令和ガメラ 守護神再臨
@onigashiman
第1話
おもむろにマッチを擦る。
だが火はつかない。
東洋人の男は舌打ちしながら折れたマッチを投げ捨てる。
隣に居た現地の男が、ライターを渡した。
日本からここに来て、まさかこちらが文明の力にあやかるとは思ってもいなかった。
東洋人の男は礼の代わりに舌打ちをすると、ライターを受け取り、タバコに火をつけた。
湿気った空気の中でタバコがチリチリと音を立てる。
それ以外は何も聞こえないと言っていい。
ニューギニア島の大自然に、もう男はうんざりしていた。
周りを見渡しても海と木とがあるだけだ―
救いなのは空がやたらと深い事。
どこに居ようと空は1つで、例えば故郷の日本にも繋がっているのだ。
確かなその事実は、ここで長く暮らす彼にとってとても大きかった。
タバコの煙が細い渦になって立ち上り、やがて大きな群青の空に少し留まると、
ささやかな風の手に優しく散らされ、やがて青の奥に溶け込んで消えていった。
こればかりを眺めて、もう10年以上経つ―
古ぼけたシガーケースを空け、ビンを取り出すと、その奥底に僅かに残ったラムの余韻を舌に垂らし―
やがてまたどうしようも無い暇が襲う。
酒の嫌らしい刺激と共にじわりと、その暇が時おり恐怖になっていく。
こんな時はとっとと寝た方がいい。
それでいくらか賢明なつもりだ。
男は汗で少し黄ばんだしょぼくれた造りの白い帽子を自分の顔面に押しやると、古い投網で作ったハンモックに寝転がって眠ろうとする。
誰も起こしてくれるな―
か細い意識の中で声がした。
現地の仕事仲間の声だ。
「オノデラ、起きろ。久しぶりのお客さんだ。」
まぶたの隙間から光がするどく差し込み、やがて目をこじ開ける。
その向こうに2人の影帽子が見えた。
やっと目が光に馴染むと、西洋人の顔が見て取れた。
オノデラは起き上がると「ウェルカム」と呟く。
無精髭と一緒に口角をあげて、胡散臭い笑みを浮かべながら。
令和ガメラ 守護神再臨 @onigashiman
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