第64話

 とりあえず、アーロンがへリウスの名前を知ってたのと、何より、『救援の玉』を持ってたことが決め手で、こいつは俺を誘拐した奴らの仲間ではないと判断した。それに精霊のエアーが攻撃してないのもある。

 その『救援の玉』というのが便利なもので、所有者情報とともに、開封時点での録画機能がついていて、その上、GPS機能がついていたらしい。

 なんと、封筒の封を開けた者にマークがついて、それの位置を把握できるらしいのだ。

 それも、この『救援の玉』、へリウスの家に関わりのある者にしか使えないし、届かないらしい。


 ……これ、近くに関係者いなきゃ、ダメダメなヤツ!

 おいっ、へリウス!


「まぁ、元々、俺にではなく甥っ子の所に届いたんだがな。血筋的に使いこなせなかった上に、何分、商人なもんで、荒事には向いてなくてな。それで、俺が代理でやってきたわけ」

「血筋?」

「なんといえばいいかなぁ、俺は狼獣人の父親と人族の母で、獣人の血が半分なんだが、甥っ子は、俺の姉と人族の父親で、獣人の血が四分の一なんだ。だから残念ながら、甥っ子にはこの魔道具からの情報を知ることができなかったわけ」


 ……なんか、これって、凄い道具だったってことか?

 思わず、しげしげと見てしまう。


「これって、もう機能してないの?」

「ああ、そうだな。開封した本人が目の前にいる時点で、機能は停止してるようだ」


 使い切りってことか。こんな高そうなのを、俺に使わせるへリウスって、単なるAランク冒険者ってわけじゃないのか。


「しかし、へリウス様とはぐれちまったのは、困ったな」


 一応、アーロンには、『救援の玉』を送った時点では、へリウスもなんとか無事だったことと、そこからは一緒に行動してたことを伝えたから、かなりホッとしていた。

 ただ、その後に到着した町で、俺がギルドから誘拐されたことを説明したら、「なんだ、そのギルマス、使えねぇな!」と、すごい怒ってくれた。

 ただ、俺があの町の場所や名前がわからないので、その場所が確定できないから、へリウスと合流することが出来ない。


「あの、手紙を送る魔法は?」

「ああ、伝達の魔法陣か。あれは、知り合い同士じゃないと送れないだよ。残念ながら、俺はへリウス様とは会ったことがないんでな」


 ……知り合いでもないのに、助けに来てくれるって。


「あのぉ……へリウスって、なんか、偉い人なの?」


 凄い冒険者なのは知ってたけど。アーロンがへリウスを『様』付けで呼んでたのは、そういう敬意をもってなのかなぁ、なんて思ってたんだけど。


「うん? へリウス様はウルトガ王家の元王子だぞ」


 ……!?

 まさかの王族!?


 ――アレが!? 


 俺は、その事実が定着するまで、固まってしまった。


「そんで俺は、ウルトガ国王陛下の王妃様の甥にあたるのかな……俺の親父の妹だって言ってたし。そういえば、へリウス様は従兄になるのかな」

「え、じゃぁ、アーロンも王族とか!?」

「いやいや。俺の親父は次男坊だからって、こっちの大陸に移住してきた冒険者。平民みたいなもんだ」


 ……平民じゃなかろう。

 なんか、思いのほか、身分高い人が傍にいたことに、驚きを隠せない俺だった。

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