第5話

一限の始業を告げるチャイムが鳴る。それからいつも通り5分くらい遅れて,国語の鈴木先生がやってきた。

「それじゃあ,日直さん号令をお願いね」

「きりーつ,きょーつけー,れー」

 やる気のない号令に合わせて,みんなやる気のない挨拶をした。

 国語の授業ってなんだかやる気が出ない。数学とか理科をやっていたほうがずっと楽しいのになあと考えていた。

「それじゃあ,宿題チェックするから,ノート開いておいてねー」

 そういって鈴木先生は,全員の宿題をチェックしながら回っている。当然宿題の終わっていない幸太郎は,回ってくるのが終盤なのをいいことに,今必死に宿題をやっているらしかった。

「ん,三浦くん。これは何かな?」

 僕の席の前に立って笑っている鈴木先生に言われて,自分のノートを見返した。

『ありがと!』

綺麗な赤文字で書かれたその言葉は,間違いなく中山さんのものだった。

「なんでもないです」

「落書きはほどほどにねー」

 なんとなく恥ずかしくなって,それでちらっと中山さんの方を向いたら,いたずらな笑顔を浮かべて,彼女はピースしていた。

……かわいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る