第3章
第18話
結局、俺はボブさん夫婦のところで世話になることになった。「うちの子になるかぁ?」とは言われたものの、この村には役場らしきものはないようで、養子縁組とか、そういう意味合いではなかったらしい。
俺としても、さすがに何もわからない状態のまま、この世界に飛び込む勇気が出なかった。かなり昔ではあるものの、一応、ボブさんたちも外の世界を飛び回ってた時期があったらしいので、色々聞こうと思ったのだ。
村の人たちも最初は、俺のエルフの容姿にビビってたけれど、一緒に村の手伝いをするようになったら、あまり気にならないようになったっぽい。
あちらでの物の本には、穏やかな性質の種族だって書いてあったけれど、こういう風に交流してみると、強ち、嘘ではないな、と思う。
メアリーさんは、相変わらず俺の格好が気に入らないのか、エルフの服なるものを自作出来ないか、考えているようだ。
そもそも、エルフの服ってどんなんだよ、って話。
「そりゃぁ、薄布で綺麗なのに決まってるじゃねぇか」
……わかんないって。
そもそも、この土地に薄布といえるようなものが、あるのかって話だ。一番薄そうなのだって、今、俺が着ているボブさんの息子さんのお古のシャツくらいだし。
そうそう、ボブさん夫婦には、息子さんと娘さんがいるらしい。二人とも、もう独り立ちして別の村に住んでて、年に一度くらいしか会わないんだとか。その息子さんの子供の頃の服が残ってたのを、今、俺はお借りしている。物持ちがいいというか……捨てられないパターンか。
「行商人さ、来れば、もっとマシなのがあるかもしんねぇんだが」
いつもなら、護衛を何人か連れて来るらしいのだが、今月は来るのが遅れているのか、なかなか現れないそうだ。行商人には、この魔の森で採れる薬草などを下ろしているらしい。こんな魔物が多くいる森の小さな村に、わざわざやってきてくれる行商人も凄いよな、と思う。
「んだども、オルカのじいちゃんたち、大丈夫なんだべか」
「んだなぁ……先月は、元気そうにしとったけどなぁ」
俺はまだ、魔物といわれるものと遭遇していないから、どんな生き物なのかわからない。しかし、魔の森から俺を抱えて走ったボブさんの必死な様子からも、かなりヤバい存在なんだってことくらいわかる。
「この魔の森って、どんな魔物がいるんですか?」
「そだなぁ……この周辺でいえば、ビッグバニーやフォレストウルフ、ちょっと奥にいけばワイルドボアなんぞもいるかねぇ」
……うん、なんとなく、ウサギとか狼とかイノシシとかの魔物がいるのはわかった。
基本、ホビットは魔物の討伐はしないらしい。この村自体が、昔からある結界と、魔物が嫌う匂いのする植物が植えてあるらしく、そういった被害が出ていないそうだ。まぁ、その範囲から外れちゃったら、意味ないけど。
俺が拾われたのは、まさに、その範囲外だったらしい。
……あぶねぇ。
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