第40話 期末試験、夏休み
単純に新幹線もどきの宇宙船を作っても、アギラカナと鉄道会社に利益が出るだけで、法蔵院グループに直接的な利益が有るわけでもない。これまでの、旅客機型の宇宙船や、クルーズ宇宙船と違い、列車型宇宙船の場合、既存のプラットフォームには架線が有るため、どうしても、1段高い場所に新たにプラットフォームを作る必要がある。
NR(日本鉄道)は自社の関連会社を通じ、少しずつプラットフォームの増設を行っていきたいという意向を持っていたようだが、国土交通省はもとより首相官邸、アギラカナからの強い要望(傍点)に屈し、法蔵院グループの建設会社、清林建設に外注することとし一気に全国の地方の中核都市にある鉄道駅のプラットフォームの増設を進めることとなった。
当然、法蔵院グループはどの駅がいつ、どのように改良されるのかをいち早く情報を掴んでいるため、そういった鉄道駅周辺に所有するグループの不動産のうち駅前にある必要性の低いものは郊外移転など行い統合を進め、可能ならば法蔵院不動地所を通じて周囲の不動産を取得していった。一粒で何度でもおいしいのが、巨大グループ企業の強みである。
以前は、競合する他グループとの
このとばっちりを受けたのは、山田圭一を追い出した特殊金属製品大手、○○製作所だ。アギラカナ代表に
後日、アギラカナが○○製作所の一般社員を救済するため、同社の負債を肩代わりするという条件で買い取ることになるのだが、当然のように一条が社長に就任し、「それじゃ、お疲れ様」。の一言で以前の経営者、主だった管理職を解雇した。
7月も過ぎていき、テロ騒動からも落ち着きを取り戻した白鳥学園では期末試験に突入した。
この期末試験については夏休み中にずらす案とか、夏休み後に実施するとか理事会で検討されたようだが、理事長の一言で従来通りのスケジュールで試験は実施されることになった。もちろん麗華の意向を代田が理事長に伝えた結果である。試験期間は中間試験同様二日間。中二日休みが入り、終業式ということになっている。
終業式の始まる日の早朝、上位者の成績発表が校庭の掲示板に張り出され、そのあと、終業式という日程だ。終業式の後は各自教室に戻り採点済みの答案が返却され、担任から夏休みの諸注意が生徒に対し行われ解散という流れになる。
麗華は今回の期末テストも、2年生でトップの合計800点。この結果、麗華については、これより先の定期テストは免除ということが決定した。余談ではあるが、花太郎も中間試験の12位から8位に着実に成績を上げている。お嬢さまにかかわるとすべて良い方向に転がっていくのである。
剣道一直線の六道あやめも全日本女子剣道選手権事件で一時期落ち込んでいたが結婚を前提としたお付き合いを大企業に勤める青年から申し込まれたようでまんざらでもないようだ。
もちろん、その大企業は法蔵院グループの一企業で、麗華の意を汲んだ代田が根回しし、花婿候補をグループ構成企業の優秀社員の中から、六道には内緒で募ったものである。彼の将来の地位は約束されたようなものである。適当な出会いのセッティングなど法蔵院グループにとって簡単なことなのである。
麗華自身は、入学式や卒業式はセレモニーとして意味があると思っているが、始業式や終業式は無意味と思っているため、試験の終わった日から登校していない。返却された答案は、屋敷の使用人が学校に訪れ持ち帰っている。
こちらは、試験が終わった翌日のお嬢様。日課の鍛錬は今日はお休みし、早朝からリムジンに乗って葉山にある法蔵院家が所有するヨットハーバーに来ている。法蔵院家で所有するクルーザー型のヨットで海遊びをするためだ。釣り道具やバーベキューセットはヨットに装備済みなので、食材だけをクーラーボックスで持参している。
今日の麗華の服装は白のワンピースに薄い水色のサマーカーディガン。
代田の他に、田宮も同行している。田宮は何度か花太郎のアパートに食事を届けに行っている麗華の屋敷の使用人で実年齢は30を超えているはずだが、すらりとした手足とスタイルの良さから見た目は20代前半に見える。きりりとした目元と鼻筋が特徴的な女性で、もちろん巨乳、爆乳ではなく無難にCである。麗華に厳選され次世代の法蔵院家を支える者たちの一人なのだから当然である。
予定通り8時に到着したした一行は、すでに出港準備の出来たヨットに乗り込んでゆく。出迎えのキャプテン以下のクルー3名に挨拶を済ませ、キャビンに入ってくつろぐことにした。
「出港します」
キャプテンの合図で岸壁のボラードに巻いてあった係留用のロープがクルーによって外され、ヨットが岸壁を離れて出航していった。
[あとがき]
船のもやい綱を掛けたりする、港の岸壁に突き出た太くて丸い杭をボラードというそうです
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