(二)‐11

 しかし、鼻先に落ちてきた雨粒で野上はふと我に返って気づいた。穴を掘って死体を入れるのはいいが、これを今度は掘り返した土で埋め戻さなければならない。達成感のおかげで野上はそんな当たり前のことをすっかり忘れていた。

 バレてはマズいという恐怖心に再び襲われて、野上はすぐにシャベルを持って掘り返して脇にどけておいた土を穴に放り込んでいった。そう、土をかけなければ、死体はすぐに見つかってしまう。


 事を全て終え、野上は自宅に戻ってきた。雨粒は大きくなり、雨はやや強く降っていたのだ。車のワイパーを一番早い動きにしなければ、野上はヘッドライトで照らされた路面の安全を確認しながら運転はできなかった。


(続く)

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