(二)‐3

 野上はえらい苦労の末、ようやく車の後部ハッチへ死体を収容し、ハッチを閉じた。そして運転席に座り、エンジンをかけた。

 そしてライトを点灯させたが、すぐに消し、エンジンも止めた。野上は車から降りて玄関に戻り、道具箱の中から懐中電灯を取り出した。スイッチを入れて懐中電灯の電池が切れていないことを確認すると、野上は再び車へ戻り、車を始動させた。

 野上は車を走らせていたが、町道から県道へ出る道を右折したところで、肝心の穴を掘る道具を持ってきていないことに気づいた。別の道から引き返し、家の脇にある道具小屋から日曜菜園で使用していたシャベルを取り出して車に戻った。そして再び車を走らせた。

 野上は車を交差点で右折させて細い道に入った。道路脇には那賀瀞町道五三号線と書かれた看板が立っているのが見えた。道はやがて上り坂になった。民家の点在する場所から、自然のまっただ中を進んでいった。幾度もカーブを曲がり、しばらく行ったところのヘアピンカーブのところに車を駐めた。ここのカーブの坂は緩やかであったし、カーブの路面の幅が広くため車を駐めていても前後から来た車は余裕で通過できるはずだった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る