感謝を。カクヨムにてジャンル別日間1位、週間1位ありがとうございます!ここまでやってこれているのは読者の皆様のおかげです!


ちょっと闇が見えた気がしますが、これからもどんどん砂糖投下していきますので、是非!ブラックコーヒーの準備をしてからこれからも応援よろしくお願いします!


そして報告。小説家になろう様にて、この作品を大賞に応募させて頂きました。


そちらの方も、心の中でいいので、ぜひぜひ応援してくだされば嬉しいです!


7月12日午前2時17分 結月アオバ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る