魔王を倒した女勇者は褒美で日本へ異世界旅行する事に

たまごちゃん

第1話 私魔王を倒しちゃいました。

私ことセシリアはこの度魔王を倒してしまいました。内容を事細かに説明するのは時間がかかるから省くけれど…簡潔に言えば魔王を倒した。それに尽きるのです。


魔王を倒した私は、私を勇者として擁立してくれた王国シュルメイへと向かいました。シュルメイは自然豊かな王国で中央部に10mもの高さを誇る荘厳なメッキ城があり周囲を城下町シュルメイが取り囲んでいます。


町に着くと魔王討伐の知らせを知った町の住民達から「お疲れ様!」「ありがとう!」「流石勇者様!」などと声をかけてもらいました。何とも照れ臭くむず痒い気持ちでしたがいつもの癖でポリポリと鼻頭を右手で掻くとボソリと「こちらこそ…」と一応返答しました。


町を過ぎると見えるのは中央部にあるメッキ城です。町の皆さんは私を見るなり道を譲って下さり存外早くに着いてしまいました。緊張しているからでしょうか?


勇者として擁立された時は勿論緊張もしましたがどちらかと言うと魔王を倒さなければならないといった責任感の方が強く出て、あまり覚えていません。


しかし今回は魔王を討伐した報告なのです。緊張します。ですから今脳内で話している私は慣れない変な敬語になっているのです。ご了承くださいませ。


「セシリア様がご帰還なさいました!」


城に着き謁見の間に聳え立つ荘厳な扉が掛け声とともに開かれた。


ギィィィィィィー


パンパカパーンパカパカパーン♪

ティタティタティタティタティーイン♪

ドンドーンドンドーンドン♪


楽器による出迎えを謁見の間でするなど前代未聞な事なのだがそれ程魔王を倒した事は偉大な功績である事が伺い知れる。


「セシリアよ。前に!」


「はっ!」


メッキ国王様に呼ばれ私は前へと歩を進めた。


それからのことはあまり緊張で覚えていない。気がついたら高級宿のベッドの上だった。ベットの中で私はボケーっと宿屋の天井を見つめ考える。

王様が言った事が私の頭を埋めつくしていたのだ。


「ご褒美か…何にしようかな?」


王様は「そなたに私に出来うる限りの褒美を授けよう。」と言ってくれた。


「うーん…何がいいかな?」


勇者になる前、私の趣味は旅行だった。しかし勇者となってからは魔王討伐のため色々な国や街を旅した。ある意味この世界を旅行し尽くしてしまったのだ。


あと…物・金・権力は自分の力で何とでもなる。私には魔王を倒す力があるのだから。


今までは国の駒として生きてきた。しかしこれからは自分のために生きたいと思う。いや…生きるべきだろう。


今まで私は何度も何度も死にかけたし、仲間とも死に別れた。


剣聖パメラ、魔術師ルシウス、賢者シンディ、武闘家マックス、神官ロバート、魔剣士ニコラス、神槍オメガス、斥候レイ…そして最後まで残り戦った同郷の聖女リリアも魔王を討つ直前に息絶えたのだ。


私が仲間なった人達と必ず交わしていた約束…


それは──


「魔王を倒したら自分達のために生きよう。」


しかし私は1人ぼっちになってしまった。彼ら彼女らの分も自由に生きるべきであるか悩むところだ。


いつまでも悩んでいると魔王討伐の中旅をした楽しい思い出が思い出された。そして頬を伝う涙。どうやらいつの間にか泣いてしまっていたようだ。


浮かんでは消え、浮かんでは消える仲間達の思い出に私はベッドから飛び起きると決心した。


私─決めたわ。ご褒美何にするか。


皆笑わないでよ?私の趣味は旅行なの。


でも皆の居ないこの世界で生きていくのはとても辛いわ。


だから私は──










異世界旅行に決めたの。

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