第3話
さて、時刻は夜の11時。いつもなら解散の時間帯だが、明日は土曜日。つまり、これからが俺たちの時間だぁ!
つい先程、琥竜の雄叫びクエストの調整メンテナンスも終わったので、ゲームにログイン。メンテ終わりをみんな待ってたので重い。
五分ほど待ち、見慣れたプレイヤーホームにキャラが現れ、向こう側にメリィちゃんが現れた。直ぐにパーティを組んでからボイチャにする。
「あーあー……もしもーし?聞こえる?みぃくん」
「うん、感度良好」
耳元からは、30分前まで喋っていた俺の好きな声。もうすぐメンテが終わるという通知を見て、通話を終えていた。
「さて……告知は何かな……お?」
「あっ」
運営メッセージ欄のメンテナンスのお知らせの隣にある、告知の欄をクリックして、内容を見たら、思わず声が出る内容だった。
「……第五弾大型アップデートのお知らせ?」
「確か前回の大型アップデートが『新天地の発見』だったよね?」
第4弾大型アップデートの『新天地の発見』は名前の通り、新しいマップが追加されると共に、新しいダンジョンや、新モンスター。レベルキャップ解放などの様々な物を俺たちスティックゲーマーの心をドキをムネムネさせた。
当然、第五弾も期待が高まる。あ、琥竜の雄叫びはただのアップデートコンテンツだから大型ではない。
「……へー、新マップと新ダンジョンにレベルキャップ解放に……なにこれ?前日に発表?」
「ん?」
新たなアップデートに期待に胸を馳せていた所、メリィちゃんが困惑した声を出した。下にスクロールしていくと、確かに『???』と表記されている。
新コンテンツ『新たなる門出』は二週間後か。
「……やっべぇ。すっげぇ楽しみ……」
心が震える。今までたくさんのゲームに手をつけてきたが、アップデートと聞くだけでこんなにも楽しみなのはスティックヒューマン・オンラインだけだ。
さらに、レベルキャップ解放が宣言されたことで、余剰経験値というものが新たに追加される。
「よし!今日はやれる限りレベリングだー!」
「おー!」
耳元でもメリィちゃんの楽しげな声が聞こえる。
あ、ちなみにこの部屋は防音はしっかりとしてある。二年前に引っ越すにあたって土下座して頼み込んだからな!
「とりあえず、バランス調整された琥竜行こう」
「うん、頑張ろうね!みぃくん!」
コマンドを押して転移の呪文を発動させ、フィールドに転移。キャラが登場すると同時に、この前ドロップした『琥竜の杖』が自動的に装備される。
「……いやーほんと、棒人間以外は力入ってるよな」
一体なぜ棒人間にしたのか………いや、そういうコンセプトだから仕方ないと思うけど。
「ほんとだよね……棒人間じゃなくてもこれ絶対人気出てたよ」
「ほんと……もっと人気出てたよ」
綺麗なグラフィック。ほとんどラグもなく、ストレスフリーで出来るゲームなんてこれ以外知らん。
「とりあえず、馬に乗って早く火山にいこ?」
「そうだな」
ピー!と笛吹く音がすると、どこからともなくカッコイイ馬が現れる。そして、それに乗る棒人間ーーーーーだせぇ。
「………ねぇ、やっぱりこれ苦情いれない?」
「多分無理。俺も苦情入れたけどこればっかりは無視された」
ほんと、どれだけ棒人間大事にしてるんだよ……いやまぁそういうコンセプトなんだけど!
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