第54話
俺は食事を終えるとすぐにテントの中に戻ると、すぐに横になった。やっぱり、かなり疲れてたらしい。目を閉じたら、ストンっと寝てしまった。
自然と目が覚めたのは、夜明け前。テントの中は、俺しかいない。
のっそりとテントから頭を出すと、へリウスが一人、ジッと火を見つめている。
「おはよう」
「お、ずいぶん、早いな」
徹夜明けのはずなのに、疲れた様子も見せないのは、さすがだ。
俺は、夕べ捕まえた奴らの方へと目を向けると……うん、二人ともが顔が真っ青な状態で、気を失っている模様。
……うん、失禁してるのか、ちょっと臭いが気になる。
「……何やったの?」
思わず、鼻に皺を寄せながら、へリウスに問いかける。
「フフフ、子供は知らなくていいんだよ」
黒い笑みを浮かべながらそう答えるものだから、俺の方も顔が引きつってしまった。
どうも、こいつらは盗賊の一味だったらしい。
あの村の人間とは関係なかったらしいが、へリウスが倒したブラックヴァイパーたちを、この村に誘いこんだ原因が、こいつらの盗賊団だったようなのだ。
なんでも、別の街道で商人たちの集団を襲った帰りに、ブラックヴァイパーの巣のそばを通ったらしく、団体さんで襲い掛かられたらしい。その逃げる過程で、この村に来た、というのだが……もしかして『剛腕の獅子』も、こいつらに巻き込まれたクチなのか?
自分たちが逃げ切るために、他人を囮にするとか……最低最悪だ。
肝心のこいつらは、盗賊のお頭の命令で、ブラックヴァイパーと村の様子を見にきたついでに盗みに入るつもりでいたらしい。そこで、俺たちのテントを見つけた、と。まぁ、このテント、使い古されているとはいえ、そこそこ上等な部類に入るらしいから、欲をかいたんだろうな。
それにしても、よくまぁ、ポンポンとしゃべったもんだ。
……さすがへリウス、なのかもしれないけど。
そしてこいつらは、そのまま放置していくらしい。
「……いいの?」
「ああ……自業自得だろ」
一瞬、まだ横たわっている連中に、冷ややかな視線を向けると、へリウスはすぐに撤収を始めた。さすがに手慣れている。あっという間に片付いてしまった。
「そういえば、あの救援? の封筒の方はいいの?」
「お、そうだったな……あれは、開いた本人、ハルに印が付くようなもんなんだ。だから、俺たちが移動しても、あれに気付いた奴が追いかけてくるだろう」
「そうなんだ……なんか、悪いことしちゃったね」
だって、目の前のへリウスは、ピンピンしてるんだもの。
「ハハハ! まぁ、戦力になるような奴が来てくれるなら、俺としては余裕が出来るから、ありがたいがな」
確かに。
今は、俺がこんなんだから、へリウスに頼りっぱなしだしな……。
「お友達からの返事は?」
「あー、そういや、まだ来ねぇなぁ……なんか、あったんかな……アイツに限って、何も起こりそうもないんだが」
首を傾げるへリウス。その絶大な信頼感って、なんなんだろう?
「まぁ、そのうち連絡が来るだろう。とりあえず、俺たちは先に進むのみだ」
へリウスは鞄から干した果物(プルーンみたいな感じか)を取り出すと俺に渡した。素直にそれを口にくわえる。うん、甘酸っぱい。
「さぁ、行くか」
へリウスは俺を抱きかかえると、まだ目を覚まさない連中を残し、朝日が差し込んできた村の方へと歩き始めた。
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